耐力壁の偏り
軸組工法にせよ、2X4工法にせよ、木造住宅の場合は『耐力壁』によって、地震や台風に対抗します。
その『耐力壁』、どこに入れてもいいわけではなく、バランスが大事ですね。
片方だけに偏った配置の耐力壁は、いわば空気圧がバラバラのタイヤで走っているようなモノで、真っ直ぐ走れませんし、空気の減ったタイヤは破裂してしまうかもしれません。
そのため、耐力壁の配置にはルールが決められています。
インナー車庫の出入り口として幅2.5mもの大きな開口部があり、その横には、これも幅3.5mの大きな窓を設けています。
このような間取りは「OK」なのでしょうか?
軸組工法のバランス・チェックは、1/4法
軸組工法(在来工法)では、通称『1/4法』という方法で耐力壁の配置をチェックします。
これは、図のように建物を上下、左右に4分割し、上下の1/4の部分、左右の1/4の部分が一定の割合で耐力壁が配置されているかどうかをチェックする方法です。
方法は簡単で、文字通り建物の上下、左右の耐力壁の量のバランスをチェックします。
方法は、建物を上下左右1/4に分割し、それぞれの上下、または左右の1/4の中の耐力壁だけカウントし、そのバランスをチェックします。1/4に分割された以外に耐力壁を設けていてもカウントしません。
チェック方法は2つ。上下、または左右に
①分割したそれぞれの床面積に必要な量の耐力壁が配置されていれれば『OK』
どちらか一方でもクリアしない場合は、
②左右、または上下の耐力壁の比率が50%を切らないこと
をチェックします。
下の右図の上下に1/4分割した図を見ると、下は耐力壁が1箇所なのに対して、上は5箇所もあります。バランス悪そうですね。
この図で言うと、下ゾーンの面積に必要な耐力壁が、下ゾーンの区画内に配置されているか、それをクリアしていなければ、上下の耐力壁の比率が1:2を超えないように耐力壁を配置する必要があります。
同じ種類の耐力壁と仮定したとき、上5箇所に対して、下1箇所なので5:1となってしまい、『NG』と反対されます。
左右に分割された方は、仮に左右それぞれに必要な耐力壁の量が配置されていなくても、左右の比率が3:3なので、この場合は『OK』と判定されます。
2X4工法の規定は、耐力壁線ルール
2X4工法は、軸組工法と異なり、6面体の箱が組み合わさったような構造体です。そのため、箱の壁の面を作るときのルールが定められています。
2x4工法は、箱を組み合わせたような構造なので、下の図のようなルールが設けられています。
箱を構成する壁を「耐力壁線」といいますが、
- 耐力壁の壁と壁の距離は12m以下とする。
- 1つの区画(箱)は、40㎡以下にする。(床を補強すれば60㎡まで可)
- 一つの開口部の最大幅は4mまで。
- 壁全体のなかの開口長さは、壁長の3/4までにとどめる。
2X4工法は、壁という壁を全て耐力壁にできますし、軸組工法のように「耐力壁を配置する」という考え方では無く、上のルールを守って残った壁は全部耐力壁、と考える方法なのです。
では、例題の間取りはどうでしょうか。
さらに2つの開口長さを合わせると、この部分の壁長の3/4を超えていますから、④壁全体のなかの開口長さは、壁長の3/4までという面でも『NG』となります。
つまり、このままの間取りでは2つのルールで『NG』となると言うことがわかります。
偏芯率(へんしんりつ)
上の説明は、簡易型の耐力壁のバランスチェックの方法ですが、構造計算で建物の耐震設計をおこなう場合は、「偏芯率」という数値を計算して、耐力壁の配置が安全かどうかをチェックしています。