建築家に設計をしてもらう。ログハウスを建てたい。
という建築主と関わって、それぞれ数件の傾向を分析すると1つの傾向があることがわかります。
『恋は盲目。あばたもえくぼ』
まあ、いい加減いい古された死語に近い言葉ですが、この呪縛から逃れられない人が多いようです。
過去のケースでは、ログハウスを建てられた人も、建築家に設計を依頼された人も、それぞれ半分程度の方が何らかの大きな問題を抱え、その解決をしながら建てられています。
◆ログハウス過去のケース
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現象 |
1-043 |
・隣家に越境して基礎を作りかける
・ログに10年保証は無いとうそぶく
・半地下があるのに、コンクリートは放水材だ、といって防水処理が頭にない
・必要な構造計算をせずに放置
・現場には1ヶ月に1回程度しか顔を出さない
対応:問題点を修正させ、現場で工事監理の人を入れて工事を監督。
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3-249 |
・現場には誰も来ない
・鉄筋を型枠にくっつけて施工。かぶり厚不足どころでない、どうしようもない無責任工事
・ログ部分以外は、地元業者任せでほったらかし。
対応:基礎解体。念書提出、基礎再施工
ログメーカーは離合集散が激しく、社員といっても営業マンだけで、現場施工はほったらかしの会社が多い。その典型例。
特に小さな会社が全国で受注するため、ログを組む大工以外は、工事は地方の下請け任せになる傾向が非常に高い。小さな会社の遠隔地発注は要注意。
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◆建築家依頼過去のケース
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現象 |
初期 |
・断熱性は頭に無し
・高さ6m近い吹き抜けにダウンライトを計画し、電球の取り替えは、自分がいつでも来る、といい加減な返事で誤魔化す
対応:設計契約を破棄。ブランを修正してハウスメーカーで建てる
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4-509 |
・鉄筋コンクリートで考えたものの、超予算オーバーの調整できず
対応:設計契約を解除。設計プランをベースに、木造で、合い見積もりで業者決定。
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ある分野の能力だけに偏った、デザイン系設計事務所のトラブル典型例。
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■ログメーカー、建築家は芸術家!
建築主の方が最初に考えておかなければならないことは、ログメーカーや建築家は他のハウスメーカーと異なり、建物を設計し、見積もりし、契約し、工事をして完成に至るまでの建物が完成する過程でトータルバランスのとれたメーカーや人は非常に少ないと言うことです。
普通のハウスメーカーであれば、プラニング、コスト調整、工期の厳守、品質管理、工法や構造の理解、施工管理等々、ある程度バランスがとれた状態で商品を提供しています。
でも、 その反面、画一的であまりおもしろくない建物ばかりですね。
しかし、ログメーカーの場合は、その経営者がログが大好きだ・・、というのが商売の出発点で、上記の例を取れば、たとえば、金銭にルーズ、契約にルーズ、工期にルーズ、ログ以外は人任せ・・といった非常にいびつな状態で商売(販売)をしています。
建築家も同様に、こういう雰囲気の建物を設計するのが得意だ、というスタイルがあり、それをとことこ追求しているのは良いのですが、他の面がおろそかになっている建築家が多くいます。
つまり、建物という商品を提供しているのではなく、ログが大好き、こういう空間づくりが大好きという芸術家が仕事をしている。と考えましょう。
そのため、どのようなルーズさが現れるかは、人によって異なりますが、大なり小なり、このような歪んだ部分を持っていると考えて対処される方が賢明です。
ただ、ログメーカーの場合は会社が大きくなればなるほど、この歪さは少なくなりますが、少人数でやっている会社ほど、どこかに歪さを持っています。
