調停か、裁判か?

住宅に問題が発生すると、誰でも最初は業者との直接交渉によって解決を図ろうとします。また、最初の直接的な交渉の中で業者も非を認め、自発的に修理をしてくれる、というのが建築主にとっても一番良い状態です。
でも、なかなか非を認めなかったり、問題ではないと取り合わなかったりすると、建築主がとれる手段は、調停や裁判と言った限られた手段にならざるを得ません。
このページでは「調停」と「裁判」の違い、主として「調停」の特徴を説明しています。

その前に、裁判などに行く前には、大きくは下のような流れをたどる場合が多いです。
それぞれに一本道ではなく、紆余曲折を経て調停や裁判を考えざるを得なくなっていきます。そして、調停や裁判をすることに決意を固めるまでには、問題発覚から1年近くの年月が流れている場合が多いです。

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調停の特徴

行政と行う「建設紛争審査会」と、裁判所が管轄する「調停」

調停には2つのケースがあり、一つは建築紛争のために特別に設けられている昔からの制度で「建築紛争審査会」という行政窓口を利用する場合。もう一つは裁判所が担当するいわゆる「調停」です。前者は申請窓口が地元の行政ですし、後者の申請窓口は裁判所になります。どちらもやっていることは基本的に同じです。
強いて優劣を書こうとすれば、簡単な問題、争点が多くない問題は「建築紛争審査会」。複雑になるほど「調停」の方が良いように感じます。

建築士が専門家の立場で参加する

いずれのケースでも、3名の調停委員が仲裁に入り、「建設紛争審査会」では、行政の担当者、弁護士、建築士の3名。調停では裁判官、弁護士、建築士といった形で3名の調停委員が仲裁に入り、その3名の中に、原則的に、裁判所あるいは建設紛争審査会から指名された建築士が中立の立場で参加しています。
注:地方の裁判所の調停では、建築士の参加がなく2名で行われている場合もあります。
注:建築紛争審査会も裁判上の調停も、やっている事は同じなので、以降、どちらも調停と呼称します。

証拠提出も大事

よく、調停をすれば、妥当な結論を調停委員が打診してくれる。あるいは、ギクシャクした相手との間を取り持って、良い和解案を示してくれる、と期待しがちですが、それは大きな間違いです。また、建築紛争の場合は建築士が専門家の立場で、調停委員として同席する場合がほとんどですが、彼らが「欠陥住宅の真相を暴いて、裁いてくれる」と言うほど甘いものではありません。何が問題で、それは何に違反し、具体的にどんな損害が生じているのかと言った、裁判と全く同じような立証と説明を尽くして調停委員に説明していなければ、有利には動きません。
注:調停は捜査ではないので、建築主が訴えている事柄の是非は判断しても、それ以上突っ込んで調べたりして
くれるところではありません。

個人で行う調停のデメリット

調停の申請は個人でも可能で、弁護士を入れずに調停に臨むことも可能です。弁護士費用などが不要で安く済む反面、こういう場合に多く見られるのが本来大きな問題でないところなのに感情的に固執してしまい、反対に直さなければならない大事な問題に気がつかないなど、いわゆる素人療法的な間違いを犯している場合が多く、たとえ調停でも、しっかりした建築士のサポートは不可欠です。

あくまでも双方の歩み寄りが前提

そして調停で絶対に誤解をしてはならないのは、相手が直すことを同意しなければ決して前に進まない。あるいは直すことは同意しても、自らが描いていた直し方と異なり、その差を埋めようとしても、それを調停委員が説得できることはまずありません。
たとえば、ある外壁の不具合で、建築主は外壁一面の全面張り替えを求めた。しかし、業者は部分補修で譲らない、といった場合は、調停委員は双方の話を聞いて歩み寄りを求めたり、全面張り替えが妥当と判断すれば、相手方に全面張り替えをするように打診しますが、あくまでも打診であって判決ではありません。そのため、相手がそれに同意しなければ調停は物別れとなってしまいます。
注:調停は裁判と異なり、調停への出席を断っても不利にはなりませんし、相手を交渉のテーブルに着かせる
強制力は調停には全くありません。

