契約約款には、いろいろな事が書かれていますが、実際には、契約約款に書かれている条文、条文の多い少ない、あるいは条文の言い回しでトラブルになるというケースは皆無に近いのです。
私の方でもすでに2000件以上の方をサポートし、数百件以上のいろいろな工務店、ハウスメーカーを見てきました。
そして、いろいろなトラブルにも遭遇しましたが、契約約款の内容でトラブルになったのは皆無です。
平たくいえば、契約約款に不公平がないか、という心配は、ごく普通の契約書や契約約款を使っている限りにおいては無いのです。
(だったら、前回のような説明をするなよ~となりますが、これも形の上では必要なので・・)
奇異に聞こえるかも知れませんが、契約約款は多少表現内容が異なっていても、あるいは書かれている中身が非常に少ないなぁ、と思われても、それで注文者が不利益を被ることはまずありません。
契約をするときのホントに大事なポイント
契約という行為は、契約書や契約約款の文言が自分たちの身を守ってくれるのではなく、どれだけしっかりした打合せを行ったか、その結果としてどれだけしっかりした(納得した)仕様書、図面、見積書を契約書に添付出来たのか、ということが、自分の身を守ってくる、ということなのです。
契約書や契約約款が身を守ってくれるわけではないのです。その中身そのもの(曖昧さのない仕様書や図面、見積書)なのです。
そして、過去の契約書にまつわるトラブルで一番な多いのは、最初のページの『価格と仕様が曖昧なままでの契約』なのです。
その次は業者倒産、あるいはあまりにひどい工事に契約解除をしたいが、過払い状態で手が打てない。というケース。
最後は、金銭的には小さな問題ですが、工事の遅延です。
そして、これらに共通していることは、
一つは、『契約を焦った』というケース
もう一つは、『業者の動向、言質、態度が気になるが、その心配から自ら目をつむった』という場合なのです。言い換えれば、予兆に気づかなかったか、その予兆にタカをくくった、ということなのです。
違法な工事を行い、手抜きを行い、あるいは約束を違えるといった行為は、契約するまでの打合せの過程で、何らかの予兆を発しているものなのです。
その予兆に自ら蓋をしてしまえば、いくら立派な契約書に判子を押そうが、それはただの紙切れになってしまうのです。
それぞれの実際に起きたケースを、簡単にご紹介しましょう。
実際に起きたトラブル例
坪単価だけで契約してしまった
ある方からいただいた相談メールです。
仕様書も、契約の前にやっと持ってきてくれる始末です。そして急がされるまま契約をしてしました。契約前には、これ以上金額が上がると購入が難しいことも伝えていましたが、いざ仕様を決める段階になり、ちょっとでも余分な事を言うと、どんどん値段がつりあがり、いらないものを省いたりして何とか調節していきました。
決して豪華なものを提示しているわけでもないのに思ったものが出来ず、悩んでいます。家も、中身もそう簡単に変えられるものでもなく、すでに契約してしまっています。私たちにとっては一生の問題です。どうすればいいのでしょうか。
これは、坪単価と簡単な間取りだけで契約させられ、その後の変更は、完全な売り主ペースで話が進む典型的な悪徳建売業者の話です。
業者倒産、薄氷の思い
Bさんは、理想の輸入住宅を契約し、いさんで着工を待っていました。
その後、構造図が欲しいと頼んでも引き延ばされ、基礎が終わってからも業者が忙しい等々の理由で、なかなか進みません。
基礎が終わったとき、この方はすでに建物の半分程度の代金を支払っていました。私の方で、『動きが倒産臭いから、動向に十分注意し、多少の事は目をつぶってでも、とにかく工事を進めるようにしなさい。支払った金額とイコールの工事になるまでが勝負です。』とアドバイスをしてから1.2ヶ月後、やはり倒産しました。と連絡が入りました。
幸い、倒産した時点で、工事の出来高(実際に工事が完成している割合)が支払っている金額とほぼ同じであったため、実質的な損害もなく、後の工事は、実際に工事をしていた下請けの工務店が引き継ぐことになりました。
相手の要求があったのでしょうが、不用意な過払いは、相手に良い格好をするだけで、いざというときに自分が助かることはありません。
でもこの方にとっては、倒産までの心労と、誰にも文句が言えない完成の遅延、そして倒産してからも倒産会社と下請けとの引き継ぎ契約のための弁護士への業務依頼など、工事完成までにずいぶんと時間と無駄な費用と心労を引き替えにされたのです。
こういう例に限らず、過払いが大きすぎると相手に文句も言えず、契約解除だ、とも切り出せず、交渉上大変不利な立場になってしまう場合が多いです。
世の中の仕組みは、やはり、お金を支払う側、お金を持っている側が強いのですよ。
1ヶ月近くも伸びたのに遅延金は結局もらえず…
しかし、引渡遅延金が約款に書かれていなかったために、押し問答の末、しぶしぶ、ほんの少しのサービス工事だけで、手を打たざるを得ませんでした。
1ヶ月程度の遅延は、仕方がないと言えばそうですが、その間の精神的な苦痛は大きいものです。
引渡日が曖昧。違約金が書かれていない。という業者ほど、約束にルーズですから気を付けましょう。
まとめると…
さて、改めて整理してみましょう。
- 間取りや仕様、追加費用などを曖昧にせず、九分九厘まで詰めてから契約をする
- 引渡の日付は必ず明記する
- 支払い条件が過度な過払いになっていないこと
- アフターサービスの基準や期間が明確な会社を選ぶこと
- 遅延損害金が条文に無ければ、特約で記入するのも一つの方法
- 解約は簡単に出来ないと思うべし
そして、
- 営業マンは、急かすのが仕事と割り切ろう
- 営業マンは、あなたのためが半分、でも本当は自分の成績がもっと大事
- 住宅営業マンのレベルを知るには、契約約款の用語の意味を説明してみろ、と言ってみましょう。
そして、耳障りの良い言葉の正体を見極めましょう。何事にも約束を守る人なのか、を見定めよう
補足:営業マンには、固定給、固定給+歩合給、完全歩合給の3つの給与形態があります。あなたが彼らの給与体系を知ることは出来ませんが、あなたのように固定給+賞与という安定した給与体系ではない会社も多いという現実を知りましょう。
歩合給が多くなれば、そりゃあ、契約を取るまではありったけのリップサービス、契約が取れれば、次の魚を釣ることしか目がいかない情けない営業マンが多くなるのも必然ですからね。
最低限、これだけ詰めれば、後は契約書に太鼓判を押しましょう!!