【お断り】平成25年~計算方法が変わり、Q値からUA値に変わりましたが、断熱性能を上げる基本は全く同じなので、古い基準値ですが、Q値で説明しています。
断熱性能を上げたい。数値的に言うと「Q値を上げる」ことに他なりませんが、単純に考えれば「断熱材の厚みを厚くすればいいんじゃないの」と考えがちですが、計算してみると、おもしろい結果となりました。
Q値は建物の断熱性能の尺度の一つで、数値が低いほど高断熱
(各地域のQ値は右図に記載)
-窓からは外壁の8.5倍の熱が入る
断熱材を厚くすればQ値が上がるはずだ
スタート時の基準はⅣ地域で、右のBASEの図です。Ⅳ地域のQ値2.7では、天井の断熱材の厚みは200mm。外壁は110mm。床は110mmで、窓はアルミサッシにペアガラスとなっています。それをⅡ地域並みのQ値1.9に上げようと考えます。
Q値を上げるなんて断熱材を厚くすればいいんだ~。誰だっていの一番にそう考えます。でもダメなんです。
STEP-1の図が断熱材だけを厚くして計算したものですが、天井、外壁、床の断熱材を4倍に厚くしても、Q値1.9に届かず、2.2ぐらいにしかならないのです。
『えっ~。断熱材をいくら厚くしてもダメ』ということがわかりました。
サッシを変えるとクリアした
さて、STEP-2の図は、現在のⅡ地域の次世代省エネルギー仕様の断熱材とサッシの組み合わせですが、断熱材の厚みは天井と外壁は変わらず、床が1.5倍程度に厚くなっているだけです。もちろん、Q値1.9をクリアしています。
何が変わっているのか。それはサッシなのです。
サッシの高性能化がQ値を上げる秘密だったのです。
計算式に秘密あり
なぜサッシを変えるだけでQ値が突然上がったのか?
そこにはQ値を計算する計算式を眺めると良くわかります。
Q値計算とは
Q値を簡単に簡単に説明すると、建物の表面積x断熱性能(熱貫流率)の平均値(要は熱損失の平均値)を建物の延べ床面積で割ったものなのです。
下の図で、たとえば屋根、外壁、床の表面積が200m2あり、その断熱性能(熱貫流率)が0.5。
窓とドアの表面積が50m2あり、その断熱性能(熱貫流率)が5と仮定しましょう。断熱材の性能を0.5から0.2に倍以上に上げたところでQ値は2.9とあまり下がりません。
ところが、窓の断熱性能を上げると、Q値も2.0と一気に下がりますね。
トリックのように見えますが、断熱の弱点だった窓の性能を高めたからこそ、Ⅳ地域とⅡ地域の断熱材の厚みはあまり変わらないのに、Q値が上がった大きな理由なのです。
Q値とUA値
断熱基準に関する平成25年の改訂で、従来のQ値という基準が、UA値(外皮平均熱貫流率)という基準に置き換えられました。ただ、分子は変わらず、分母をより実態に近い外皮の面積に変わっただけです。
そのため、サッシを高性能にすれば、断熱性能も大きく向上するという上で説明した原理はそのまま生きています。
窓は外壁の約8.5倍の熱が入る。窓は断熱の弱点。
だから、窓の性能を高めることが次世代省エネをクリアした後の次のステップなのです。