不況だから企業倒産があるし、倒産への備えはいつの時代でも普遍的なものなのです。
そう考えれば、倒産への備えは今も昔も変わってはいないのです。
株価はどう変わった
2001年当時、このページの説明では、株価を見るわかりやすい目安として、株価100円割れの企業の多さを一つの指標にしていました。
下の図のように当時、東証一部上場企業の多くは株価100円切れを起こし、その中でも鉄鋼メーカーは48%が100円割れ、建設株いわゆるゼネコンでも46%が100円割れを起こす燦々たる有様でした。
さて、7年経って2008年はどうなったのでしょうか。
でも、その中でも相変わらずゼネコン系はあまり復活していません。この中で最多の11社16%を占めています。 少しマシになっただけのようです。
公共投資の減少
公共投資はどうでしょうか。
2001年ごろの公共投資の推移は下図のように、見事なまでの下降線を描いています。
公共投資減少の傾向は今も続いていて、国交省の外郭団体(財)建設経済研究所の統計では、右図のように、政府・民間全体の建設投資は、右肩下がりで推移し、しかも政府の建設投資は7年前同様の急激な右肩下がりです。
唯一、民間の建設投資、たとえば住宅建設や店舗・工場の建築などがほぼ前年水準を維持し、横ばいで推移しているに過ぎません。つまり景気を支えているのは民間の住宅建設や、いわゆる設備投資といわれるものだけです。
以前コラムで、「住宅は全建設業の6割を支える」という話をしました。そして、「大きなお世話。業界利益調べ」でもゼネコン系は、住宅系よりも収益性が悪いと説明していますが、これらの図をみてもそれがよくわかりますね。
また、以前、農業経営にまで手を広げる地方建設業者がNHKなどに取り上げられていましたが、人口が少なく、建設業の多くが官庁工事をあてにせざるを得ない地方経済では、このような公共投資の減少の推移を考えれば、相当厳しい状況なのだろうと想像するに固くありません。
では、頼みの綱の住宅着工はどうなのか
下の図は1980年代から昨年(2008年)までの住宅着工の推移を表しています。
これを見ると住宅着工は、バブル景気のころの年間160万棟など夢のまた夢で、今は年間120万棟前後を推移し、ある研究機関の予測では、2010年頃までは年間110万棟前後で推移し、その後2015年頃までは100万棟前後で推移すると試算されています。
今後、住宅着工が上向きに転ずることは経済環境の激変がない限りないようです
不確実な時代:これから起きること
2007年から2008年にかけて、幾多の統計予想資料にも含まれていない動きが世界で表面化しています。
原油、大豆、小麦粉、鉄鉱石などいわゆる原材料費の高騰です。
そして、これらを受けて、商品の値上がり、公共料金の値上がりに引き続き、物価の影響が懸念され、2008年は値上げラッシュで家計を少しずつ圧迫し始めるようです。
住宅に目を転じれば、いよいよ建設材料などの値上げも起こり始めています。さらには、都市部のミニバブルが弾け、マンション価格が下落したというニュースが流れました。しかし、建築確認制度の変更によるマンション着工の大幅減少が価格高騰、価格下落のどちらに引きずられていくのかも分かりません。
あるひとが、書いていました。
失われた10年に代表される日本経済の失速の中で日本人の所得は減り続けた。経済の回復期に入ってもこの状況は変わらず、企業の業績が改善されても従業員の収入は増えていない。その減収の痛みを日本人がそれほど深刻に感じることなく過ごすことが出来たのは、デフレのせいだ。
(プリジデント2008.3.3 宮坂 聰)
と。
まさにその通りでしょう。
今、デフレの時代は終わりを告げようとしています。
物価が上がって行かざるを得ない外圧がかかりつつあります。
かといって、好景気に沸く企業はほんの一握りです。
しかも、高景気の企業の多くは低迷する内需ではなく、海外での投資、進出を心がけた企業ばかりです。
いよいよ、展望の不確実な時代にさしかかろうとしています。
経済環境が変わろうとする中、いろいろあるリスク管理の中で、この章では特に「仕事を頼んだ建築会社の倒産」という「リスク」を、どうすれば少なくできるのかを中心に書いています。