住宅の一次取得で一番多いのが「建築条件付き」の契約ではないでしょうか。「プラン自由」の広告でおなじみの土地と建物のセット販売です。
本来建築条件付きの宅地販売では、まず土地の契約をして、その後3ヶ月程度のプランや仕様を煮詰める期間を経て建物の請負契約をすることが基本です。
しかし、多くの建売業者は、同時契約を進めてきました。多くの場合、間取りや仕様が曖昧なまま、「いつでも変更できます」という甘い言葉に吊られて、土地と建物の同時契約を急がされます。
そして、同時契約をしてしまうと、「どうもこの業者は信用できない」と思っても、簡単には解約できません。
そんな同時契約に鉄槌が下りました。
不適切な契約として業者を監督処分へ
建築条件付き土地売買に際して、土地の売買契約と建物の請負契約を同時に結ぶのは不適切・・として国交省中部地方整備局が、業者を監督処分にしました。
2016年3月23日、国交省中部地方整備局はサンヨーハウジング名古屋に対して、顧客と十分な協議をせずに同時契約をしたとして、宅建業法65条1項の規定による監督処分を行いました。
中部地整が問題にしたのは、契約前の打合せを無視して、標準プランを前提に契約したことのようです。会社全体で標準プラン前提の同時契約を推進していたとのこと。
同時契約の全てがダメと言うよりも、打合せもろくにせず、標準ブランでとにかく土地と建物の契約を強引に進めたことが問題だったようです。
この例に限らず、建築条件付きの同時契約は非常に多いです。
大手ハウスメーカーですら、「間取りは後でゆっくり考えられます」といって、平気で同味契約を求めてきます。
そのままうまく進めば何も問題は無いのですが、いろんな事情や相手との相性などで、後で契約を解除したいと思っても、だいたいの場合は、請負契約書に違約金2割と書かれています。
仮に請負金額が2,000万円だと、契約書通りの違約金なら400万円の違約金を支払わなければなりません。
そこまであこぎな住宅会社でなくても、契約時に手付金として支払っている100万円以上の金額は、「プラン作りに必要だった」等々と言って、まず返ってきません。
要は泣き寝入り。
そんな業者の悪しき慣習に、やっとメスが入ったようです。
処分内容
監督処分が下された原文を引用します。
特に(処分理由-赤字)がなかなかシャープです。
宅地建物取引業者に対する監督処分について
国土交通省中部地方整備局は、株式会社サンヨーハウジング名古屋に対し、下記のとおり宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号。以下「法」という。)に基づく監督処分を行いましたので、お知らせします。処分年月日 平成28年3月23日
(処分理由)
建物の工事請負契約の締結を停止条件とする建築条件付土地売買契約にあっては、工事請負契約の内容(金額も含む。以下同じ。)が定まらないままに土地売買契約と同日に工事請負契約を締結すると、契約後に買主の希望する予算や間取りで建物が建築できないことが判明し、契約を解除しようとするときに、買主は工事請負契約の前払金を放棄し、土地売買契約の手付金を放棄しなければならず、損害を被ることとなる。
被処分者春日井支店は、買主と土地売買契約を建築条件付で締結し、同日付で買主との間で内容を十分に協議せず、内容が定まらないまま工事請負契約を締結し、当該土地売買契約の停止条件を成就させた。
被処分者の行為は、不当に土地売買契約の条件を成就せしめるものであり、業務に関し取引の公正を害する行為に該当し、取引の関係者に損害を与えるおそれが大であり、法第65条第1項第1号及び第2号に該当するものである。(処分の内容 法第65条第1項に基づく指示)
宅地建物取引業にかかる業務の運営の適正化を図るため、以下の措置を講じること。
1 役員及び宅地建物取引業の従事者全てに対して、今回の行政処分の内容及び理由について、速やかに、かつ、適切に周知徹底すること。
2 建築条件付土地売買にかかる業務全般の点検を行い、不適切な点があれば速やかに改善すること。
3 少なくとも過去10年間において、建築条件付土地売買契約及び当該売買契約に係る工事請負契約を締結した案件で、契約解除に至ったもののうち、手付金放棄、前払金放棄、違約金又は損害賠償等が発生しているものについて、当該発生事由、契約における適用条項、金額の妥当性及び返還すべき金銭の有無を検証すること。
なお、10年を超えて検証することを妨げるものではない。
4 前各項について講じた措置(貴社において前各項に係る措置以外に講じた措置がある場合は当該措置を含む。)を平成28年4月28日までに文書をもって報告すること。
5 次の①についてを平成28年9月末までに、②についてを平成29年4月末までに、それぞれ文書をもって報告すること。
① 平成28年3月から平成28年8月までの間において、建築条件付土地売買契約及び当該売買契約に係る工事請負契約を締結した案件で、契約解除に至ったもののうち、貴社が当該解除に伴い契約相手から何らかの金銭を受けた案件がある場合には、当該事案の内容(契約件名、時系列の対応状況、対応内容、金銭を受けた理由など)
② 上記①と同様の事案及び当該事案に係る内容について、その契約期間を平成28年9月から平成29年3月までの間とするもの
まとめると…
この行政処分で「こんな方法で販売、契約をしてはダメだ」と言っていることは、
- 建築条件付きの契約で、(間取り自由、フリープランといつた販売です)
- 建物の間取りや仕様が曖昧なまま
(間取りはあとで決められます。まずは契約しましょうという場合が多い) - 土地の売買契約と、建物の請負契約を同時に契約する
行為を指します。
もし、あなたが業者と打合せをしていて、間取りもほとんど確定し、仕様も理解して了解している場合は、土地の売買契約と、建物の請負契約を同時に契約しても差し支えありませんが、間取りもあとから決める。仕様も確定していない時に同時契約は違法であると言っているのです。
消費者側に立って、初めての行政処分、見解の表明と言える画期的な処分です。