実験室
実験は下の図はのような人工的な気象条件作り出せる実験室で、試験体は幅40cm、高さ1.9mのもので、右の図のような2つの実験体で実験をしています。
試験体
試験体はいずれも通気工法を採用し、袋入り断熱材と石膏ボードにビニールクロスという組み合わせで、後は外壁側が図Aのように透湿防水シートだけか、図Bのように透湿防水シートの裏に合板を貼ったかの違いだけです。関東、関西などの温暖地域でもっとも多い組み合わせではないでしょうか。
そして試験体にはコンセントプレートを設けて、断熱材の防湿層に欠損がある(すき間がある)という設定です。
注:ある調査によると、最近の住宅は外壁にサイディングを使う比率が80%を超えているようです。つまり、このどちらかの組み合わせがほとんどと言うことです(残りはモルタル外壁など) 実際には、これ以外に透湿防水シートが切れていたり、合板に穴を開けたりと言った少し違う設定も同時に実験していますが、ここでは合板のあるなしが内部結露に与えた影響のみをご紹介致します。
気象条件
設定した気象条件は、室内側は気温20℃、湿度60%が連続した状態です。。外気温は0度の設定です。(外気温の湿度は記載されていませんでした)
内部結露対策の合板を使うのは良くないのでしょうか。
数年前、数人の研究者が助成金を受けて、合板のあるなしが内部結露にどのような影響を与えるの実物大実験をされました。
実験結果は・・・
合板がなく、図Aの透湿防水シートだけの場合は、内部結露が発生せず、合板を張った図Bの場合は、実験3日目に内部結露が発生したと言うことです。注意すべきは、合板を貼った試験体でも初日から内部結露が発生したのではなく、連続して同じ気象条件を続けた3日目に内部結露が発生した点です。 つまり、合板があるとある程度の透湿抵抗があるので、長い間一定の気象条件が続くと内部結露を発生されると言うことです。 (データ出典:温暖地における充填断熱工法による壁内結露の実験的検証と断熱工法に関する研究より)
しかしながら・・・
セオリー通りの完璧な家はほとんどありません。
それでも温暖地域で内部結露が深刻な問題となった、という事例はほとんどありません。
それは、この気象条件にあります。
つまり、セオリーから考えれば、不完全ではあるけれども、温暖地域の気象条件の実態は、室内側の気温20℃、湿度60%の条件が3日間も続くことはありませんし、外気温が3日間も0℃でありつづけることもありません。
つまり、この気象条件がセオリー通りでなくても大丈夫な理由なのです。
モルタル外壁はどうなの?
外壁の仕上げがモルタルの場合はどうなのでしょうか。 上の説明のように合板があると、実験3日目には結露が発生したと説明しましたが、それは、外壁側に貼られた合板が壁内の湿気を外に逃がす時の堤防になったからです。
透湿抵抗とは、材料が湿気を通す度合いと言いましたが、言い換えれば「湿気を防ぐ堤防」と考えればわかりやすいかも知れません。
右の図Aのように、外壁側は通気工法だけで合板を貼らず、室内側に防湿気密シート(ベイバーバリア)を貼れば、透湿抵抗の値は図のように、外壁側0.09、室内側512で、まず室内に発生した湿気を防湿気密シートが完璧に遮断して壁の中に湿気が入ることはありません。
次に温暖地の都市部で最も多い外壁サイディングの場合は図Bの状態です。外壁側の透湿抵抗値は約10(ほとんど合板の値)。室内側は約77。これは防湿層付きの断熱材の抵抗値17とビニールクロスの抵抗値60の合計です。 この場合は、少しずつ室内の湿気は漏れだし、合板の堤防があるために壁内に溜まりますが、それでも外壁側の堤防が低いために一部は外に排出されます。
外壁がモルタルの場合は、図Cで、外壁側の抵抗値は約19(モルタル+フェルト+合板)。室内側は図Bと同じです。 つまり、外壁モルタルの場合は、モルタルやアスファルトフェルトといった材料があるために、合板だけよりも外壁側の抵抗値が高くなります。
その結果、サイディングの外壁よりも壁内に滞留する湿気の量は多くなると考えられます。それは何を意味するかというと、全く同じ気象条件で推移した場合、前回の図Bの状態で3日目に結露したものが、もう少し早い時期に結露が発生すると考えても良いのかも知れません。
このように内部結露に対しては、外壁モルタルはサイディングよりもリスクが少しだけ高くなる材料 と言えます。