大きなお世話、業界利益調べ 2007.11
一口に建築業界といっても、実はスーパーゼネコンに代表される建築業界と、ハウスメーカーという名で代表される住宅業界とでは、利益構造も利益の額も倍ほど違います。
なぜこんな事を書くのかというと、『いったい、いくらぐらい値引き出来るのか』という建築主の切実な疑問と関係があるからです。
いくらまで、値引き出来るのか。その答えを知るためには、ハウスメーカーの利益構造を知らなければ意味がありません。
(下の資料は上場企業を選び、その公開情報(IR情報)をもとに資料を作っています。)
■スーパーゼネコン vs 大手ハウスメーカー 企業比較
業界区分 |
スーパーゼネコン
|
大手ハウスメーカー
|
会社 |
鹿島建設
|
大成建設
|
積水ハウス
|
大和ハウス
|
売上高(億円)
|
18,914
|
18,733
|
15,961
|
16,184
|
粗利益(億円) |
1,540
|
1,679
|
3,281
|
3,348
|
経常利益(億円) |
587
|
556
|
1,148
|
893
|
売上高/粗利益率 |
7.1%
|
9%
|
20.5%
|
20.7%
|
売上高/経常利益率 |
3.1%
|
3.1%
|
7.2%
|
5.5%
|
自己資本比率 |
16.2%
|
19.6%
|
62.4%
|
40.4%
|
この表で何を感じますか。
まず、ハウスメーカートップの利益率(売上高/粗利益率)は、どちらも約20%程度です。これは、2,000万円の契約をすれば、実際の原価は1,600万円前後だ、ということです。
そして、その2割の中から、社員の人件費や厚生費、事務所の家賃や広告の費用などを支払っています。
また、売り上げの規模を見ると、積水ハウスや大和ハウスといったハウスメーカーのトップ企業は、すでに売上高ではスーパーゼネコンと方を並べつつあると同時に、
売上高/粗利益率、売上高/経常利益率、自己資本比率といった主たる経営指標でも、すでにスーパーゼネコンを遙かに上回っています。
自己資本比率は高いほど借金をせずに経営している優良企業という一つの指標では、すでにスーパーゼネコンを引き離しています。
会社の収益力を示す指標の売上高/経常利益率では、売上の規模はハウスメーカーの方が低いものの、経常利益はハウスメーカーの方が高い、つまり、儲け(収益率)はハウスメーカーの方が効率が良いのです。
■中堅ゼネコン vs 建売系ハウスメーカー 企業比較
業界区分 |
中堅ゼネコン
|
建売系中堅ハウスメーカー
|
会社 |
大本組
|
戸田建設
|
フジ住宅
|
サンヨー
ハウジング
名古屋
|
売上高(億円)
|
1,246
|
4,385
|
522
|
294
|
粗利益(億円) |
76
|
300
|
102
|
51.7
|
経常利益(億円) |
14
|
85
|
41
|
22
|
売上高/粗利益率 |
6%
|
6.9%
|
19.5%
|
17.6%
|
売上高/経常利益率 |
1.1%
|
1.9%
|
7.9%
|
7.5%
|
自己資本比率 |
46.3%
|
38%
|
26%
|
40%
|
ここでは中堅ゼネコンと、建て売り系のハウスメーカーを比較していますが、建て売り系のハウスメーカーは、売り上げの規模は中堅ゼネコンに比べて低いものの、もっとも大事な収益指標である売上高/経常利益率では、中堅ゼネコンの4倍近い効率の良い経営をしています。
そして、経営力(売上高/経常利益率)は、もはやゼネコンよりもハウスメーカーの方が上回っている、ともいえます。
もはや、ゼネコンの時代は去ろうとしています。
この数字を見る限り、公共工事が減らされていく中、経営効率が脆弱なゼネコンといわれる商売も楽ではありません。もっとも、住宅業界といえども、少子高齢化で年々住宅着工率は減少していくのは確実ですから、過当競争の時代は過ぎ、今は生き残り競争の時代に入っているともいえます。
■いろいろな業界の利益構造
業種 |
スーパー
|
百貨店
|
紳士服
|
家電
|
水産加工
|
会社 |
イオン
|
伊勢丹
|
はるやま
|
上新電機
|
日本水産
|
売上高(億円)
|
48,247
|
7,817
|
583
|
3,157
|
5,396
|
粗利益(億円) |
12,586
|
2,257
|
322
|
595
|
1,067
|
売上高/粗利益率 |
26%
|
29%
|
55%
|
19%
|
20%
|
では、他の業種の利益率(売上高/粗利益率)も見てみましょう。スーパーの雄「イオン」では、1,000円の品物の平均的な原価(仕入れ値段)は740円なのがわかります。
百貨店の「伊勢丹」は、それよりも少し高く、1,000円のものは、710円が原価(仕入れ値段)です。
しかし、紳士服の「はるやま」に至っては、スーツの2着目は1,000円という広告も最初のスーツが20,000円であれば、言い換えれば、スーツ2着の原価は、わずか9,450円ということになりますね。(この場合、スーツを1着しか買わなかったら、20,000円のスーツも原価は5,000円に満たないと言うこと)
同様に家電小売店の上新電機は、1,000円の品物は、810円が原価(仕入れ値段)ということになりますね。
ちなみにユニクロの原価は、54%で、2,000円の商品は、平均1,080円が仕入れ価格で、レストランなどでは、手の込んだ和食系のレストランの原材料費は40%程度、野菜も肉も切るだけという焼肉店の原材料費は25%前後です。
かといって、仕入れ原価や原材料費が安いから、お金が貯まって仕方がない・・・というほど世の中甘くはありませんよ。いろいろな業種があり、いろいろな原価率や利益率があるけれども、同じ土俵の中で、それぞれ競争しあっていると考えればいいです。
いずれにしても、業種によって、平均的な利益率は決まっており、同じ業種の中で、ある会社だけが極端に利益率が高いとか、安いとか言うことはありません。
まずは、住宅業界の平均的な荒利益は、20%前後だと思っておきましょう。そして、ある程度の経営指標が読める人なら、その会社のサイトから、会社の利益率も経営状態も簡単に知ることが出来ますよ。.
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