さて、この方の裁判が終わったときの収支はどうだったのでしょうか。そして訴えたのに、一銭も回収出来なかった業者は・・・。 それぞれの収支決算は、下の図です。
これはあくまでも概略を書いています。そもそも裁判にもなろうという物件は、ただ単一の問題点だけで裁判まで至ることはありません。お互いが当時者同士で解決出来ないところまで、ゴタゴタが積み重なり、感情的なシコリがあるからこそ裁判になっていきます。
そのため、実際には、今まで書いてきたような、ただ単に防水シートの施工不良と言うだけでなく、他にも様々な問題が派生しています。
建築主がかかった、あるいは今後かかる費用
その損害を直すための費用が「損害額」として380万円。
弁護士に支払うべき費用が、推定72万円。
私に対する費用(調査、報告書、損害額算定)28万円
工期遅延などの損害 20万円
合計 約500万円が真っ当に住むためにかかる、あるいはかかった費用です。
つまり、本来、正しい工事をしていれば業者のいう340万円だけ支払えば済んだのですから、500万円-340万円の160万円が実質的に損害です。
ただ、これ以外に工期遅延で金利が上がった費用や、裁判に至るまでの私などへの相談費用等々をいれれば、もちろんこれらの費用を上回ってしまいます。
業者側の請求額
業者も、今までに支払われていない代金340万円を払えと訴えてきました。しかし、一銭も入りません。この費用は大体工事費の1/3程度の金額を占めていましたから、業者としても大変大きな金額です。
自分でサイディングまで張って利益を出そうとがんばっても、無意味でおかしな工事をすれば、利益を得るどころか、材料費の一部まで自腹を切らなければならない羽目になっているはずです。完全に赤字。しかも材料費の一部は持ち出しでしょう。
残金の支払いが分けるもの
今回の場合は、建築主の方が、あまりにおかしな工事だと思って、工事の残金を支払っていなかったですから、まだマシですが、これが残金を支払った後で欠陥工事が分かると大変です。私への調査・鑑定費用を支払い、弁護士費用を支払い裁判を起こしても、相手が倒産すれば、それは回収出来ず、しかも直さなければ欠陥住宅のままの住宅に住み続けなければなりません。つまり500万円近くが丸まるが自費となってしまいます。
つまり、おかしいと思ったときに支払を残しておくかどうかは、実は大変重要な問題なのです。この方は、残金を支払わずにおいたおかげで160万円の追加支出だけで済んだ・・と言うべきなのです。
そして、160万円は大したことがないと、もしも思われるとしたら、それは大間違い。そもそも住宅を建てた直後に余分なお金を持っている人など本当の少数派ですからね。
【損害額】欠陥部分を直すために必要な費用ですが、街の工務店の見積書では裁判で信用性がないために、公的資料などで公正な工事金額を求めます。実際に直すにも同程度の費用はかかってしまいます。
【弁護士費用】私自身はこの方に弁護士費用がいくらでしたかとは聞いていませんので、日弁連の参考資料から推定しています。。
【調査、報告書】欠陥住宅裁判の根幹をなすもので、欠陥工事であるということを根拠づけて裁判所に訴える資料です。鑑定書という場合もあります。
鉄則
おかしいと感じたら、絶対に残金を支払うな!
残金は、工事代金の1/3以上残せ!