建築主Aさんその2:仲介屋との闘い!

惚れ惚れする基礎!』『仲介屋との闘い!』『最高の住み心地です。』は、全て同じ建築主さんです。

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乗り越えろ!!(2010.12.16)

頼りなく、だらしなく、無責任な仲介業者。
「信用してください」というフレーズしか知らない仲介業者。
顔を見せない売り主。

そんな売る側の決めた仕組みの中で、なんとか打ち合わせはしのいでも、本当にこれからの工事は大丈夫なのだろうか?
そういう不安を抱いて「建築主デジカメコース」を申し込まれる方も多いです。
※筆者が過去におこなっていたサポートサービス

でも世の中案外うまくしたもので、ダメ亭主にしっかり者の女房がくっついていたなんていう昔のたとえではありませんが、いい加減な営業マンとしっかり者の施工業者という組み合わせは意外と多いんですね。わたしはこれを「凸凹コンビの妙」と思っています。

そして、『言葉』の通じない仲介営業マンに四苦八苦しながら、どうにかこうにか着工までこぎ着けたこの方。普通なら、上の説明のように「しっかり者の施工者」が出てくるのが世の中の仕組みなのですが、とんでもない工事に見舞われます。
それが、前ページでお話しした「惚れ惚れする基礎」の顛末です。

建築主さん
心労が重なり過喚起症候群で救急車で運ばれるなんてこともありました。
心筋梗塞と勘違いし、死まで覚悟しました。

とメールに書かれていました。自分では気づかないものの、相当のストレスがこの時期までにのしかかっていたのでしょう。

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このような大きなストレスを抱えた建築主の方を時々見かけます。
欠陥住宅の被害者も同様のストレスを抱えます。

そう思うと「仲介業者」を含む住宅業界というのは、実に無責任で、身勝手で、でたらめな業界だとつくづく思います。でも、それを乗り越えないと住まいが手に入らない。

  • なぜ、自分が売っている住宅の説明が出来ないの?
  • なぜ、質問に答えられないの?曖昧な説明なの?
  • なぜ、最低限の図面すら作らないの?
  • 誰のための住宅?儲けられればいいの?
  • どうして時間を守れないの?
  • 何か言えば「信用してください」。今までの何に信用しろと言うの?

すでに住まいを建てられた方の中には、ざっと書いたこれらのことに憤りを感じた方も多いのではないでしょうか。

メールは続きます。

建築主さん
このメールを書くにあたり、十数センチに及ぶ、今回の家作りの書類やメールの束を読み返してみました。
よくまあ、いろいろあったし、よくがんばれたものだと思います。

神の計らい:黙っていてはしてくれない(2010.12.17)

建築主さん
約束を約束とも思わない建売業者に不信感を持ち、デジカメコースを申し込み、家作りについてたくさん学びました。管理を管理とも思わない施工会社に不信感を持ち、足繁く現場に通いました。
建築主さん
心労が重なり過喚起症候群で救急車で運ばれるなんてこともありました。
心筋梗塞と勘違いし、死まで覚悟しました。

 

しかし、

建築主さん
結果的には、
建売業者の計画より、性能のいい住み心地のいい家を手に入れることができました。
管理は自分でしなければなりませんでしたが、大手の住宅会社より安い金額で手に入れることができました。
建築主さん
サイアクの出来事のおかげで、サイコウな家ができたわけです。
神様の見えざるハカライ?なんてことまで考えてしまいそうです。

そして、メールの最後には、次のような言葉が述べられていました。

建築主さん
今回の家作りを通して、自分の気持ちを押し殺さず、相手に伝えることの大切さを学んだような気がします。
日本人は、黙して語らずが美徳・・・のようなところがありますが、それは違いますね。
やっぱり、話さなきゃ、人には伝わらない
個人的には、このことが学べたのが、人生における大収穫でした。

 

もし、この方が、「いい加減な仲介屋だし、住宅業界ってこんなものか」とあきらめていたら、
もし、この方が工事の多少の問題に目をつぶり、あるいは見ないそぶりをしていたら、多くの問題を隠しながら、建物は何事もなく完成していたでしょう。