おおむね4.5回で結論

双方の言い分を聞いて判決を出すのではなく、双方の合意点を探るのが調停ですから、双方が同意しなければ物別れにならざるを得ない、という調停独特の理由のため、ほとんどの調停は最初の2.3回で双方の意見を聞き、その後4.5回目で双方に妥当と思われる調停案を打診しますが、それでもお互いが合意できなければ「物別れ」となって解散します。(これを調停不成立と言います)
注:調停では、最初の2.3回目程度の早い段階で、現地に調停委員が訪れて、現地の状況を確認する場合が
多いです。逆に裁判の場合の現地調査は裁判の後半ですし、しない場合も多いです。

白黒を決める場所ではない

また、裁判のように徹底的に双方の主張を吟味して白黒をつれる、というよりも、ある程度の妥協線で双方の歩み寄りを求めるのが調停ですから、裁判をイメージした徹底した証拠調べや、はっきりと白黒をつけるというよりは、まぁまぁの線で妥協線を下がるのが調停だ、と考えた方が良いでしょう。
そのため、白黒をはっきりと付けたい。調停委員に明確にジャッジして欲しい、と希望される場合は、問題によっては調停はなじまない場合があります。

謝罪は一切期待しないこと

欠陥住宅被害に遭われた方で多いのが、「一言でも良いから、相手から謝罪が欲しい」という気持ちがありますが、調停であれ、裁判であれ、これらは期待しない方が良く、あくまでも実質的に被害を解消する一点だけを考えた方がうまくいきますし、過去、調停や裁判までなったケースで、相手から謝罪があったというケースはほとんど無いと思います。

調停は、話し合いと妥協が出来る相手のみに有効

つまり、どこまで行っても、双方が歩み寄ることが大前提なのが調停というものなのです。そして、調停委員はあくまでも働きかけるだけで判決のような強制力も、捜査権のような強制調査力も持ち合わせていませんから、双方の当事者の歩み寄ろうとする気持ちが無ければ調停は成立しません。

裁判の特徴

相手が交渉すら応じない場合、解決の方法に大きな隔たりがある場合は、裁判での白黒しか残されていない

相手が交渉に応じる姿勢も見せない。あるいは交渉には乗るが解決の方法に大きな隔たりがあり、その溝は埋められない、といった場合は調停ではなく、裁判で白黒を決着させるしか方法は無くなります。要は、どちらも妥協できないのだから、裁判官に判断してもらい、どちらの言い分が妥当なのかと言った判決をもらうという方法ですね。
もちろん、相手方が裁判を無視すれば訴えた側の主張が全て通りますから、裁判の場合は、相手も裁判に出てこざるを得なくなります。

裁判を勝つための方法は、この章で説明していますので、詳細はご覧ください。

それぞれの所要時間(とにかく、時間はかかる)

調停でも裁判でも、それぞれに必要な時間は、一つの会合、裁判が1ヶ月に1回程度のペースでしか行われません。
そのため、5回の調停をするだけでも5ヶ月から数ヶ月。裁判になると結審まで2年程度かかるのが平均的な時間です。
なお、調停は数回目で妥結の方向性が見えると、妥結交渉のためにあと数回は続けら、最終的な調停の成立を目指します。(調停が成立するか不調に終わるかの見極めがおおむねスタートから数回目程度の段階です。不必要にだらだら調停はしてくれません。)

調停の建築委員は業者の味方だ?

よく建築紛争審査会や調停を経験された方は、このような意見をもたれる方が多いです。
そうかも知れませんが、むしろ、訴える建築主の方の甘さもあるのではないかと思っています。
調停も裁判と同様にどう訴えるか、が勝負の分かれ目です。相手の瑕疵は何か。それによってどういう損害を受け、何に違反しているのか、どうすれば直るのか、といったことを具体的に説明せずに、調停に出せば、調停委員がうまく裁いてくれるだろう、という甘えがあるように思います。また、弁護士の中にも、調停に出しておけば建築主の不満のガス抜きになるだろうと、きっちりとした準備もせずに、漫然と調停に臨んでいる人もいるからです。(そういう弁護士は、調停の場でもほとんど発言しない)
そうなると技術的な反論にせよ、逃げ口上にせよ、社会的な修羅場をいくつもくぐった業者の方が一枚も二枚も上手ですから、ついつい調停委員もそちらの言い分に引きずられてしまいます。
相手の技術的反論に真っ向から反論できない建築主と弁護士の弱さが、このような意見になっているのだと思います。


調停とは言え、
戦う以上、キチンとした準備も不可欠ですょ。
そして、相手が開き直れば、調停はお手上げです。

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