やっばりいたんですね。耐震等級を知らない建築士。
といっても正確には、
「耐震等級の計算を知ったつもりの建築士」
なんですが、これだけ耐震性が注目されている時代でも、耐震等級の基本的な計算方法を知らない建築士がまだまだいるんです。
そんな事件の顛末を・・。
事件の発端
もちろん、その会社は以前から長期優良住宅を手がかけています。
そのため「同等で出来ます」ということで長期優良住宅の仕様+耐震等級3でお願い出来た、と安心していたのですが、実際に耐震設計をしてもらうと、異常に多くの耐力壁を配置し、私が計算すると、耐震等級3を十分すぎるほどクリアしている面があると思えば、少し耐震等級3に届かない面がありました。
「おかしいなぁ」と思い、計算式を提出してもらったのですが、耐震等級専用の計算方式を知らずに、闇雲に多く耐力壁を配置しただけだったのです。
「えっ!この会社、今まで長期優良住宅を手がけていたんじゃないんですか」と建築主の方に聞くと、
「申請する場合は、構造設計事務所に外注してキチンと耐震等級の計算をしてもらっているようなのですが、今回は『同等』ということで、外注に出すと費用もかかることから、社内で計算したようなのです」という返事が返ってきました。
そして建築士からは、「建築基準法で必要な耐力壁の1.5倍以上の量を確保しています」と説明してきたのです。
よくある建築士の誤解
この建築士の間違いはどこなんでしょうか。
以前から多い誤解の典型例なのですが、『耐震等級3とは、建築基準法の想定した地震力の1.5倍の地震に耐えられる強さ』というガイダンス的説明をそのまんま設計に流用していたのです。
もちろん、ガイダンス通り、耐震等級3は、基準法で想定した地震力の1.5倍に耐え、等級2は、1.25倍の地震力に耐えられること自体は正しいのですが、それは地震の力を説明しているだけであって、必要な耐力壁の量を説明しているのではありません。
つまり、耐力壁の計算も単純に1.5倍、1.25倍すれば良いと言う意味ではないのです。
それを勘違いして、耐震等級3っていうのは、基準法の1.5倍だから、耐力壁も1.5倍にすればいいんだと誤解していたのです。
ですから、こういう人が設計した耐力壁は、キチンと知らない、という不安の裏返しから、やたらと耐力壁が多いんです。だから、すぐに見抜けます。
「はっはぁ~ん。こいつ。キチンとした耐震設計を知らないな!」とね。
知ったつもりの耐震設計
このような誤解をしている建築士は、まだまだ多いでしょうね。
だいたい年に1~2件程度遭遇します。
耐震等級の計算なんか外部の構造設計者任せで、よく知らない。
いや、いつも申請をしているので、知ったつもりになってしまっているのです。
もっとも、そういう設計者に限って、耐震設計に自信がなく、「もし少なかったら大変だという漠然とした不安から闇雲にたくさんの耐力壁を配置しますから、強いことは強いのですが、キチンとした説明を求められるとしどろもどろなんですね。
ホント、このタイプ多いです。あなたが知らないだけ!!。
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