耐震対決:軸組工法 VS 2X4工法

住宅の大多数を占める木造住宅。そのうちで正確な統計はわかりませんが軸組工法が7割程度、2X4工法は3割程度の割合を占めているのではないでしょうか。

さて、両方の工法にはいろいろな特徴があるのですが、耐震性はどちらが強いのでしょうか。

サポートサービスでは、約1000件以上の耐震性がわかる事例を扱ってきましたが、その中の傾向は下のようなものです。
注:いずれも、特に耐震性を指定していない場合です。

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軸組工法

耐震性の中心域、そして、最多域がおおむね耐震等級2を少し下回るあたりです。
そして、最低では建築基準法ギリギリという設計も見受けられますし、最高位では耐震等級2を超えたあたりです。

特徴的なのは、特別に耐震等級3を指定しなければ、どの設計も耐震等級3をクリアさせている住宅はありませんでした。

2X4工法

耐震性の中心域、最多域は耐震等級3を少し下回る程度で、最低ランクでも、耐震等級2程度。最高では、普通の設計をしていても耐震等級3をはるかに飛び越える高い耐震性を持った住宅もありました。
注:図では耐震等級4なんて等級はありませんが、イメージとして書いています。

つまり、こと耐震性に関しては、特別に耐震性を高くしてください・・と言わなくても、軸組工法よりも2X4工法の方が耐震性は高くなるのです。

では、どうして、どちらも同じような間取り、同じような規模なのにこれだけ耐震性が違うのでしょうか。

その理由は・・・。
設計者の能力や意識の違い??
いえいえ。設計者の能力に差があるのではありません。
工法の仕組みそのものに隠された大きな秘密があるのですよ。

耐震性:意識しないで強くなる工法、そうでない工法

軸組工法は、種類も多く、設計を意識する必要がある

軸組工法は、下の図のように、筋交いだけの耐力壁、構造用合板を使った耐力壁、そして、この両方を併用した耐力壁と実に多くの種類があります。 最初から外壁の合板を張る会社であれば、少なくとも合板を面材耐力壁として利用できますが、内部結露を防ぎたいという理由から、合板などを張らない会社は筋交いしかありません。

そして、筋交いとて、倍率2.0の片筋交いもあれば、倍率4.0のたすき掛け筋交いもあります。 もちろん、耐力壁を入れないという選択もあるのですから、組み合わせは設計者が意識的に配置をしなければ決まらないのです。

2X4工法は、種類もなく、設計者は意識する必要がない

反対に2X4工法では、外壁は構造用合板などを張るのが工法としての決まりです。そして、室内は石膏ボードしか使いません。実は外壁は1種類、内壁も1種類の組み合わせしか無いのです。 しかも外壁の壁は、全てが耐力壁となります。

そうすると、2X4工法の設計者は、どんな耐力壁を配置しようか・・なんてことをまったく考える必要がないのです。 そして、室内の壁も石膏ボード以外は使いませんから、これも強度は一種類しかありません。

耐力壁を意識しなければならない工法か、そうでない工法か

一番に下の図は、8畳ほどの部屋を描いていますが、軸組工法は組み合わせがありすぎて、設計者が意識的に耐力壁を配置しなければならない。 反対に2X4工法は耐力壁の意識などしなくても、勝手に耐力壁になる という工法上の大きな違いがあるのです。

結局-能力ではなく、意識の差に左右される軸組工法

軸組工法では、耐震性に関して高い意識を持った設計者なのか、耐震性に全く興味が無く、ただただ建築基準法をクリアしていればいいと考えている設計者なのか、つまりは、耐震性の設計能力ではなく、耐震性というものを意識して設計しているかそうでないかの違いが現れるのです。

耐震性に意識のない設計者は低い耐震性となり、耐震性の意識が高い設計者は、耐力壁の配置も慎重で建物に高い耐震性が与えられます。

このように軸組工法は、設計者の耐震に対する意識に大きく大きく依存した工法なのです。

対して、外壁であれば、自動的に構造用合板が張られ、室内側は石膏ボードを貼る2X4工法では、全てが耐力壁になり、それほど耐震性を軸組工法ほど意識する必要しなくても、結果として高い耐震性が得られる仕組みになっているのです。

注:ここでは軸組工法も2X4工法も構造用合板と書いていますが、これ以外にダイライトやOSBあるいはMDFといった面材耐力壁を使っている会社もありますが、倍率に多少の違いがある場合がありますが、基本は同じです。説明上、構造用合板に統一しています。

軸組工法の配置の制約

上と似たような問題に、耐力壁の配置の制約があります。

軸組工法では、筋交いは90cm以上離れた柱と柱の間に設ける必要があり、幅が60cmや45cmでは、筋交いとして効果が発揮できません。つまり、いくら幅の狭い壁があっても使えません。また、合板を使うにしても、幅60cm以上は必要ですが、それぞれ柱が両側に必要です。

ところが2X4工法は、幅こそ60cm以上の壁という制約はありますが、そもそも「柱」なんてものがありませんから、壁が連続してさえいれば、それは全て耐力壁になるのです。

この違いは外壁では意外と大きく、玄関ドアやリビングの掃き出し窓以外は、意外と幅45cm程度の小さな窓も多いのです。そうすると、下の図のように、2X4工法であれば、壁の全てを耐力壁として計算できるのに、軸組工法では、柱のあるところしか耐力壁としてつかえません。

小さな壁は、耐力壁として使えないので、間取りによってはそういう壁が数多く残される場合があります。

注:軸組工法では、耐力壁のために柱を動かすという感覚、意識がありません。 この結果、軸組工法というのは、昨日説明した耐震に対する意識の有無以外に、配置の制約から、さらに格差が広がる工法的宿命を持っているんですね。

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