また、建築家でも優れたバランス感覚の持ち主がいるのも事実です。
でも、私が関わったケースでは、それぞれの半分が何らかのトラブルを抱えていました。
デザイン系設計事務所に多い傾向 |
地味な地場工務店に見られる |
こんな会社、人は極めて少ない |
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デザイン力やPR能力は長けているが・・・・ |
技術や施工管理はしっかりしているが・・・・ |
パーフェクトな会社、人は無いと考えよう |
■冷静な自分が必要
ログメーカーの人や建築家と話をしていると、時間の経つのも忘れるほど話が楽しいときがあります。
それはそれでお互い周波数があっているのですから良いことなのですが、しかし、建物をトラブル無く完成させることは、別の次元の話です。
上記でも説明しているように、本人(ログメーカー、建築家)は、自分のスタイルが歪(いびつ)であることを知っていることはありません。
これは、その人が悪いのではなく、人間誰もが、自分の性格を正しく理解していないのと同じで、自分の至らない部分を知っている人は少ないのです。
しかし、単なるおつきあいであれば、あいつはいつも時間にルーズなヤツだ、と自分がそれを承知しているだけですむ話ですが、建物を造るビジネス、あるいは利害関係のある関係では、そうはいきません。
結局、これらのことは、建築主ご自身が気を付ける以外にありません。
つまり、ログやデザインという共通の話題の時は盛り上がっても、契約や費用、工期、工事監理、品質といった部分は、そういう盛り上がりとは別に、いつも冷静になれる自分がいなければ失敗してしまいます。
■選択肢は極めて少ない
そして、もう一つ大きな特徴は、普通の住宅と異なり、選べる業者(人)の数が極めて限定していると言うことです。
普通の家を建てるのであれば、大手ハウスメーカーから地場工務店まで、しようと思えばいくらでも声を掛けられます。
しかし、ログに限れば、さらにログの仕様にまでこだわれば、扱うメーカーは極めて限定され、そのメーカー以外は目に入らなくなってしまいます。
建築家も同様で、自分の波長を理解してくれると感じられる人は少ないものです。
ここに自分自身をがんじがらめにしてしまう呪縛があります。
下世話に言えば、惚れ込んでしまった。ここしかないという思いこみです。
■この2つの傾向がはっきりと現れるのは、夢が現実に移ろうとするときです。
ログメーカーで、トラブルが発生するのは、契約が終わり、工事がスタートしてから問題化する場合がほとんどです。
建築家の場合は、工事予算や実施図面が出た後がほとんどです。 彼らの弱点が現実になるときです。
私が経験した数件のログハウスや建築家でも、半分は大きな問題もなく建てられ、半分は大きな問題を抱えて解決しながら完成しています。
そのいずれもが趣味、嗜好の部分に起因した問題ではなく、上段のそれ以外の問題です。
■つまり、趣味嗜好の部分とは別に、冷静になれる自分がいるかどうかで、問題を未然に防げるか、あるいは問題のない会社なのかの判別、といった事が分かれてくるという世界なのです。
ログハウスと建築家は、半分は一緒に楽しみ、半分は冷めた自分が必要な世界ですね。
誰しも、心地よい波長を感じているときは、その波長に違和感を感じても多くの人は見過ごしてしまいます。
でも、このページでご紹介した方は、そのトラブルを乗り越えて建物を完成させました。しかし、いやな経験をしたことも事実です。
あなたが感じた違和感は、上のようなことが原因かも知れませんね。
そういうときは、一度冷静に距離をおいて考えてみるのも大切ですよ。
別項でも述べる予定の、
「彼を知り己れを知れば、百戦して危からず−(孫子)
」にも一脈通じるものがあります。
相手の傾向を知り、自分の陥りやすい弱点も知ることによって、危険なリスクを少しでも予防することが出来ます。
そして、このページでご紹介した4つのケースの人達は、自らそのリスクを感じとり、そのトラブルを解決していった人達です。
でも、『もう、私はこの人しかいない!』と逆上せあがってしまった人が、まわりが見えなくなるのは恋愛と全く同じですね。
そういう人は、『お幸せに〜ぃ。。。。。』 の一言しか無いようですが。。。
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