建築主Aさんその3:最高の住み心地です。

惚れ惚れする基礎!』『仲介屋との闘い!』『最高の住み心地です。』は、全て同じ建築主さんです。

基礎やり換えのトラブルでご紹介した『惚れ惚れする基礎』の建築主からメールをいただきました。このサイトへの引用をご快諾いただいたので、少しご紹介いたします。メールを頂いた季節は夏です!

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感激の断熱性能

さて、新居の住み心地ですが、
すこぶる大変満足しております。

まず、なんといっても、断熱性能に驚いています。
引っ越してしばらく、1階にエアコンがなく、2階のエアコン一台だけで、生活していました。
2階のエアコンの冷気だけで、1階も涼しくなるんです。
今年の記録的な猛暑の中、小屋裏も涼しい!
次世代省エネ仕様、恐るべし。
エアコンを切っても、しばらくヒンヤリ。個室ではなく家全体が冷える心地よさを知ってしまいました。

建売の3棟現場なので、お隣さんにお邪魔しました。
外観は同じですが、断熱性能は別。
お隣の小屋裏は灼熱でした。
「一戸建ては、2階が暑いですねぇ」とお隣さんに言われたのですが、断熱材がお宅とは違うとも言えず、「え、ええ」なんて、あいそ笑いをしてしまいました(汗)

もともとこの方、文才が豊かなのでしょう。文章での表現力が非常にすばらしい方なので、全くそのまま引用させていただきましたが、次世代省エネルギー仕様で建てた建物と、そうではない、その1ランク下の省エネルギー仕様で建てた建物との比較が、実によくわかりますし、たまたま、全く同じ業者で、ほぼ同時期に完成したので、その比較がはっきりと出来たのでしょうね。

こういう風に比較できるのは、滅多に無いケースなので特に引用させていただきました。

断熱性能の違い

この方の住まいはどんな断熱性能なのでしょうか。

そもそも、いわゆる「建築条件付き」の建物なので最初から仕様が決まっています。
下の図の上が標準の仕様ですが、売り手側が標準で設定していた断熱材は、天井:グラスウール100mm、外壁:グラスウール75mm、床:スタイロフォーム30mmと、もっとも標準的な「省エネルギー仕様」のレベルでした。

しかし、せっかくマイホームを取得するのだからと、「次世代省エネルギー仕様」での仕様変更を求め、下の図のように、屋根:高性能グラスウール16K、200mm、外壁:高性能グラスウール16K、100mm等々と変更しました。サッシやガラスは変えず、断熱材の変更だけです。

そして、たまたま偶然ですが、売り手側の平均的な仕様である「省エネルギー仕様」のままで立てられた建物と、この方だけが変更された「次世代省エネルギー仕様」の建物が同時期に、同じ業者で施工されるという珍しい事が起こったのです。

その建物の断熱性能を実感として比較されたのが、上の話ですね。

でも、ただ単に次世代省エネルギー仕様だから、これほどの差が出たのではありません。

トレードオフという考え方を使うと、この場合は、断熱材の厚みはこの方の半分の100mmにまで薄くすることが出来ます。その代替えをLow-Eガラスでカバーするのですが、計算では次世代省エネルギーをクリアしていても、実際の太陽熱は上から当たっていますから、断熱材を半分の厚みにまで下げれば、屋根から伝わってくる熱量は、半分に減らす前の倍の熱量が入ってきます。

つまり、この方が涼しく感じられたのは、なによりも、トレードオフ制度を使わず、200mmの断熱をそのまま使った。言い換えれば、断熱材が入るように、少し天井も下げて断熱材を入れることを優先した結果にほかなりません。

もし、トレードオフを使った次世代省エネの建物であれば、お隣の「お隣の小屋裏は灼熱でした・・」とまでは行かなくて、ほぼ似たような状態になっていると考えられます。

棟換気に手をかざす

この方、たぶん、日本でもほとんど例のないことを体験されています。
実は私も、この経験は無いですし、こんな事を経験した建築主の方は、本当に少ないでしょうね。

耐久性を上げるために採用した外壁通気と二重屋根。
完成直前、屋根に登って、棟換気に手をかざすと…
熱い空気が出てきました。当たり前なのでしょうが、ちょっと感動。
湿気も抜けるし、熱気も抜けて、断熱と耐久性に一役買っているかんじが実感できました。

