B邸の場合(勾配天井)

このお話はちょっと特異な換気システムを使ったためと、建物の気密性が高すぎたことで起こったトラブルです。
Aさんから、「コンセントから隙間風を感じる」というご相談をいただきました。場所は兵庫県の普通の住宅地です。

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A邸:極めて特殊な換気システム

普通、24時間換気は下の左の図のように壁で吸気を取り、外壁又は天井に換気扇をつけて換気するのが一般的です。
ところがAさん邸は、右の図のように床下に全熱交換型の24時間換気扇を設置して、床面に換気用のガラリを設けて、自然に室内間の空気を循環させるという非常に特殊な換気システムを取っています。
(床面の換気ガラリは、右の写真のようなもの)

私もこのようなシステムは初めて見ました。
どういうメリットがあってこんなシステムを考え出したのか良くわかりませんが、世の中にはチャレンジャーというべきか、なんと言うべきか、変わった事を考案する人もいるものです。
地方の大きくはない工務店なので、自社で考えたと言うよりも、どこかのシステムを入れたのでしょうね。「パッシブハウスだ・・」とか何とか言って・・。

それはさておき、調べてみると、確かにコンセントやスイッチから風を感じます。

いろいろ調査をして見ると

まずは調査の方法として、上の図にある床に設けた吸気口がキチンと機能しているかどうかを調べてみました。排気する側の機械としては、床下に設けた全熱交換型24時間換気とキッチンにあるレンジファンです。浴室、トイレの換気扇は局所的で時間も限定的なので対象から外します。

  1. どちらも一切稼働しないと床面ガラリから吸気はありません。
  2. どちらかを稼働すると吸気が始まります。空気が動いています。
  3. 両方を稼働させていくと、風量は増加します。レンジフードの運転を「強・中・弱」に切り替えると、それに応じて吸気量も変わっていきました。

同時に、床下にある全熱交換器(24時間換気)の外部の吸気口の風速を計ると同様の結果になりました。(24時間換気を回したり、レンジフードを回すと給気される)
このことから吸排気は機能していることがわかました。
そして、24時間換気を止めてレンジフードだけを運転させても給気していましたから、この吸気口は閉鎖されておらず、どこかで排気されると同量が給気される仕組みでした。

給気された空気はよそに流れていた

換気システムが機能しているのに、コンセントの隙間風を感じる。
そのために外部からの吸気量と室内の吸気量を調べてみると、外部から入っている空気の量を500m3/hすると、床面ガラリからは200m3/h前後しか空気が流れておらず、外部から入っているはずの空気がどこかに消えていたのです。

結局原因は・・・。
この建物は外壁、屋根ともに発泡ウレタンで断熱されています。発泡ウレタンはもともと高い気密性があります。
そのために、外壁から入った吸気は、自然に任せて流れようとします。
しかし、排気は機械なので強制的に排出しようとします。
そのため、外部の吸気口から入った空気は、下図のように好き勝手に動き、隙間があれば壁のなかに入り、そしてコンセントから隙間風として流れていたのです
特に電盤廻りなどは、配線のために壁に大きな穴が開いていますが、そういう穴から壁のなかに空気が入りこみ、あるいはユニットバスと壁の隙間から壁の中に入りこんだ空気が、コンセントを出口として出て行っていたのです。
言い換えると、外部の吸気口から入った空気の6割は壁のなかに入り込み、コンセントやスイッチを経由してレンジフードや24時間下記の排気として排気されていたのです。
それが、コンセントから隙間風を感じる原因だったのです。

近年の住宅は発泡ウレタンという気密性の高い断熱材を使わなくても相当に気密性が高くなりました。
以前の事件簿でも書きましたが、断熱性能が高くなるほど気密性も高くなり、同時に断熱や気密を原因とするトラブルが増えるんですね!

そして、空気を自然の流れにまかす~なんてことも不可能なことですね!
空気は好きに流れまっせ!
あんたの思い通りになんか流れてくれません!
パッシブハウスなんて高尚な理屈はあるんですが、そんなに建築家が思うほど計画通りに流れているのでしょうかねぇ?

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