断熱計画と相性問題

Sponsored Link

省エネ基準は客観的評価

「床暖房は良いですよ~。」
「オイルヒーターは快適ですよ~。」
「次世代にして良かったと言っています~。」
まぁ営業マンと話をすれば、いろんな返事が返ってきます。というよりも、早々いろんな比較は出来ませんから、実際に使って建てた過去のお客さんの印象が頼りですね。かくいう私だってそうですから・・・。

しかし、そうは言いつつ、同じものを使っても寒がりさんの受ける印象と、暑がりさんの受ける印象も違うでしょう。

断熱をどう考えるかという問題には相性問題があるように思います。

つまり、性能表示制度の区分で言うと、耐震性とか、耐久性維持管理といった問題は、個人の性格やライフスタイルとほとんど関係ありません。いわば客観的評価が可能です。バリアフリーや防犯も、どちらかというと最大公約数ですね。
しかし、シックハウスや断熱といったテーマは、「省エネ基準」と言った基準そのものは客観的なのですが、暖かい、寒いといった感じ方は個々に違います
そのため、同じ基準で建てても、ある人は快適に感じ、ある人は少し不満の残ることもあるのではないでしょうか。

暖かさに感じる個人差

暑さはほとんどの場合、エアコンによる制御しかありませんが、暖房は様々です。 そういった要素を思いつくままに並べてみました。

部屋の大小も暖かさの感じ方に影響します。
大きい部屋ほど温度変化は少ないものの、あまり暑くすることはしないと思います。全館空調などがその例です。
暖房器具も暖かさに均質化を求めるか、『ぽっかぽ感』を求めるかで使う暖房器具も異なります。床暖房も冷え性の人には、足先に直接暖かさを感じる床暖房は良いと感じ、そうで無い人は、さほどに感じないかもしれません。 全館暖房でTシャツ一枚で過ごすことは難しいですが、個暖なら可能です。
どのようなスタイルで暖房するかは、自分の寒さへの感度、過ごし方を断熱基準という装置だけに頼らず、部屋の大きさ、暖房器具の組み合わせと合わせて考える必要があるのかもしれません。

床暖房とストーブ・・機能や特性を考えるよりも相性が大事

もう一つ感じることは、床暖房も『ほんわか感』はあっても『ぽっかぽか』はありません。反対に直接火が出るストーブの系統は『ぽっかぽか感』を感じやすいですね。

薪ストーブなんて特にそうです。エアコンは、ほとんど『ぽっかぽか感』を感じません。 むしろ室温を上げると顔が火照ってきます。

暖房器具の選定だけでも暖かさの感覚に差が生じます。

断熱も暖房もセットで考えないと一筋縄ではいかない代物です。

たぶん、なかなかピッタリの方程式は無いのでしょう。 そしてなにより、あまり次世代とか吹き抜けとか床暖房が良いとか・・という器の話以前に、私は暑がり、寒がり、部屋はぽっかぽかと暑い方が好き、部屋は暑くない方が良いといった自分との相性も考える必要があるのではないでしょうか。

全館空調と大きな空間にポカポカ感はない

いままでに、何軒か全館空調のお宅にお邪魔したことがあります。
そこで感じる平均的な印象は、個人的には実は「寒い」という印象なのです。

というのは、全館空調は本当に全ての部屋がいわば均一の温度を目指しています。そうすると、いわゆる『ぽっかぽか』という部屋は作れないのです。大きな吹き抜けがあるお宅も同じで、リビングを『ぽっかぽか』にすると、他の部屋も『ぽっかぽか』になり、のぼせてしまいます。また、大きな空間は冷たい風が入りれこんでもすぐに対処できません。暖房温度を切り換えても寒い時間がしばらく続きます。

ということは、寒がりさんの人は部屋を小さくして、『ぽっかぽか』の部屋を作った方が暖かいと実感しやすいです。反対に大きな部屋にいると『ぽっかぽか』ではないので、活動的ですが、寒がりさんには暖かいという感じを受けにくいのです。でも、大きな空間を作った方が冷暖房効率はいいので、痛し痒しですね。

全館空調にあこがれる、床暖房が良いらしい・・というキャッチフレーズに飛びつく前に、ご自身の暑さ寒さに対する相性を考えることがありそうですね。

寒がりさん。暑がりさん。

人の体質は個々違いますね。寒さに平気な人。寒さが苦手な人。暑さも同様です。
断熱は地域ごとに、断熱レベルごとに必要な断熱材の厚みを示唆してくれています。たとえば関東、関西その他人口度合いの最も多いⅣ地域という区分の次世代省エネルギー仕様(軸組工法)では、天井の断熱材はグラスウール10Kであれば200mm。床はスタイロフォームなどの発砲系断熱材であれば、65mm以上となっています。
もちろん、その厚みでつくれば「無難」なんですが、より自分たちの体質に合った断熱を仕様とするとどうすればいいのでしょうか

寒がりさん対策

冬の寒さ対策の基本は、床断熱の厚みを厚くすることです。 熱を遮る度合い(暖かくなった空気を逃がさない。寒い外気を透さない)は断熱材の厚みに単純に正比例します。決められた厚みよりもより厚くする。

もう一つは触って冷たく感じないような床材にする。たとえばビニール系のクッションフロアなどは表面温度がフローリングに比べて冷たく感じますし、フローリングでもパインなどの柔らかい木材の方が、硬質なフローリングよりも暖かいです。(表面温度の感じ方の違いです)あるいは冬の間だけ部分的にカーペットを敷くのも効果的です。
さらに、暖房器具は、エアコンよりもガスストーブや石油ストーブ、あるいは床暖房がお勧めです。それは、燃焼時に水蒸気が室内に出るため、知らないうちに湿度が上がり、同じ室温でも快適に「感じる」からです。

暑がりさん

これは夏の暑さ対策ですね。 一にも二にも天井あるいは屋根の断熱材を規定値よりも厚くすること。 上の寒がりさんのときも同様ですが、規定値の1割アップなどとケチくさいことを考えず、規定値、推奨値の2倍以上増やすことを目安にしておきましょう。 そうしないと実感できません。(1割、2割増やしても、その同率でしか変わらないので、実感しにくいのです)

つまり、省エネ基準云々といったところで、個体差には関係なく、平均としての目安を提供しているに過ぎません。それ以上の個人個人にあった対策は、それぞれの相性を知り、断熱材の厚みを増やしたり、自分にあった冷暖房器具を取り入れることで、より快適にすることが出来るのです。

Sponsored Link

断熱を考える前にの最新記事4件

Sponsored Link