でも、『言葉』の通じない相手に、『自分の言葉』を通じさせようとした結果、上棟したばかりの建物を解体し、基礎まで取り壊してやり変える決意を売り主の社長が固めたのだし、屋根通気や外壁通気工法の外壁モルタルなど、ほとんどしたことのない工法もキチンと下調べをして工事を進めたのでしょう。

その代わり、ストレスから過換気症候群で倒れたり、工事のチェックのために自分自身の時間を犠牲にしましたが、最後は、『神様の見えざるハカライ?』という言葉で言い表されたように、『苦労した甲斐があった』という結果に終わりました。

逆に言えば、この方の『言葉』に、売り主が答えてくれた、ということに他なりません。

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登場人物の特性(2010.12.20)

この建築主さんは、最後に、『自分の気持ちを押し殺さず、相手に伝えることの大切さを学んだような気がします。』と書かれていました。

さて一度、この場面、といっても建築条件付きの建物で必ず登場する4つの役者にスポットを当ててみましょう。背景を知るということですが、登場するのは、建築主以外では、次のようになります。

わかりやすいように、右の図の、
○であれば、必要な知識を持っている。
△は半端な知識しか持ち合わせていない。
×は聞きかじりの知識しか持っていないというように括ると、実は下のようになるのです。

売り主

契約に際して、実はもっとも肝心な人なのですが、仲介業者が入ると、ほとんど例外なく裏に引っ込んでいます。しかし、実際の権限は全てこの人が握っています。どの仲介屋に仲介を任せるかも、この人の権限です。

注文住宅ではありませんから、売買の前提となる土地を探してこなければなりません。
その知識は秀逸です。他の3者では誰もまねできませんが、土地を探さなければ自らの商売はあがったりです。その土地探しに、仲介業者も一役買います。

しかし、土地だけ売っても、全くうまみがないので、「建築条件付き」として建物もセットで売っています。
だから、不動産の知識と儲かる儲からないの建物コストの知識はありますが、施工上の知識や建物の細かな法律など知りません。とにかく、売れそうな土地を探すことが飯のもとです。

設計者

プランなどを考えてもらったり、仕様の打ち合わせをしたりします。要は建物についての専門家ですね。しかし、追加費用がどうなるとか、工事のことはさっぱりわかりません。間取りを提案して、建築確認を提出したら、この人の仕事は終わりです。

それ以上のお金ももらっていませんから、自分に不要な知識は身につけません。下手にこうするとコストがこうなる・・・なんて口が裂けても言えません。見積もりをする権限は持っていませんからね。

不要な提案などせず、出来る限り早く図面をまとめる・・それが設計者にとって効率的なお仕事ということになります。

現場監督

出来てきた図面に対して、工期内に引き渡すことが至上命題です。もらった図面に書いていないことは、一切興味を示しません。
だって、いちいち今までの打ち合わせ経緯なんか、聞く必要ないですから。

そして、誰(売り主、設計者、仲介営業マン)もそんなことは必要ないので言いません。
建築主と話をするのは現場に入ってからです。

仲介屋の営業マン

最初から最後までお世話になりますが、不動産売買のことしか知りません
だって、要は仲介屋ですから、アパートの賃貸物件の斡旋から、土地や中古物件の斡旋まで仕事は多義にわたっています。時には、家賃を支払わない入居者に督促をするのも、追い出しをかけるのも仕事の範疇です。

つまり、建築条件付きの建物の斡旋は、仕事の中の一つであって、全てではありません。
ですから建物は本当に二の次の話ですし、知識はありません。

この状態を非常に茶化していえば、当事者には大変失礼ですが、次のようになります。
みんな半端者。未熟者。

もちろんこれは、建築主の方も含めてですよ。
建築主の方だって、土地や建物の知識の豊富な方、そうでない方、中途半端に知っている人、間違って知っている人、実に様々なのですから、要はみんな半端な中で打ち合わせをしているのです。

