今までの断熱対策は、『伝導』対策が中心
では、今までの断熱対策は何かというと、ほとんどすべて『伝導』対策なのです。
身近な例では発泡スチロールでできた保冷容器は内部の熱が外部に逃げないようにする『伝導』対策のための道具ですね。
断熱材を建物に入れるというのも、保冷容器同様に夏の高い外気温が室内に入る(伝導する)のを防ぎ、あるいは室内の冷やされた温度が外部に出て行く(伝導する)のを防ぎ、冬も同様に寒い外気が伝わらないように、室内の暖かい空気が逃げていかないように、熱伝導率の低い材料、すなわち、断熱材というものを入れていたのです。
遮熱は、全く新しい手法
では最近注目されている遮熱とは何でしょうか。
その前に少し石油ストーブの進化の歴史を思い出してみましょう。
まず最初の石油ストーブが出来たのは、写真の左のような『輻射』だけを利用するストーブでしたね。
しかし、これは、『輻射』の原理だけを利用していたために、ストーブの近くは暖かくても、遠くまで均一に暖かくなるには時間がかかりました。
次に出てきたのが、写真の右側のような燃焼部の後ろにアルミの反射板を作り、熱が後ろに逃げないようになっている製品ですね。
後ろに熱が逃げず、熱源の前面だけに熱を放出出来るために、壁際などに置くことが出来るようになりました。
そして、3番目に出てきた製品が、ファンを内蔵した製品です。これは熱源から発生する『輻射熱』をファンによって『対流』を起こすことで遠くまで均一に熱を移動させることに成功しました。
もちろん、エアコンもこの原理を利用しています。
つまり、遮熱材は、石油ストーブの進化の過程の2番目の遮熱(反射)を熱源に対して使っているのです。
熱源には、太陽の陽をまともに浴びた屋根材から放出される熱。外壁通気層から入ってくる外気という輻射熱。これらの熱を室内側に入らないように遮熱(反射)することで、熱を伝わりにくくしています。
遮熱材の効果
フクビ化学さんのカタログには、遮熱材を入れた屋根と入れない屋根の比較実験が載っていますが、
入れない屋根の裏面は、44.6℃になるのに対して、遮熱材を入れると、遮熱材の裏面で30.5℃と、約14℃下がっていた、という結果が照会されていました。
季節や気温によって変化するとは思いますが、一定の効果があるのは疑いの無いところです。
性能のコントロールはできない
遮熱材も、良いことばかりではありません。
性能のコントロールができないことです。
従来のグラスウールや発泡スチロールという断熱材は、熱伝導を利用したものですから、使う断熱材の厚みをコントロールすることで、断熱性能そのものをコントロールする事ができました。しかし、遮熱材は、断熱性能のコントロールや計算をすることができないのです。
言い換えると、物理特性が無いのです。
効果は認められるが、コントロール、計算ができない。
これが、遮熱材固有の問題なのです。
まとめ
今での「伝導」型断熱材と、全く同じ土俵で比較出来ないので、効果のほどが表現しにくいのですが、遮熱材は輻射熱の侵入を低減させるという点で、極めて大きな効果があります。
輻射熱を遮熱(反射)することが特徴ですから、屋根面に対して遮熱材を入れると効果は大きいと思います。そして、今までの『伝導』型断熱材と併用して使用するのがもっとも効果的な方法です。
施工ポイント:空気層が必須
遮熱材の反射側には、通気層が必ず必要です。
輻射熱を反射するだけでは、その熱は周囲に留まるだけです。反射した輻射熱を排出しなければ効果はありません。そのために、遮熱材を使う場合は、通気層が必須で、同時に通気層には、空気が入る出口と空気がでている排出口が不可欠になります。
屋根面
代表的な屋根面の施工例では、下の写真のような垂木と垂木の間に設ける「フクビ遮熱パネルルーフ」という商品を使えば、簡単に屋根通気層ができあがります。
もっと簡便な方法では、遮熱シートを垂木の下に張っても同様の効果が発揮できます。
屋根廻りは輻射熱が一番高い部分ですから、遮熱材の効果も大きいですよ。
注:これらの場合も棟換気口などは必須です。
日本瓦などにも、ルーフィングの上に遮熱シートを張ると一定の効果を得られると思います。
注:屋根の場合は、通気の出口として「棟換気口」などの通気層の空気の排出口が必要です。
注:外壁に使う場合も、外壁通気層は必須です。
外壁面
外壁面は、「遮熱・透湿防水シート」が一般的です。
太陽光に直接照らされるような外壁には効果がありますが、住宅密集地で太陽光がほとんど差し込まない部位に使っても、効果は低いと思います。
つまり、屋根に対しては、どんな立地でも使用すると効果を発揮しますが、外壁に関しては、太陽光に外壁がさらされるかどうかによって効果は違ってくるでしょう。