内部結露を防ぐには何が効果的か?
もう一つ大事な側面として、建物の外壁材に関するいろいろな工法の問題があります。
内部結露を防ぐためには、
2)壁内に入った湿気を早期に排出することが内部結露防止に有効であり、 外壁通気工法が効果的である。
3)室内の湿気を壁内に入れないためには、室内側の透湿抵抗を高くすればよい。
といったことが言われていますが、実はこれらのセオリーに反した建物も非常に多く建てられています。
その代表的な事例を下に紹介しています。そして、これらの建物はすべて内部結露しているのでしょうか。という疑問がわいてきます。
下の図では、材料の透湿抵抗の高さ(防湿性能=透湿抵抗)を堤防と考え、室内外の堤防がどの程度であるのかを表しています。
内部結露を防ぐためには、室内側の透湿抵抗値を高くすることがセオリーですが、逆転している工法があります。赤地部分のCとEは、逆転している工法 (下表はその計算値)
下図の外壁、内壁側のそれぞれの透湿抵抗
合計 | ||||
A | 外壁側 | 透湿防水シート | 0.087 | 0.09 |
内壁側 | 断熱材 | 1.25 | 454 | |
防湿気密シート | 452 | |||
石膏ボード | 0.78 | |||
B | 外壁側 | 透湿防水シート | 0.087 | 10.4 |
構造用合板 | 10.3 | |||
内壁側 | 防湿層付き断熱材 | 17 | 17.8 | |
石膏ボード | 0.78 | |||
C | 外壁側 | モルタル | 4.25 | 19.6 |
フェルト | 5 | |||
合板 | 10.3 | |||
内壁側 | 防湿層付き断熱材 | 17 | 17.8 | |
石膏ボード | 0.78 | |||
D | 外壁側 | モルタル | 4.25 | 19.6 |
フェルト | 5 | |||
合板 | 10.3 | |||
内壁側 | 断熱材 | 1.25 | 453 | |
防湿気密シート | 452 | |||
E | 外壁側 | サイディング | 7 | 37 |
断熱材 | 30 | |||
内壁側 | 石膏ボード | 0.78 | 0.8 |
注:施工精度は無視して、材料の透湿性能のみで比較しています。
いろいろな外壁材の組み合わせと壁内の湿気
左の図は、室内側に防湿気密シート(ポリエチレンシート0.1mm)をはり、外壁通気工法にした建物ですが、防湿気密シートの高い透湿抵抗で完全に湿気をブロックし、壁の中に入れない鉄壁の内部結露防止工法です。
もちろん、外壁側に合板など少しでも透湿抵抗のある材料は使いません。
注:防湿気密シートは次世代省エネルギー仕様以外は使われていません。
防湿層付きのグラスウールやロックウールの断熱材を入れ、外壁には合板を貼り、その前に通気層を設け、サイディングを貼る場合に軸組工法や2X4工法のどちらにもよく行われている方法です。
この場合、室内側の透湿抵抗は10程度、外壁の合板が17ですから、室内側の方がわずかに透湿抵抗が高いことになります。
外壁モルタルも多い事例ですね。この場合は外壁側と室内側の透湿抵抗は、ほぼ均衡しています。
パワーボード(ALC)は、透湿抵抗は低いですが、外部に防水性塗料を塗るため、全体としては極めて高い透湿抵抗が外壁側に作られます。
次世代断熱仕様で外壁モルタルも2X4工法でよく行われている仕様です。
でも、 防湿気密シートを張り、室内側に完璧な防湿層を作っても、外壁側合板とモルタルで透湿抵抗は17程度になり、室内側の湿気は壁の中に侵入しなくても、外壁側から壁の中に一旦滞留すれば容易に外部に放出される構造ではありません。
外断熱工法はどうなのでしょうか。発泡系断熱材の透湿抵抗は30~40と非常に高く、対して石膏ボートの透湿抵抗は0.78ですから、これは常に壁の中に室内の湿気が侵入する構造です。
Ⅰ地域-5:1
Ⅱ地域-4:1
Ⅲ地域-3:1
Ⅳ地域-2:1
Ⅴ地域-1:1
(外側材料の透湿抵抗の合計:内側材料の透湿抵抗の合計)