例題建物はどのランク
基準法での耐震性や、品確法の耐震等級の計算方法を説明してきましたが、例題建物(このページ末尾)の耐震性は品確法の耐震等級ではどの程度の位置にあるのでしょうか。 下の表に書き込みながら、例題建物の耐震性をチェックしてみましょう。
例題建物のそれぞれの等級に必要な耐力壁の量は下表のようになります。
①各階の床面積
小計 | 合計 (地震用床面積) |
||
2階
|
2階の床面積 | 54.35 |
54.35
|
ロフト、小屋裏収納の面積(*1) | 0 | ||
1階 | 1階の床面積 | 74.53 | 74.53 |
②K値の計算
計算式 | K値 | |
2階のK値 | 1.4 | |
1階のK値 | 0.84 |
③各等級の必要壁量
・地震係数 x K値 x その階の地震用床面積
1階の必要壁量(瓦以外の屋根)
地震係数 | K値 | その階の地震用床面積 | 必要壁量 | ||
等級2
|
2階 | 18 | 1.4 | 54.35 | 1,370 |
1階 | 45 | 0.84 | 74.53 | 2,817 | |
等級3
|
2階 | 22 | 1.4 | 54.35 | 1,674 |
1階 | 54 | 0.84 | 74.53 | 3,381 |
地震係数は、瓦の種類と必要壁量を出そうとする階によって下図から選びます。
④結果
等級 | 階 | 必要壁量 | 存在壁量 |
等級1 | 1階 | 2,162 |
|
等級2 | 1階 | 2,817 | |
等級3 | 1階 | 3,381 |
結果
下の表は当サイト独自に基準法から、品確法の耐震等級3までをわかりやすく点数化したものですが、A図、B図の場合は、どうなったのでしょうか。
上の必要壁量に対して、A図、B図とも、存在壁量が等級2.3の必要壁量を大きく上回っており、十分に等級3をクリアしていることがわかりますね。
- お断り
品確法の耐震等級2や3の算定と取得には、これ以外に床や屋根の強さ、準耐力壁の計算、基礎の補強や強さなど、単に耐力壁の量だけでなく、それ以外のいろいろなチェックと耐震上の補強が必要です。しかし、その部分は非常に専門的になってしまうため、ここではもっともわかりやすい耐力壁の量だけに絞って、建物の耐震性の目安を説明しています。
そのため、今まで説明した計算をおこない、その結果、等級2以上の耐力壁があったからといって、それがそのまま品確法の等級2をクリアした。あるいは取得できる。というものではありませんのでご注意ください。
MEMO
- 台風はどうなるの?
基準法でも、品確法でも実際には耐震性だけでなく、耐風性も同時に検討し、必要壁量は地震のための必要壁量と台風のための必要壁量の両方を計算し、そのいずれか大きい方を採用します。
しかし、実際に被害が大きいのは台風ではなく地震のため、ここでは地震のみの計算方法を紹介しています。
- X方向、Y方向が極端に違う
実際に配置された存在壁量を計算していくと、X方向とY方向の耐力壁の量が極端に違う場合があります。これは、間口の細長い建物などで、風圧力に必要な壁量の方が、地震で必要な壁量よりも大きく上回っている場合によく起こります。
しかし、地震に対してはX方向、Y方向の少ない方で検討すれば良いですから、この差を気にする必要はありません。