断熱と暖房-断熱の基礎知識

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人類の英知

実は、下の材料の断熱性能は、全て同じです。
もちろん、すきま風が入りやすいか、表面の肌触りなどからの体感温度・材料自身の表面温度など、断熱性能以外の部分の影響も無視出来ませんが、単に、断熱性能だけを考えれば同じです。

意外な事実は、木の5cmの厚さとコンクリートの55cmの厚さの断熱性能は同じなのです。丈夫でしっかりしていそうなコンクリートも、断熱材がなければ厚さ、寒さは全くしのげないのです。そして木は、わずか5cmの厚さで、他の土やレンガの厚み20cmと同じ断熱性能を持っています。
たった100年前に生まれたコンクリートも、自然の材料にはかないません。
空気もたった8mmの厚みで、上の材料と同じ断熱性能を持っています。

材料の性質

熱を伝える。熱を蓄える。

熱貫流率-図地球上の全ての材料・素材には、熱を伝えやすい、あるいは、伝えにくい等の固有の性質があります。そして、熱を蓄えやすい、蓄えにくい性質も同じように持っています。
左の表は、代表的な材料の熱に関するデータです。詳しくそれぞれの材料の特性を下の表でまとめていますので覗いてみてください。

用語解説
熱伝導率 その材料の熱の伝わりやすさです。
単位はKcal/(m.K)又はW/(m.K)です。
熱容量 その材料の熱を蓄えられる大きさです。
熱しやすく、冷めやすい。
熱しにくく、冷めにくい。という言葉で言い表せます。

 

空気
熱を伝える力が最も小さく、熱を蓄える力もありません。
夏でも、木陰が涼しく感じるのはこのためでしょうか。
もし、空気の熱を蓄える力が大きければ、地球温暖化はあっという間に進みます。
また、断熱用のガラスの中間を空気層にするのは、断熱材として空気を使っているからです。
熱を伝えにくく、かつ、非常に熱を蓄える力の大きい材料です。
氷点下になってもなかなか凍結しませんね。
風呂のお湯が、夏場は朝になってもほんわかと温かいのは、この性質によるものです。
自然界で最大の熱容量を持つ水を、地球温暖化で海水温が上昇したとき、もはや人類に海水温を下げる力はありません。
アルミニューム
もっとも熱を伝えやすい材料。
アルミニュームの鍋が、家庭用の鍋の中で一番早く沸騰するのはご存じですね。
鉄は、アルミよりは熱を伝えにくいけれど、アルミよりは熱を蓄える力があります。
ステーキやお好み焼きなど、鉄板料理に1cm程度の熱い鉄板を使うのは、鉄の持つ保温力を利用しているのでしょう。
木材
木も意外と自然素材の中では、熱を伝えにくい材料です。
しかし、熱を蓄える力はありません。
土は程々に熱を伝え、また、熱を蓄える力もあります。
冬の鍋料理に土鍋が欠かせないのは、その保温力、なかなかさめにくい、という土鍋の性質を利用したものです。
地熱を利用するという言葉がありますが、土の持つ保温力を利用したものでしょう。
地下室や洞窟のひんやりした温度、冬眠動物が生存していけるのも、土の保温力、言い換えれば急激な温度変化のない世界があるからでしょう。
断熱材
この表の断熱材は、グラスウールやウレタン、ポリスチレンフォームなど、一般的な断熱材を入れています。
各材料や建材メーカーは、0.001単位の熱伝導率を競っていますが、表には入らないため、大きな位置づけとして見てください。

窓やドアの知恵

時代劇を見ていると、当然ガラスなどはなく、和紙を貼った障子か、ふすま、そして、外部との遮断は今では雨戸と言われる、木戸しかありません。
欧米では、ある時期からガラスが出始めましたが、中世ヨーロッパの窓も木戸でした。
私たちが、ひどい住宅環境だと思う、それらの住まいは、本当に寒かったのでしょうか。
もちろん、その時代に住んだこともなければ、住まい全体の断熱性能そのものが違いますから、一概に比較できませんが、科学的には、次のようになります。

不思議なことに、すきま風と言うものを無視すれば、今のガラス窓(シングルガラス)よりも、障子や襖の方が熱を伝えにくい。つまり、より断熱性能の高い材料なのです。

昔の人は障子や襖を使いながら、何らかの方法ですきま風を防ぐ方法を知っていたのかもしれません。

茶室に見られるような、小さな空間で、周囲が土壁で作られ、入り口も狭く、雪見障子のような小さな窓しかない部屋。
そして、お茶のための熱源があるこの部屋は、実はその時代の最高に贅沢な空間だったのかもしれません。
いずれにせよ、人類はその土地で快適に過ごすために、科学の根拠はなくても、利用できる最大の材料を一番有効に使っていたのかもしれません。

贅沢さはなくても、寒さを遮断し、家の中央の囲炉裏が部屋を暖め、意外と寒くなかったのかもしれませんね。そして、障子もふすまも取ってしまえば、夏には自然の風通しが十分暑さをしのいだのかもしれません。

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