タイルの工法
タイルの工法は大きく分けて、湿式工法と乾式工法に別れます。(住宅系のみの説明です)
湿式工法
コンクリートやモルタルを下地としてタイルを貼っていく工法で、鉄筋コンクリート造像の建物や、木造でもモルタルを下地とした場合に行われている昔からの工法です。
マンションなど鉄筋コンクリート造では、コンクリートがそのままタイルの下地となり、木造や鉄骨造では、一旦モルタルで下地を作った後に、タイルを張り込んでいきます。
乾式工法
一旦、湿式工法の代表格であるモルタル下地の代わりに、タイル専用に作られたサイディング素材の下地、あるいはデラクリートといった外装下地材料に直接タイルを貼り付け、あるいは引っ掛ける工法で、湿式工法に比べて工期も短くでき、メンテも容易と言われている反面、コストは湿式工法よりも高くなります。
注:この工法は鉄骨造や木造に限定された工法。
タイルはメンテフリーか?
よく、タイルを選ばれる人の中で、タイルは後々メンテが不要だから最初のコストが高くても、ランニングにコストがかからないから良いのだ。と言われる人がいます。
しかし、それは、平時の時の話で、日本のように地震の多い国では、必ずしもそうとは言い切れません。
その理由は、建物の揺れ幅です。右の図のように、大きな地震が建物を直撃すると、建物は数センチメートルという大きな揺れが生じています。
地震と揺れ
揺れが収まったとき、タイル表面は何もなくても、タイル下地となっているモルタルや乾式の下地材は、大きく変形した後に、また、元の形に戻っています。このとき、湿式工法のモルタルでは、合板下地の継ぎ目部分にひび割れが入りやすく、乾式工法では、下地は上下の止水は下地同士が噛み合わさっていますが、左右の継ぎ目はシーリングをしているだけです。
シーリングの施工不良や劣化次第で、大きな地震があれば亀裂が生じやすくなります。(乾式下地の継ぎ目は下図参照)
タイルに防水性は皆無
また、タイル自体は防水性は全くありません。
タイルの裏側には常に雨水は回り込む可能性をいつでも秘めていますから、モルタル下地や乾式下地にひび割れが生じると、外観からは全くわからなくても、知らず知らずの間に雨水が壁内に浸透している場合も考えられ、むしろ、外観から漏水が発見しにくい点では、リスクの高い外装材の選択と言えます。
地震後の見えないリスク
つまり、地震が無ければメンテナンスフリーの問題のない外装でも、大きな地震を受けると下地のひび割れまで確認出来ないため、かえって漏水リスクの高くなる仕上げといえるでしょう。
注:この問題は、鉄骨造、木造に限定した話です。鉄筋コンクリート造では、このような心配はいりません。また、総レンガ貼り、総石張りも同様の問題があります。
ALCにタイルは張れるか
住宅でもALC板を外装材に使うときがあります。
一般的に重量鉄骨造では、厚み100mm以上のALCが使われ、木造などではクリオンボード、パワーボード(商品名)などで代表される厚み50~35mmのALCが使われています。
しかし、ALCの上にタイルが貼れるのは厚み100mm以上のALCだけで、タイルも50角又は50角二丁までのモザイクタイルしか張ることが出来ません。(小口タイル、二丁掛けタイル、ブリックタイルなどは張ることが出来ません)
その理由は、ALCにタイルを貼り付けるときの付着力が弱いためです。
タイルの代表的トラブル
凍害
タイルの空隙に水が入り、この水が凍結することで体積膨張が生じ、その結果損傷が起こる現象で、陶器質タイルは吸水性が大きいため、寒冷地では内装であっても、水のかかるような箇所では、この凍害が発生することがあります。
白華
タイル面が目地部分に白色のカサブタ状のものが付着したり垂れさがったりしているものを白華(エフロレッセンス)といい、セメントの硬化過程で生成する水酸化カルシウムが水に溶け、仕上げ面が乾燥するとき、空気や炭酸ガスと反応して不溶性の炭酸カルシウムとなって残るもので、 タイル裏面に隙間があったり、壁面にクラック等があり、水が入ると発生します。
タイルの代表的な施工不良の事例です。
熱破損
浴室床や浴槽のタイルに外周から内側にクラックが入ることがあります。
原因はお湯による熱でタイルが急激に膨張し、目地部分が硬すぎると、タイル側面から力をうけ、これが繰り返されて破損が生じるもの。