気になる基礎のクラック

戸建て住宅でも基礎には必ずコンクリートが使われています。
そして、基礎にクラックが入ると、『わぁ、欠陥工事!大変だ・・・』と心配になるのですが、実はクラックにも腫瘍と同じように、鉄筋やコンクリートなどの施工不良や、構造な要因で発生した根本的処置が必要な『悪性のものと、構造的には関係のないコンクリートの宿命的な、絆創膏で済むようないわば『良性とも言えるものがあります。

そもそも、コンクリート学会というものがあるほどに、コンクリートの世界は奥深く、未だに、コンクリートのひび割れを完全になくす技術は開発されていません。

そのクラックでもっとも多いのがコンクリートの『乾燥収縮』によるもので、一般的にコンクリートの乾燥収縮率は0.1%前後と言われています。

なんだ、少ないじゃないか・・と思われそうですが、0.1%も1mに直すと、実は1mmなのです。
つまり、10mの長さだと、実に1cm(センチメートル)もの収縮が起こるのです。

ただ、実際には、強度などとは関係なく、収縮を防ぐために鉄筋などを入れて鉄筋の廻りにコンクリートを拘束させることで、長い長さの基礎を打っても、1mm(ミリメートル)も収縮することは有りません。

しかし、時には打設後1年以上してからでもコンクリートには、乾燥収縮によるクラックが発生します。
それは、コンクリートというものが、コンクリート内の水分を1年以上の長期間を掛けて放出し、その過程で収縮が行われているからです。

コンクリートにクラックが発生するのは、ある意味でコンクリートの持つ宿命です。
つまり、どんなにキッチリした施工をしていても、完全にクラックをなくすことは不可能なのです。

クラックが発生しても、いたずらに騒がず、そのクラックが構造の不備を原因としない『良性』のものか、あるいは何かの施工不良や、構造的な事を原因として起きた『悪性』のものかを判断することが大事ですよ。

ただ、設計者や施工者の中には、施工不良が原因であったり、構造的な原因からのクラックであっても、何でもかんでも、『乾燥収縮だから大丈夫だ・・』と口をぬぐう建築士も多いようですから、ご用心を。

■良性
施工不良や構造を起因としないもの(乾燥収縮などが多い)
→エポキシ樹脂接着などで補修■悪性
何らかの施工不良や構造を起因として発生したもの(不同沈下、かぶり厚不足など)
→原因の根本的除去が必要

注:ここでは、建物完成後に生じるクラックとして説明しています。コンクリート施工直後に発生するクラックは、別の原因がある場合が多いです。

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対処すべき幅?対処する必要がない幅?

クラックにも、いわば『良性』と『悪性』の2つがあると書きましたが、クラックの幅も同様に、『対処すべき幅』と『対処する必要のない幅』があります。

これは土木学会と建築学会で多少基準が異なりますが、一般的には0.3mm程度のクラックであれば、特に対処する必要はありません
クラックがあるとコンクリートの中に雨水が浸透し、長い間に鉄筋などを腐らせ、その結果、強度も弱くなっていきますが、幅0.3mm程度のクラックは、雨などが入らない(極めて入りにくい)とされています。

また、クラックというものは、出来てからず~っとそのままの幅・・ということもなく、幅が広がっていく場合もありますから、この程度の幅の場合は、経過観察で様子を見ておくのが一番です。

そして、幅が0.5mmを超える頃から、クラックの隙間に「エポキシ樹脂注入」といった方法で強力な接着剤を入れて接着させるのが一般的な補修方法です。

また、クラックはコンクリートの宿命であると書きましたが、そのためにクラックの補修方法はたくさん開発されており、クラックが出来たからと言って、クラック自体を極端に不安視する必要は何もないのですよ。

阪神大震災でも、多くの鉄筋コンクリート造の建物の柱や梁にクラックが入りましたが、そのほとんどすべては、補修されて元通り建物として使われています。

ちなみに上の写真はクラックスケールといって、クラックの幅をはかる道具で、大きなホームセンターで数百円で売られています。

クラックが表れる方向から見るクラックの原因

ついでなので、クラックが表れる方向によって、何が原因のクラックなのか分かる目安がありますから、ご紹介しておきましょう。
ただし、すべてがすべて書いているとおりの原因だけで発生するのではありませんから、あしからず。

まず、基礎などに良く発生する縦方向のクラックのほとんどは「乾燥収縮によるクラック」で、たまに「かぶり厚不足などを原因とする乾燥収縮クラック」があります。

そして、壁などに斜めに発生するクラックは、多くの場合「応力クラック」といわれるもので、何らかの力が壁に加わったために生じたクラックです。この場合は、構造的にどういう力が加わったのかをキチンと調査する必要があります。

窓やドアのコーナーに斜めに入るクラックは、「乾燥収縮による場合と地震などの応力が加わって出来る応力クラック」の場合の2つがあります。

しかし、地震もないのにこのようなクラックが発生する場合は、例外なく乾燥収縮クラックで、モルタル外壁などで見られますが、多くは下地ラスの補強不足などの施工不良が原因です。

住宅の基礎ではまず見られませんが、柱などに横方向に出来るクラックは、基本的に「せん断クラック」とよばれ、何らかの応力が加わって生じるクラックが多く、地震の後で発生したような場合は、これも調査をする必要のあるクラックです。

また、大きな梁の下半分やその横際に出来るクラックも「応力クラック」の可能性が高く、調査の必要なクラックです。

クラックにはこれ以外にも原因もありますが、いずれの場合でもクラックが発生したからといって大あわてで対処する必要はありません。

こういった話が出るときに良く言う話ですが、「とにかく経緯観察」です。広がっていくのか、そのまま止まってしまうのか、数が増えていくのか・・・と言ったことは、最終的な原因を導き出すためにも必要なことですからね。

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