耐震性の基本

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地震はどこで抵抗する

日本にいる限り避けて通れない地震や台風によって建物に生じる力を、軸組工法では軸組の全体で負担するのではなく、そのなかの耐力壁(たいりょくかべ)と言われる部分で負担しています。

柱や梁を用いる軸組工法なのだから柱を太くすれば、あるいは柱が多ければ建物は丈夫。という風に誤解をしている人もいますが、それは、大きな間違いです。
地震や台風の力から建物を支え、倒れないようにしているのは、柱ではなく、耐力壁と言われる部分なのです。

耐力壁って何?

耐力壁としてもっともなじみがあり、代表格なのが筋交いと呼ばれる部材ですね。

柱と柱の間に斜めに取り付けたこの部材によって、ちょうどつっかえ棒のような原理で、地震や台風のときに生じる建物が倒れようとする力に抵抗しています。
また、筋交いはその部材の大きさによって2種類の大きさがあり、組み方も片方向だけの片筋交い、たすき状にかけるたすき掛けの2つあり、組み合わせによって、都合4種類の強さ(倍率)を持つ耐力壁をつくることできます。
これ以外に、2X4工法などで用いられている構造用合板を耐力壁として使用する方法もあります。いずれの場合も、筋交いあるいは構造用合板、あるいは筋交いと合板の併用などの耐力壁を建物の大きさや階数などに応じて、必要な量を適正な場所に配置することによって、建物は耐震性、耐風性を確保することができるようになります。

軸組工法では、いくら柱が太く多く入っていても、柱と梁だけでは決して地震にも台風にも耐えられることはできないのです。

面材耐力壁

面材耐力壁とは

構造用合板(こうぞうようごうはん)を壁に貼った耐力壁のことを筋交いを使った耐力壁と区別する意味から面材耐力壁(めんざいたいりょくかべ)と言いますが、最近では、構造用合板以外にもいろいろなもので使用されています。  代表的なものは、ダイライトやOSB、MDFといったものですが、それぞれ規定された釘を使い、規定された間隔で釘を打つことによって筋交いと同じように耐力壁として使うことができます。

面材耐力壁のメリット

筋交いは、柱と柱の間に斜めに入れるために、外壁などでは壁に充填する断熱材が筋交いが斜めになることによって入れにくく、断熱材をうまく連続的に入れることができません。
そのため、断熱性能を重視する建築会社では外壁側には筋交いを設けず、構造用合板などを使った耐力壁とし、断熱材の連続性を計っている会社も存在しています。

合板の耐水性 外壁などで使う構造用合板は、必ず、特類という合板の中でもっとも耐水性の高いものを使います。合板の表面にプリントしていますから、施工時にはチェックしてみましょう。
コンパネ よくコンパネを構造用合板と勘違いしている人がいますが、コンパネとは、コンクリート型枠用合板、コンクリートパネルを省略した言い方です。コンパネを張って建物を強くしてね。という言い方は間違いですょ。

合板の耐水性 外壁などで使う構造用合板は、必ず、特類という合板の中でもっとも耐水性の高いものを使います。合板の表面にプリントしていますから、施工時にはチェックしてみましょう。
コンパネ よくコンパネを構造用合板と勘違いしている人がいますが、コンパネとは、コンクリート型枠用合板、コンクリートパネルを省略した言い方です。コンパネを張って建物を強くしてね。という言い方は間違いですょ。

耐力壁のバランス

では、耐力壁はどこにでも入れれば良いのでしょうか。
実は偏った耐力壁の配置はかえって建物を危険な状態にしてしまうことが阪神大震災でわかりました。「阪神大震災と倒壊原因」というところで説明しているように、阪神大震災では筋交いなどの耐力壁をいくら入れても耐力壁のバランスが悪いと建物が倒壊してしまうことが再確認され、平成12年に改訂された建築基準法では、耐力壁のバランスをチェックする法律が施行されました。 このことによって従来、設計者や大工さんの経験でしか入れていなかった耐力壁も計算に基づいて入れるように改善されています。

柱の接合金物(せつごうかなもの)

でも耐力壁をいれるということは、下図のようにその柱には大きく上に持ち上げられようとする力が加わり、土台や梁から柱が抜けようと働きます。
阪神大震災でも土台や柱との接合力の不足が指摘されました。
従来ホールダウン金物は通し柱にいれる、あるいは建物の隅角部(建物の四隅)にいれておけばいい。という程度の認識で施工していましたが、阪神大震災を契機として木造2階建ての建物でも柱の接合部分が重要であるという解析が進み、平成12年の建築基準法改正では、耐力壁の配置や強さに応じてホールダウン金物などの接合金物を選定する基準が設けられ、いままで木造3階建てにしか適用されていなかった接合金物の規定が木造2階建て住宅にも適用されるようになりました。

まとめ

在来工法ともいわれ、未だに根強い人気のある軸組工法も阪神大震災を大きな教訓として大幅な法改正が行われ、いまでは地震にも安心な建物となっています。
そして、この工法の耐震性のかなめは、耐力壁の量とバランスの良い配置、そして、柱の接合金物の3つを法律で定められた方法で確実に設けることにあります。

全て法律で決められています。
あなたが設計図をもらったら、耐力壁の量や耐力壁のバランスをチェックした壁量計算書(へきりょうけいさんしょ)をもらい、そして、N値計算などで算定された耐力壁の両側の柱の接合金物が書かれていることを確認しましょう。
得てして、建築会社が壁量計算書を図面化していなかったり、間違った金物選定をしていたり、柱の接合金物の法律そのものをしらない建築会社も中には存在しています。これら3つのことをクリアして初めて耐震性が確保されます。これらは、法律上定められた部分ですから、しっかりと確認しておきましょう。

チェックポイント

図面名 ポイント 法規
壁量計算書
地震と風圧力からの必要な耐力壁の量を計算し、建物に配置された耐力壁の量がそれを上回っていることを確認する 耐力壁の量
建物の4面の耐力壁の量が法律の規定されたもの以上であるかどうかを確認する 耐力壁のバランス
平面図
N値計算書など
N値計算書などで、柱の接合金物が計算され、平面図などに記載されていること 柱の接合金物

実際には、パッと図面だけをみても何がどういう図面かはわからないと思いますが、3つの事柄の説明を建築会社から受けると良いですね。

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