着工率の減少は前項のコラムでご紹介しましたね。
でも、こういうときでなければ、じっくりと目を通す機会などない着工統計も、眺めてみるとおもしろいことに気づきますよ。
公共事業・・いわゆる箱ものは非常に少ない
季節変動が高いのかも知れませんが、悪名高き『箱もの』という公共施設は、意外と少なく、全工事金額の5%程度です。
住宅は全建築業の6割を占める(工事金額ベース)
いや~。これは、びっくりしました。
私自身は、世の中、華々しい超高層ビルや大規模な建物が建築工事の中心を占めているのかと思っていたのですが、全く違っていました。
実は、皆さんが建てられている一戸建て住宅、あるいは購入されるマンションなど、いわゆる住宅の工事金額が、建築工事全体の6割程度を支えているのです。
よく今年の住宅着工戸数が、全面を下回った。上回った。といった事が新聞などで報道されるときがありますが、なぜ、経済活動の指標に住宅着工戸数が上げられているのか、正直ピンと来ていませんでしたが、これで納得です。
そして、ただの戸数の上下を報道されても、全くピンと来ませんが、経済ベースとなるお金に換算し、工事金額をベースに見てみるとまったく違って見えてくるものですね。
再度言いますが、住宅工事が、全建築工事金額の6割を支えているのです。
スーパーゼネコンと言われる鹿島、大成、大林等々なんて、建築工事の(マンションを含めて)5割強の大型建物の分野で争奪戦を繰り広げているに過ぎないのです。
後の5割の建物は、売上高1兆円を超える大手の積水ハウス、大和ハウスを筆頭に、たった一人でやっている小さな工務店もあわせて、10万社、20万社以上の会社が取り合っているのです。
建築物というものから見れば、住宅はちっぽけな建物。
でも、産業というものから見れば、巨大なマーケットであり、建築産業を支えている源泉なのです。
また、木造の住宅だけを見ても、なんと全建築工事金額の4割を支えています。
建築業の6割を支えている住宅。
建築業の4割を支えている木造住宅。
でも、
そういう目で、改めて住宅を見てみると、行政の規制強化の目は、大きな建物にしか向いていません。
今回の混乱の一つの原因であるピアチェックも、マンションなど大型建築が対象で、戸建て住宅の規制はまだ1年以上先の話です。
構造規定の違反は1年以下の懲役という罰則強化は今回の法改正で盛り込まれましたが、それ以外は、何も改善されていません。
小さな個人住宅の事など、まだまだ後回しです。
でも、訴訟自体は、大型建物よりも、戸建て住宅の方が多いはずです。
それは、行政が未だに大きな箱もの行政の感覚から抜け出せないのでしょうし、保護すべきは業界だ。という意識から抜け出せないのでしょう。
でも、最高裁が少しづつですが、消費者寄りの判決を出しています。
それら、幾多の消費者寄りの判例は、正義に挑戦した欠陥工事の被害者の方の勇気と信念によるものです。
消費者の意識が変わり、司法の意識も変わりはじめ、いまもっとも遅れているのは、森を見ず、枝葉しか見ていない、いや見えていない官僚なのかも知れませんね。
自由宅は、全建築業の6割補支える