マイホームを持とうとしたとき、何を中心に考えるでしょうか。
すでにあれこれと具体的な事をイメージし、こんな暮らしがしたいと考えている人。あるいはまだまだ形にはならないけど「夢のマイホーム」が欲しいという漠然としたあこがれだけを持っている人も多いかも知れませんね。
人の寿命と建物の寿命
人間の寿命も延びていくのと同様に、建物の寿命も長くなってきています。
正確な予測は困難ですが、木造住宅でも建ててから40年近くは十分に住み続けることが出来ます。
つまり35才で建てれば、平均寿命を全うするぐらいまでは、その家に住み続けることが出来ます。
(2018年の日本の平均寿命は、男性81.4才、女性87.5才。全世界のトップです)
でも、住まいが寿命を終えるまでの30年、40年という間にはいろいろな変化が起こります。
確実に起こってくるのは、
- 子供のお友達の出入りも多くなる。子供達が思春期を迎える。
- 子供達が独立する、あるいは結婚して出て行く。
- ひょっとしたら介護が必要な両親の面倒を見なければ。
- 転勤や転職があるかも知れない。
- 自分たちが定年を迎え、第二の人生が待ちかまえている。
まだまだ長い人生ですから、そういう目線で建物の一生と自分たちの一生を重ね合わせて考えておくことも必要なことではないでしょうか。
一例として、夫36才、妻33才、長男5才、長女3才の平均的な家庭をモデルに住まいとのライフステージを考えてみましょう。
それは下の図のように、住まいと家族という視線で見てみると、住まいの寿命の半分は家族がまとまって生活している時代。そこから子供達が独立していき、残り半分の期間は夫婦二人だけの住まいになっているようなのです。
2つ目のライフステージ
人、家族、建物の転換期
皆さんは親戚などが行う法事の席に出たことはよくあるでしょうか。こういう機会は若いうちはなかなか無いものですが、誰でも持っている典型的な症状があります。
それは、体のガタは50~60才から、という不文律です。
いろいろな体の変調が出始めるのが50代。そして、法事の席で、同窓会の席で、同類相哀れむ病気自慢がはじまるのもこのころからなのです。
そして建物も同様に、実は築25年前後からガタが出始めます。いわゆるほころびが出始めるのですね。もっとも早い建物では築15年ぐらいから出る場合もありますが、いずれにしてもちょうど仕事で言えば定年の前後、家族で言えば子育てが終わる時期、夫の年代で言えば50才代という時期を同じくしている場合が多いです。
言い換えれば、人の体も、家族のライフステージも、建物も転換期にさしかかっている時期なのです。
第二のライフステージ
遮二無二家を建てるためにがんばり、無理のきいた年代から20年。でも子供達の行く末や定年までの目鼻もたち、これからどうやって生活をしていこうかという見通しも付けやすい時期でしょうから、この時期に住まいの修繕も行って、第二のライフステージとしての住まいのテーマを考えていく良い時期かも知れませんね。
そうです。住まいには、2つのライフステージがあると考えればいいのではないでしょうか。
最初の20年間が、家族の時代。
次の20年間が、まだよく見えてこない第二のステージ。
ふたつのライフステージがあることを頭に入れておきましょう。
ちょこっとCOLUMN
あと20年や!
私の知人宅におじゃましたときのことです。
その人は結婚してしばらくして小さな分譲マンションを買っていました。すでにその家庭では子供も2人でき、年頃も入園するような年齢になっていたのですが、2DK程度の手狭なマンションだったので、何気なく、『手狭になってきましたね。戸建て住宅への住み替えは考えていないんですか・・』と尋ねてみると、かえってきた答えは
『な~に。あと20年もすれば、みんな出て行くよ』とのこと。
実はこのときほど、住まいについてのカルチャーショックを受けたことがありませんでした。
まさに異文化交流会に行っているようなもので、あまりの発想に『なるほど・・そういう考え方もあるのか』と頷かざるを得ませんでした。
確かにその知人の言っていることも事実で、なんだかんだと言っても、子供はあと20年もすれば独立し、自分たちの手を離れて、大きな家など必要なくなります。
『それはそうなんですけどねえ~』と価値観の違いにその後の言葉は続きませんでした。
でも、そういう人もいるんですね。
皆さん方のように、「いつかはマイホームだ~ぃ。今の生活は手狭だ」と一生懸命貯蓄に精を出している人達ばかりでもないんです。
第二の住まい
人生も建物も長生き出来るようになりました。
誰も20年後を正確に予測することは出来ませんね。20年後、正直な話、夫婦円満なのか、隙間風が吹いているのかも分かりません。
子育てが終わりかけたとき、それは夫婦の時代とも言えない、老後では早すぎる、かといって第二の人生と言い切ってしまうのも悟りを開きすぎたようですし、要は何が起こるか分からない次の人生のステージですね。
そして、住まいを第一ステージと第二ステージの2つに分けて考えると、今は第一ステージだけを一生賢明考える。そして、時期が来たら第二のステージを一生懸命考える。という考え方をした方が良いのかも知れませんよ。
人生も長い。建物の寿命も長いのですから。
建物寿命の目安
住まいのライフステージを考えようとすれば、当然に建物の寿命も正確に知りたいですね。でも、残念ですが、建物の寿命を正確に言うことは出来ません。それは自動車と同じように一定の程度で整備が必要ですし、過酷な自然環境なのかそうでないのかといった建てられた立地によっても多少は変わってきます。
ただ、少なくとも、キチンと建てられた建物で、一定の整備をすれば一般的なローンの最長期間である35年程度は大丈夫でしょうし、40年程度を目安に考えれば良いのではないでしょうか。
ここでいう一定の整備とは、築15~20年程度の間に、外壁、屋根の点検や痛みの激しい場所の補修、防水工事のやり換えなどは最低限必要です。ただし、外壁や屋根の全面やり換えまでは一般的に不要ですよ。それを必要とする時期は、築25~30年頃になります。 が、第二ステージをどう考えていくかで、その取り組みも変わってきますね。
注:細長い建物よりは、四角い建物。住宅密集地よりは郊外の建物。高い建物よりは平屋の建物・・といった方が建物の寿命は長いように感じます。長い長い年数の中の風通しや振動の有無が、寿命に変化を与えているのかも知れません。(統計上の話ではなく、筆者の個人的印象ですが・・・)
人生50年
昔は人生50年と言ったのは、この年代に病気になりやすく病気をすれば直せなかったために、このような言葉が生まれたのですが、それは医学がいくら発達しても同じで、人間の体に変調をきたし始めるのは50才代からなのです。でも、元気なお年寄りが多くなりました。
せっかく新築の建物を建てるのだが、その住宅の寿命はどの程度なのか、というのは、誰しも思うことですね。近くの建物を見渡せば、傷みの早い建物もあれば、築数十年経っている建物でも、快適ではないにしてもしっかりと建っている建物も存在しています。[…]