どんな形状にも適合出来るモルタルは外壁の表情を豊かにすることが出来ますが、良いことばかりではありません。
モルタルの宿命はひび割れです。
モルタルのひび割れを抑制させる添加剤などもあり、昔ほど必ず発生するというものではありませんが、日々、コンクリートやモルタルのひび割れをなくすための努力はされ、これだけ科学技術が進歩してもいまもって根絶されていません。それだけひび割れをなくすことは難しいのです。
最近では、モルタルを塗っていく途中にステンレスやファイバーグラスなどの細いメッシュを塗り込み、収束部分を多く作り、ひび割れを発生させにくくするクラックレス工法も開発されています。
しかし、モルタルを使う以上、避けて通れない宿命のようなものと考えておきましょう。
ひび割れのメカニズム
コンクリートやモルタルにどうしてひび割れが起こるのか。
それは、これらの材料が乾燥する過程で必ず縮んでいく(収縮)という物理的性質があるからです。縮もうとする性質のために、下図のように、ある長さを境として、どちらかの側に縮んでいきます。その際に出来て分かれた部分がひび割れとなって残ります。
コンクリートに鉄筋を入れるのは、強度を持たせると同時にひび割れを抑制させる目的でもあります。
そのため、クラックレス工法でモルタルにメッシュのようなものをいれるのもそのメッシュ筋にモルタルが固着することで、自由に動く面積を少なくさせ、ひび割れが生じないようにしているのです。
メンテナンス時期は、仕上げ材の優劣と耐震性
モルタルそのものの耐用年数は、普通の施工する限りにおいては30年程度は特にメンテを必要とせず持たせることが出来ます。
そのため、モルタルを選択した時のメンテナンスは、1.漏水の恐れのあるひび割れの発生、2.仕上げ塗装の劣化、3.建物の耐震性の高い低いの3つの要素で概ね決まります。
ひび割れが発生しても美観上以外では、雨がクラック内に入り込むかどうかですが、幅0.5~1mm程度を越えなければそれほど心配はいらないでしょう。(逆に1㎜のクラックでも水は確実に内部に浸透します)
また、塗装など仕上げ材の劣化によって、見苦しくなり、メンテの潮時を計ることがありますが、退色も劣化も、塗装の世界では、単純に値段が安いほど、これらの耐候性も低いと考えておくのが無難です。
そして、耐震性とどうしてメンテナンスが関係あるか不思議かも知れませんが、モルタルの外壁は変形するとひび割れを生じる材料です。
しかし、建物は地震によって揺れ動き、変形しますが、耐震性が高いほど地震を受けたときの揺れ幅も少ないため、結果としてひび割れが生じにくい、ひび割れが生じにくいためにメンテの時期を遅らすことが出来る、という理屈になります。
モルタルの寿命は・・・
上では、モルタルの30年程度、と書きましたが、特に定まった定説があるのではありません。
古いモルタル仕上げをした住宅などを見ていると30年前後は問題なく経過しているので、30年前後は大丈夫と書いているに過ぎません。
年数が減るほどもろい
コンクリートもモルタルも同じですが、あるいはサイディングも同様かも知れませんが、年数が経ていくほどもろくなっています。古いコンクリートを計ると強度はあるにも関わらず容易に割れやすくなっています。
その理由までは調べていませんが、次のように考えておきましょう。
若い材料は、みずみずしく、いわば湿気たおかきのようなものです。湿気たおかきは容易に割れません。しかし、カラカラに乾燥したおかきは、サクッと割れます。
このような現象が古くなっていくほど強くなっていく傾向がありますが、見た目にはわかりませんよ。
モルタルの通気工法
サイディングは通気工法が必須工法だと述べました。それは、軸組内の内部結露防止に大きな効果を発揮しているでしょうね。
しかし、モルタルでの通気工法はどうなのでしょうか。
やはり、今でも通気工法を採用してモルタル外壁を作っている例は極めて少数ですが、モルタルにも通気工法が無くはありません。
以前は、サイディングと同様に胴縁で通気層を設けて、その上に下地を張り、モルタルを塗るサイディングと同様の通気工法がありましたが、取りつけ方法に習熟が必要であったり、コストがかかったりするためほとんど普及していませんでした。しかし最近では、防水シートと通気層が一緒になっている通気専用シート(エア・パッセージシート)が取り入れられるようになります。
ただ、通気層の厚みがわずか5mmしかないため、従来の胴縁による15mm程度の厚みによる通気層に比べれば、同等程度まで通気されているのかどうかは確認出来ていません。
(注:エア・パッセージシートはデュポン社の商品名です)
上の写真は、胴縁の取りつけによって通気層を設ける旧来の方法。
ただし、サイディングよりも倍以上重いため、取りつけ方法に習熟が必要でほとんど普及していなかった。
右はエアパッセージシートの説明文。
注:三井ホームの住宅の外壁は全てモルタルですが、その下地も上のエアパッセージシートに類似した通気工法を採用しています。
そのために胴縁をつかう通気工法はモルタルでは普及していません。