だったら、いわなくてどうするのですか!!
相手はプロだから・・と勝手に遠慮したりしていても、どうにもなりません。

建築主の大いなる誤解(2010.12.24)

「惚れ惚れする基礎」の建築主の方がいわれた『自分の気持ちを押し殺さず、相手に伝えることの大切さを学んだような気がします。』という言葉。実は、建築主の方が抱く大きな誤解があります。

相手が気を悪くする・・という気遣い

その前提として、相手はその道のプロだろう・・ということが大前提としてあるでしょうね。

お医者さんに、自分の病気の治療方法を自ら説明したら、お医者さんは気を悪くする、というのと同じように考えてしまっているのですが、前回の説明のように、相手は「未熟者」であり、「半端者」であり、片手間でしていたり、いわば「本当の意味でのプロ」で無い場合も多いです。
しかし、相手は「自分は素人よりも場数を踏んでいるんだ。プロなのだ」と変な自意識だけは強いですから、こういう相手は、謙遜する「素振り」が一番。

『私たち、素人ですし、頭も悪いですから、その程度の説明では本当に飲み込めませんの。その上心配性なものですから、もっと詳しく説明を』なんて。とにかく自分を下げて、相手をおだてると、彼らはどこにでも登ってくれますよ。

工事の手抜きをされないか・・という気遣い

この手の心配をされる方も多いですが、今の世の中、完全分業の社会です。
昔のように、大工の棟梁と話を進め、仕事が決まれば、その棟梁の元で仕事が進められるような状態ではありません。
いくら仲介の営業マンと丁々発止とやり合おうと、あるいは外注の設計者に気分を悪くさせることがあったとしても、工事の手抜きをされるなどということは現代社会では起こりえないことなのです。

「簿惚れする基礎」の建築主の方が抱えた問題と同じような問題を抱えた方がいましたが、先ほど建物が完成しました。そのときにいただいたメールです。

建築主Bさん
営業マンは最後まで、トンチンカンな人物でした。追加決定事項に記載してある事でも、平気でその様な契約にはなっていません。と確認もせず言い切る。
メモもとるふりだけ、全然ひとの話を聞いていない横柄な態度・・・。社会人として全く常識のない人物でした。
建築主Bさん
デジカメコースを申し込んだときは、「ホンマに私にできるやろか」と不安一杯で現場に通いました。男の職場におばはんがのこのこ行って煙たがられやしないかと思いましたが。職人さんたちは愛想よく接してくれてありがたかったです。

 

この事例は非常に多いですね。
できの悪い営業マンと、そんなこと関係無しで、自分の仕事をしっかりしようとする職人たちの取り合わせです。

実は私もこの関係を外から見ていると、このでたらめで社会常識のない営業マンほど、現場に溶け込めないで、職人さんと話すら出来ない、という傾向が非常に強いんですね。(要は、この手のタイプは、じぶんのテリトリーでは我が物顔に偉そうにしているが、テリトリー外だとにわかに萎縮する内弁慶が非常に多いです)

建築主Bさん
契約の頃から不眠に悩まされ病院通いもしました。
家を建てるのにこんなにストレスとプレッシャーがあるとは思いもしませんでした。

・・と、この方も途中から病院通いをしていたそうです。社会常識のないバカな営業マンに振り回されたせいですね。

不動産仲介業は、個人の資質に左右される業界

不動産仲介業の企業数は2.8万社。そのうちの社員数4人以下の会社は2.5万社。
全体の86%にも達します。会社の資質ではなく、個人の能力に作用されてしまう経営規模なのです。
(内閣府調査、平成16年-注:賃貸専門、業界内の土地斡旋専門といった専門に特化した会社もあるため、この数が全てではありませんが・・)

決して相手を『無条件で』プロと思うな!

聞きたいこと、知りたいこと、わからないことは徹底して聞け!
そして、納得してから前に進む、という強い気持ちを持つことが大事なことだと思いますね。

なにしろ相手は、あなたにとっては『異邦人』ですから・・・。

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