耐震ギリギリはダメ

NO IMAGE

今回の東日本大震災の直後、関東方面の3人ほどの方から、
「震度6弱とそれほど大きな震度でも無いのに、壁に亀裂がいくつにも入り、」
「壁紙の中の石膏ボードが破壊され,また壁がずれています」
「この程度の地震でこのような被害が出て、欠陥工事なのではないしょうか」

要は、それほど大きな地震でもないのに、室内の壁紙が剥がれたり、下地が露出したり被害が出ている。欠陥工事があったのではないか・・だから調べて欲しい、という依頼が入ってきました。(いずれもサポートサービスを受けられていた方ではありません)

そして、写真や図面を送ってもらい調べたところ、幸いにもどの住宅にも壁量計算あるいは耐力壁が図示されており、耐震性を知ることが出来ました。そして実はどの住宅も全く同じ傾向をしていたのです。

それは、建築基準法ギリギリの耐震性で設計された住宅だったのです。(いずれも軸組工法)

もちろん、外壁が破損したり、家が傾いたりと言った顕著な被害ではありません。単に室内の壁紙の下地として使っていた石膏ボードが地震の揺れで割れ、その結果壁紙が割れたり、剥がれただけのことで、家そのものに顕著な被害があったわけではありません。
でも、この現象は、まさに法律が規定した状態そのものなのです。(震度5強で損傷はしない・・逆に言えば震度6弱だったから軽度な損傷が起こった)
しかし、その被害の修理のためには、簡単に言えば、「壁紙の張り替え」をしなければなりません。逆に言えばその程度の修理費で済むのですが、しかし、近くの他邸がどうもなっていないのに、なぜ私の家だけがという思いはぬぐえませんし、欠陥住宅だったのではという思いも最初は断ち切ることが出来ません。
そして、その程度の費用と言っても、このままで住みつづけるのも後味が悪い。しかし、全部をきれいに直すとなれば2、30万円から数十万円かかるでしょう。その出費が嫌なら、みっともない部分を糊で貼り付けておしまいと、自分の気持ちの踏ん切りをどこかでつけなければなりません。
つまり、最初から建築基準法ギリギリでなく、もう少し高い耐震性を確保していれば、余分な心労も、余分な費用もかける必要は無かったともいえるのです。 そのいずれの方も耐震性は住宅会社にお任せだったのですが、その住宅会社自体の意識が低かったのでしょう。一部はいわゆる地元の住宅会社。一部は大きな住宅会社です。会社の大小は関係ありませんでした。

写真のような亀裂やほころびが、部屋のあちこちに出てしまったら気分的にも嫌ですよね~。
構造的に本当に大丈夫かと、誰しも心配になるのは当たり前。

これを住宅関係者の目線でみれば、建築基準法ギリギリの耐震性は決して違法ではない。 しかし、いざ何かが起こると、少し後味の悪い、そして、「何だこの会社・・」という評判を下げる結果でしか残さないのではないでしょうか。
筋交いを10カ所追加する程度なら、実費で10万円にもなりません。筋交い10カ所の追加など、基準法ギリギリの住宅を耐震等級2前後の量に上げるに十分な量です。

この問題は、住宅会社が基本的な意識を変えない限り解決しない問題でしょうね。 「原子力は安全なのだ」と説明していた御仁と、「建築基準法を満たしているから大丈夫なのだ」と法律をダシに使って説明する御仁と、その体質は似たようなものなのだろうな、と感じた事件でした。そして意外と国の説明も正しいじゃん・・とも思ってしまいました。

Sponsored Link

耐震基準って何?の最新記事4件

Sponsored Link