田舎はなぜ涼しい

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田舎と都会の気温


さて、田舎というものがある方ならわかりますが、田舎は日中は暑くても朝晩は涼しいですね。確かに外気温も違う。人も少ない。自動車も多くない。いろんな事情で都会よりも、田舎の方が涼しいのですが、これにもある現象が大きく関係していると思います。

それは、物の温度とその特性です。

右の図は、私が放射温度計で計測したそれぞれの物の温度です。
注:外気温が、最高気温31℃。最低気温25℃と仮定しましょう。(気象庁発表気温ですから、炎天下ではもちろん35℃を超えているでしょう)

それぞれの材料の表面温度

それぞれの物の温度(表面温度)は次のような動きを示します。

●芝生や木陰の土、あるいは下草のある土の温度は、ほぼ外気温に応じて変化します。暑くはなっていません。外気温が下がれば、それにつれて土の温度も下がります。
外気温が30℃なら、芝生や木陰の土、あるいは下草のある土の温度は、30℃前後です。●グラウンドなどに代表される乾いた土。これは、直射日光が当たる分だけ外気温よりも高くなりますが、それでも35度前後までで、夜半には外気温と同じ温度にまで下がっています。●インターロッキングは、土よりも温度が上がり、下がり方も少し緩やかです。●アスファルト舗装は、日中50℃前後にまで達します。しかも、夜になってもなかなか温度が下がりません。夜10時に外気温が27度にまで下がったときでも、アスファルト舗装の表面温度は、まだ35度にも達していました。さらに翌日の朝8時にはすでに43℃にも達していた『恐ろしく暑い材料』です。●コンクリートはインターロッキングとアスファルトの中間的な温度変化です。

●自動車のボンネットは、日中50度前後にまで高くなりますが、夜には外気温と同じように下がっていきます。熱の順応性が非常に良いです。外気温よりも遙かに暑くなるが、夜は必ず外気温まで下がります。

まとめ

これをまとめると、土は太陽に照らされてもなかなか温度が上がらない。特に下草があったり木陰だとほとんど外気温と同じ程度にしか上がりません。

ところが、アスファルト舗装は、太陽に照らされるとうなぎ登りに温度が上がり、なかなか下がらないのです。(新しいアスファルトほどそういう傾向を示します)
さて、右上の写真のように木立に一杯囲まれた、あるいは畑や水田などたとえ下草でもあればあるほど、周りの温度も高くなりません。大きな樹木の下や下草のあるところでは、実は一番涼しい場所なんですね。

しかし、コンクリートジャングル、アスファルト舗装だらけの都会では、いやが上にも熱は高くなる、下がりにくい要素ばかりがあるのです。 あふれんばかりの人間、エアコンの室外機からの排気熱、料理店の換気扇から出る熱風、自動車のエンジン熱、排気ガスといった発熱材料に事欠かず、コンクリートやアスファルトなど蓄熱体にも事欠かない都会は、まさに『熱を貯めるためにある街』なのです。

ともすれば、私たちは気象庁発表のお決まりの気温だけを何かの指針としています。 でも、このような物の温度の変化を知ると、少しいつもと違う視線で見つめ直すことも必要なことではないかと思います。
なぜなら、人間が外気温を計画的に取り始めた頃、ほとんどが土の道路でしたし、扇風機すら無かった時代でしょう。今では土の道路を探すことの方が難しく、人と物の数は、当時の幾十倍にもあふれかえっているのですから。
注:気象庁が気象統計を取り始めたのは1875年です。

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