世の中には「定価あるいは価格」といった形で物の値段が表示されています。でも、その定価あるいは価格通りに買える品物やサービスは非常に限られています。
電気、ガス、旅客費、新聞、電話といったいわば公共的料金か雑誌ぐらいしかありません。
自動車も、家電製品も、家具も、キッチンや便器などの住宅設備も、「定価あるいは価格」があるものの、その値段よりも値引きして売られています。
住宅工事の見積でも、見積書に次のような記載をする場合がよくあります。
このように書かれれば、定価からいくら値引きされているのかが分かりますね。
でも、定価には商売上の特別な仕掛けが設けられています。
値引きは織り込み済み
簡単な事例では照明器具を例に取ると、カタログで定価10,000円の照明器具は、消費者の手に渡る価格は、概ね7,000~8,000円前後です。
それは、工務店に頼んでも、電気工事店に頼んでも、あるいはホームセンターで買っても、それほど大きくは変わりません。
その理由は、消費者に渡るときの価格は、「定価の2~3割引程度」という目安を定価設定の時に織り込んでいるからです。
そのために、工務店が直接仕入れる場合は、定価の5~6割程度で納入されます。
電気工事店には、工務店よりも少し安く、4~5割程度で納入されます。それは、電気工事店が直接消費者に照明器具を売買するわけではありませんから、一旦工務店を経由します。
つまり、工務店渡しよりも、電気店渡しの方が原価が安いのは、照明器具メーカーがキチンと電気工事店にも利益が出るように考えているからです。
もちろん、照明器具のメーカー直販もありますが、多くは昔でいう問屋、今の代理店と言われるところからの仕入れが多いですから、当然、代理店の利益も設定されています。
つまり、定価というのは、このような多重構造の流通の仕組みのなかで、間に介在するそれぞれの立場の業者にも一定の利益が出るように考えられているのです。
だから、定価の○割引き・という図式は、本当の値引きではないんですね。
最初にメーカーが設定した値引率があり、その結果設定した『定価』があるからこそ、定価の○割引という表示になるのです。
言い換えれば、値引きは最初からつくられていることになるのです。
そして、そういった、いつもいつも定価の○割引という商習慣を変えようとしているのが、「オープン価格」という仕組みですね。