下の2つの事例は設備工事のミスによる漏水事故の事例です。
キッチン排水の未接続 4-593
私が依頼を受けたときは、すでに問題が解決して1年以上経過し、漏水が建物全体に影響を与えていないか、といった事が依頼テーマでしたが、 このケースでは、床下全面に約4年間もの間、水がたまっていました。
事故原因
発見当初の状況は詳しく確認していないため、定かではありませんが、キッチンの排水と、床下から上がってくる排水管の接続を忘れていたために、キッチンの排水が排水管に流れず、床下に貯まり、プール状になっていたのです。
注:4年間は相当の期間ですが、実際にどの程度の水がキッチンから流されたのか?臭いは?衛生状態は?といった部分は確認をしていません。
解決経緯
この問題の解決は建築主の方が自力で建築会社と交渉され、土台などの木材の防腐処理、シロアリ薬剤の再塗布、床下換気扇の常設といった基本的な対策は完了していました。
そして、調査したところ、土台等の木部には腐朽、シロアリなどの被害はなく、木部の含水率も通常値になっており、断熱材その他も4年間の漏水による被害はなどもありませんでした。
しかし、相手からは是正工事をすること以外に特別な配慮はなく、一時は建て替え要求の可否なども検討されるなど、心理的な落ち込みがひどい状況でした。
排水管を未接続で引き渡すという極めて初歩的なミスをして、4年間ものあいだ生活排水が床下に流れ込んだままということを考えると、復旧是正工事以上のことは考えない相手の姿勢は、精神的苦痛に対する損害などの面で矛盾を感じる事件でした。
注:慰謝料請求は可能ですが、日本の慰謝料の基準はまだまだ低く(著しく)、慰謝料だけで心のつかえが取れる金額は望むべくもありません。
接続器具の不良(製造過程の不良品) 5-819
この事例は、建物の完成引き渡し直前にひょんな事から発見出来た幸運な漏水事故です。
発見経緯
建物が完成し、施主の引き渡し検査も終わり、引越まで間があるため。せっかくだから引き渡し日の前日に家族で新居に泊まっちゃおう。。と考えて泊まった翌日。チョットした手直し工事に来ていた業者から電話があり、2階トイレの 給水管より漏水がしており、その下の1階の洗面所の壁が塗れ、床下まで水が流れ落ちているとの一報が入りました。
事故状況
建物に泊まった時には、当然、水道も使ったでしょう。ただ、引き渡し検査の前後に水道も開栓し、水は使える状態になっていましたが、通水期間が短かったため、2階のトイレ下の天井からポタポタと水滴が落ち、床下に少し水がたまった程度でした。
解決経緯
しかし、突然漏水を知らされ、壁の中がどうなっているのか、壁の断熱材などは濡れていないか、といった事もわからず、また、建築主としては そんな中で、どのように交渉を進めたらよいのか。ということで、建築主側の助っ人として同行して欲しい。。という依頼でした。
そんななか日時を決めて、建築会社、保証会社、建築主、私などが立ち会って、再度水道を開き、壁を壊し、
- どこから漏水するのか、
- 被害がどの範囲まで及んでいるのか、
の調査を進めましたが、原因は、ヘッダー工法で使われている接続器具の不良で、そこから漏水していることがわかりました。
また、被害も期通水期間が短かったため、2階のトイレから床下に至る1階の洗面所の壁内が少し濡れ、床下に水が部分的に流れた、という程度の被害だけですんでいました。
その後、断熱材を交換したり、壁、天井を石膏ボードごと貼り替えて補修工事は完了しました。
事故原因
右上の写真は、ヘッダー用配管から、トイレ等の住宅機器に接続する際のいわば変換器(この写真は床上用)。右下の写真は、給水管がいろいろな部屋に分岐していく分岐部分。(ヘッダーと呼ばれている)
今回のケースは、たまたま、接続器具の不良によって、そこから漏水していたのです。
もちろん、器具メーカーとしては1万分の一かそれ以上の高い精度で製造管理をしていたのでしょうが、それでも運悪く不良品に当たってしまったのです。建築会社にも、水道工事をした設備業者にも瑕疵のない事件でした。
注:普通の日常生活をしている限り、日本の製造管理は完璧だろうと勝手に思っていましたが、やはり、製造過程の不良品はあるのだ。というのを実感した事件でもありました。
後日談
それから数ヵ月後に来た結果です。 接続機器のメーカーは器具の不良を認めませんでした。 一応書類はきちんと頂きましたが結果は不良ではなく不明という事。 謎は解明できない結末になりました。
筆者補足:メーカーも自分の非を認めたく無かったのでしょう。数ヶ月も返事がなかったのは、ほとぼりを冷ます時間でしょうか。なぜなら、非を認めれば補修費用を負担する必要があります。残念ですが、この当たりは大手メーカーと地場工務店や零細な設備業者の力の差でしょうね。そういううがった見方をされても仕方のない『不明』という意味深な言葉づかいです。