前回、「コミュニケーションは両方の責任だ」と書きましたね。
『遠慮せずに、きちんと質問し、疑問を残さない』ためには、どうすればいいのでしょうか。
特に日本人特有の気質として、相手に遠慮してコミュニケーションが上手でない人も多くいますし、その代表例で「こんな事を聞いて相手の気分を害しないか」あるいは、「こんな事を聞くと業界の常識ではおかしいのだろうか」といった事を気にして躊躇する場面もあります。
そんな相手に聞くことが失礼と感じる遠慮深い人はどうすれば良いのでしょうか。
簡単に実践できる方法を2つ紹介しておきましょう。
要点を紙に書け。そしてテーブルに置け!
その簡単な方法は、自分が聞きたいことや確認したいことを箇条書きにしてメモを作り、それを打合せの一番最初にテーブルに載せることなのです。
普通、どんな会議でも、打合せでも、会話というのは会話をリードしようとする者の手で進行していきます。そのため会話進行が苦手な人は、ともすれば相手のペースに載せられてしまいがちです。
でも、そのペースを逆転させる手法は、自分の会話テクニックを磨くことではありません。
テーブルにおかれたたった一枚の紙切れが、そのテーブルに臨んだ全員の視線を釘付けにして、その紙を中心に会話がスタートすることになります。
たとえば、こんな表現で良いでしょう。
- 保証期間はどこくらい(○○について)
- 支払い条件(契約時100万円、上棟時300万円、残り完成時)
- 断熱材は何?(床、壁、天井)
- FRP防水とこの建物の防水方法の違いは何?
細かくなど書く必要はありませんし、むしろ、二行目のように言いにくいことをチラッと書いておくのも一つでしょう。
こうすることで、聞きたいことや確認したいこと、あるいは言いにくいことも、そのメモが中心となって展開されていきます。
重要な会議で、打合せの必要なポイントを事前に配布しておくのと全く同じ手法ですし、これをすることによって聞きたいことが漏れることもなくなります。
言い換えれば、紙に書き、その紙を提示することで、話の主導権が紙に移るのです。そうすると口べたな人でも、人に遠慮をしがちな人でも、少なくとも「どう言ったら良いだろうか」なんて考える負担が少なくなりますね。
お馬鹿さんになる大作戦
さて、聞いてはみたものの、よく分からない。あるいは『これ以上しつこく聞くといやがられるのではないか。』『信用していないと思われるのではないか』といった気持ちを持つ人も多くいます。
そういう気持ちが、ついつい聞くことを躊躇したり、聞かずに勝手な憶測で判断をしてしまったすることが良くあります。
でも、結局はそれが 『ボタンの掛け違いの最初の第一歩』 になり、つもり積もってくると 相手自身が信用出来なくなってくる・・
最後は、「何もかも信用出来ない」と大きなトラブルに発展する場合が良くあります。
私が遭遇したコミュニケーショントラブルのほとんどはこのケースです。
くどいようですが、『コミュニケーションは、お互いが理解しようとする努力をしなければ成立しませんし、コミュニケーションの半分の責任は、あなたと相手の両方がそれぞれ持っているということ』ことなのです。
では、躊躇してしまうとき、どうすればいいのでしょうか。
もっとも簡単で、もっとも効果的な方法は自分を卑下することです。(卑下ってやな言葉ですね)
国語辞典では、自分を人より劣った者として扱うこと。へりくだること。謙遜すること」と書いています。
きれいな言い方で言えば「謙遜する」ですね。
頭の良い方に対しては、「能ある鷹は爪を隠しなさい」が適切な表現でしょうか。
要は、「知らないこと・理解出来ないこと」を演じることなのです。
いやぁ。○○の分野なら一発で分かるんですが・・
もう一度わかりやすく説明して頂けますか
分からなかったら、また聞きますね。
と、分からないと言う言葉を先に出すのではなく、「頭が悪い」「飲み込みが悪い」といった自分を謙遜する言葉を先に言っておく事がポイントです。
なぜかというと、相手は相手に自分を卑下した言葉を使われてしまうと、「馬鹿野郎。何回も聞くな」とか、「これだけ説明しても分からないのか。」「この話はもうこれくらいで良いですね」なんて言葉は言えなくなってくるのです。そして、「わからない」といえば、延々と分かるまで説明せざるを得ないのです。
この業界は信用出来ない部分があるから騙されないぞ・・と身構えるのも一つです。
でも、いくら調べても「知る」と言うことには限度があります。それなら、知らないお馬鹿さんになりきった『フリをした』方が、後々ものすごく楽になり、同時に知っているフリをする時も肩の力が抜けて冷静に相手を見ることが出来るようになるのですよ。
鎧を着ていることだけがベストな方法とは限らないんです。
どんなシーンでも応用出来る簡単なのに効果の高い作戦ですから、お馬鹿な振りして一度お試しあれ!