2)耐震等級の落とし穴

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『耐震等級2の住宅が倒壊した』
構造に関心が深い業界関係者に衝撃が走りました。でも続報から、その理由がわかってきました。その理由とは・・。

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地域地震係数による耐力壁の量の低減

この建物は「長期優良住宅の取得のために耐震等級2」で計算しました。しかし、この地域は地震が少ない地域として、地域地震係数を使って合法的に耐力壁の量を低減できました。
本来耐震等級2の場合は、建築基準法の1.25倍の地震に耐えられなければならないのが、熊本の場合は「0.9」低減できるので「0.9」をかけて、実質1.12倍として計算していたのです。
地域地震係数で福岡圏は0.8を乗じて計算して良いのですが、そうすると耐震等級2の場合、通常よりも1.25倍必要なのですが、0.8を乗じると1.0となり、耐震等級2で計算する意味がなくなってしまいます。そういう矛盾をはらんだ制度でもあるのです。
右下の図も地震保険の料率ですが、これも地震発生の多い少ないという想定からはじき出したものと思いますが、地震の発生は国が描いたとおりには発生してくれません。もやは地震は全国区。

軟弱地盤による地震波の増幅

この建物の地盤は10m程度まで軟弱な地盤が続く軟弱な層でした。地盤補強として鋼管杭を施工していました。
そもそも軟弱地盤は地震を増幅させると以前から言われています。たとえば、よそが震度6でも、軟弱地盤は震度6強程度に増幅され、反対に堅地盤では震度5強程度に弱くなるといった現象です。
つまり、倒壊した原因の一つは、地盤が軟弱地盤だったからではないかとも言われています。しかし、隣の柱状改良杭で施工した建物は何ともなかったようです。そうすると、軟弱地盤だから地震力がより強く増幅されるという要素だけでなく、鋼管杭という細い杭で支えていたためとも考えられます。

複数の要素が重なっているために、複合的に要素で耐震等級2の住宅が倒壊したのだろうと考えられますが、ここからの教訓は、

  • もはや、全国が地震区。

法律で低減できるからと言って、耐力壁の量を低減するとダメ。

  • 軟弱地盤は地震が増幅されるという故事は生きている。

都市部の住宅の半分は軟弱地盤の上に立っているので、耐震等級3ぐらいにして当たり前、と考えた方が良いでしょう。

地域地震係数

 

地震係数都道府県市区町村
1.0下記以外の地域
0.9
減じて良い地域
北海道のうち札幌市 函館市 小樽市 室蘭市 北見市 夕張市 岩見沢市 網走市 苫小牧市 美唄市 芦別市 江別市 赤平市 三笠市 千歳市 滝川市 砂川市 歌志内市 深川市 富良野市 登別市 恵庭市 伊達市 札幌郡 石狩郡 厚田郡 浜益郡 松前郡 上磯郡 亀田郡 茅部郡 山越郡 檜山郡 爾志郡 久遠郡 奥尻郡 瀬棚郡 島牧郡 寿都郡 磯谷郡 虻田郡 岩内郡 古宇郡 積丹郡 古平郡 余市郡 空知郡 夕張郡 樺戸郡 雨竜郡 上川郡(上川支庁)のうち東神楽町、上川町、東川町及び美瑛町 勇払郡 網走郡 斜里郡 常呂郡 有珠郡 白老郡
青森県のうち青森市 弘前市 黒石市 五所川原市 むつ市 東津軽郡 西津軽郡 中津軽郡 南津軽郡 北津軽郡 下北郡
秋田県 、山形県
福島県のうち会津若松市 郡山市 白河市 須賀川市 喜多方市 岩瀬郡 南会津郡 北会津郡 耶麻郡 河沼郡 大沼郡 西白河郡
新潟県
富山県のうち魚津市 滑川市 黒部市 下新川郡
石川県のうち輪島市 珠洲市 鳳至郡 珠洲郡
鳥取県のうち米子市 倉吉市 境港市 東伯郡 西伯郡 日野郡
島根県 、岡山県 、広島県
徳島県のうち美馬郡 三好郡
香川県のうち高松市 丸亀市 坂出市 善通寺市 観音寺市 小豆郡 香川郡 綾歌郡 仲多度郡 三豊郡
愛媛県 、高知県
熊本県下記に掲げる市及び郡を除く全県。
大分県下記に掲げる市及び郡を除く全県。
宮崎県
0.8
減じて良い地域
北海道のうち旭川市 留萌市 椎内市 紋別市 士別市 名寄市 上川郡(上川支庁)のうち鷹栖町、当麻町、比布町、愛別町、和寒町、剣淵町、朝日町、風連町及び下川町 中川郡(上川支庁) 増毛郡 留萌郡 苫前郡 天塩郡 宗谷郡 枝幸郡 礼文郡 利尻郡 紋別郡
山口県 、福岡県 、佐賀県 、長崎県
熊本県のうち八代市 荒尾市 水俣市 玉名市 本渡市 山鹿市 牛深市 宇土市 飽託郡 宇土郡 玉名郡 鹿本郡 葦北郡 天草郡
大分県のうち中津市 日田市 豊後高田市 杵築市 宇佐市 西国東郡 東国東郡 速見郡 下毛郡 宇佐郡
鹿児島県名瀬市及び大島郡を除く
0.7
減じて良い地域
沖縄県
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