断熱は、新しい
今でこそ、断熱をすることは当たり前になっていますが、断熱の歴史は非常に浅く、実は1979年に公庫仕様書に「断熱」の記載が初めて書かれて断熱材を設けることに対する奨励が始まり、実際に公庫融資で「断熱」が具体的に義務づけられたのは1989年に過ぎないのです。
今からわずかに30年ほど前に過ぎません。
言い換えれば、戦後の半分の期間は断熱を全くしていない住宅なのです。
断熱を進めた理由
では、どうして断熱が必要になってきたかというと、下の図のように1973年の第一次石油ショックと、1979年の第二次石油ショックにより、先進国は石油自体が無尽蔵ではないことを思い知りました。
そして、これも時を同じくして、1970年代に世帯普及率7%程度だったエアコンも、1980年代には40%に迫る普及率となり、快適な生活家電の普及が促進されます。
さらに同じ頃、1970年代に地球温暖化の問題が提起されます。
これらのことから、資源は有効に活用しなければならない、「省エネ」を推進しなければ、将来大変なことになるということで、住宅で言えば、「断熱」を考え始めるようになります。
そして、1980年に初めて「省エネ法」が制定されました。
さらに1980年代には、エアコンの普及率は増すまず増加し、1990年代には60%を超える普及率になっていきます。当然に「断熱」をした方がエアコンは良く効きますから、さらに断熱化に拍車がかかります。つまりは、地球規模の資源供給問題=価格問題、地球温暖化、快適な暮らしを求める声などが絡み合って、断熱の促進が進んでいったのです。
気づかなかった断熱の副作用
しかしその副作用として、といううよりも「断熱化」を進めたゆえに、その盲点として「内部結露」などの問題が新たに浮かび上がります。 いわば「新薬」は良く効くので飛びついたものの、思わぬ「副作用」が見つかったとというところです。
これがいわゆるナミダタケ事件で、1980年、北海道で新築3年目の住宅の床下にナミダタケが発生し、床が腐り落ちるという事件が発生しました。被害は道内に拡がり、マスコミでも大きく取り上げられました。
この解決には、断熱材を厚くするだけではダメで、「建物の気密化」をしないと「内部結露」が防げないということがわかってきました。
しばらく住宅業界は、これらの内部結露と悪戦苦闘を続けながら、これらをほぼ克服して現在の次世代省エネルギー仕様という基準が作られます。
省エネ化の効果。そして、住宅の省エネ率60%
下の図は、電気事業連合会が作成した「一世帯当たりの年間消費電力量」の推移です。
やはり、家電を含めて省エネ化の効果は大きく、2000年を境に、少しずつ使用電力量が下がって行っているのがわかりますね。
そして、平成29年度の調べでは、マンション、戸建て、賃貸住宅等の住宅の全平均で60%は、省エネ住宅になっているそうです。
個人的には少し意外感があるのですが、大手ハウスメーカーや大手建売業者は省エネ住宅を標準仕様としているので、数値を押し上げているのでしょう。
でも中小、零細規模の住宅会社では、まだまだ、全てが省エネ住宅になっているわけではありません。