実はこの建物、元々の仕様は「外壁モルタル」だったのです。
外壁通気ではありませんので、性能表示での評価は劣化の低減では等級2です。しかも、勾配屋根です。小屋裏換気はありません。

そこで、「建物の耐久性や断熱性を少しでも上げるにはどうすればよいですか」という問いかけから、

  1. 外壁はモルタルのままだが、外壁通気を取り入れる
  2. 勾配天井なので屋根断熱となってしまうから、屋根の上に二重に「屋根通気層」を作った。

ということで標準仕様を変更して行われたのです。

そもそも「屋根通気層」を作ること自体が、珍しい事なのですが、うまく機能しているようです。

しかし、足場が外れる前だと思いますが、棟換気まで行かれるとは・・・
なかなかの根性です。
(普通は尻込みして、屋根材の上を歩く人はいないでしょうね)
(このあたりは、現場監督や職人さんとのコミュニケーションを取っていれば、どう歩けばいいのかは簡単に教えてくれますから、気になる人は挑戦してみましょう。・・カラーベストの屋根であれば特に簡単ですよ!!)

屋根通気とモルタルの外壁通気工法

さて、間違えついでなので、その方の取られた写真を参考に『屋根通気』と、『通気工法による外壁モルタル』の実例をご紹介しておこうと思います。写真は、『惚れ惚れする基礎』の方のご提供です。

屋根通気

① この状態は、最初の屋根下地に通気用胴縁(どうぶち)を取り付け、その上に屋根下地合板を張った状態です。棟換気の金物をかぶせて空気を排出するために、合板は棟の手前で止められています。そして、棟のあたりで細い棒のように見えるのが通気胴縁です。

② その合板の上に緑色の防水シートを貼り付けています。この上に屋根材を張れば屋根は完成です。

③ 棟換気の完成写真です。

④ ②の写真の拡大ですね。この緑色の防水シートを棟のところで切って、空気が流れるようにします。通気胴縁の下も緑色ですが、これも防水シートです。
本来は不要なのですが、『屋根の通気工法』自体がほとんど初めての経験だったのでしょう。住宅会社の方が必要だと思って入れられたのだと思います。

通気工法による外壁モルタル

A.防水シートと通気胴縁です。サイディングであれば、この上にサイディングを貼って終わりです。

B.この上にモルタル下地の通称バラ板を打っています。合板を張る場合もあります。

C.さらに防水のためのアスファルトフェルトと、モルタルを塗るためのラス(金網)です。
普通の外壁モルタルであれば、Cの工程だけですから、外壁通気工法による外壁モルタルが如何に手間がかかるかわかると思います。
普通の外壁モルタルであれば、Aの防水シートと通気胴縁、Bのモルタル下地のためのバラ板が完全に不要な工事です。手間がかかるイコールコストですから、外壁モルタルの通気工法も非常に珍しい工法です。

つまり、手間とコストがかかるから、外壁モルタルでの通気工法はほとんど採用されていないですね。

さてこの方、次のような事をしました。

  • 耐震性
    耐震等級3のレベルまで耐震性を引き上げ、最高レベルに変えました。
  • 耐久性
    屋根通気をおこない、外壁通気工法による外壁モルタルとし、劣化の低減の最高レベルとしました。
  • 断熱性
    実質的に次世代省エネルギー仕様にまで高めています。

これだけを見ると、『いいなぁ。一杯変えちゃって』と思われるかも知りませんね。
でも、格好いい話を書きたくて、延々とこの話を続けてきているのではありません。
この結果に至るまでに次のように場面に見舞われます。

建築主さん
心労が重なり過喚起症候群で救急車で運ばれるなんてこともありました。
心筋梗塞と勘違いし、死まで覚悟しました。

その理由は、前のページで紹介した「惚れ惚れする基礎」の騒動や、「仲介屋との闘い!」があったためでしょうね。

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