周囲の温度に順応する素材

前ページでは、自然環境そのものが常に変化しているのだ。一定の条件がいつまでも続いているのではない、それが粗雑な工事部分があったとしても、結露を招かない一つの要素なのだ、という説明をしました。

もう一つの特徴は、材料も自然環境に順応しているという事実です。

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材料は、周囲の温度に順応する

私の事務所で測定をしてみました。
ある冬の日。明け方氷点下にまで下がリました。午前7時で氷点下-0.5℃でしたが、その時の室内気温は、10℃でした。

下の図が、その日の最低気温をマークした1時間後の朝8時のそれぞれの材料の表面温度です。(右の写真は室内から撮したもの。事務所として使っている部分です。)

不思議なことに、みごとに周囲の温度に順応して下がっています

外部では、モルタル外壁は風当たりの違いなのかどうか分かりませんが、0.8℃から4.0℃前後。 木製のサッシもみごとに外部側と室内側の表面温度が違います。
外部は2.1℃から3.8℃にまで下がっているのに、室内側は8℃から9.1℃と室内の温度に順応して高くなっています。 ドアも室内と外部では表面温度が違います。
さらに、おもしろいのは、木製のサッシもなぜか外部から遠ざかるほど温度が高くなっています。伝導しているのでしょうか。

このように、気温だけを見ていると全く分からない部分ですが、建物自体も周囲の温度に強く反応して、順応しようとしているのがよく分かりますね。

要は、同じ材料でも、その材料の周囲の温度によって、材料の温度も変化しているのです。

ちなみに今日の朝は外気温が3~4℃に対して、外壁や木部の表面温度は、外気温より少し高い4~6℃程度を示していました。これも昨日と全く同じように、周囲の温度に相対的に順応しています。

この材料が外気温に順応するという性質には、悪い影響を建物に与えるときがあります。それが下の3つのようなケースです。

断熱欠損が結露を誘発する

たとえば、冬期。右の様な図の時、床下には冬の冷たい冷気が入っています。このとき、床面の材料は、断熱材が入っているために、床下の冷気にふれることはありませんが、床下から床の隙間を通じて壁の中に冷気が入ると、壁の中は冷やされ、赤線で書かれた壁は材料の温度が低くなり、結露のリスクが高くなります。
このように断熱材の欠損が生じることによって、材料の温度も変化し、気づかないうちに結露リスクを高めている場合が多いです。

外壁・・次のような場所で起こりやすい

右図Aのように、断熱材がある部分と無い部分では材料の表面温度が大きく異なってきます。断熱材の無いA点では、材料の昼間の表面温度が13℃程度あったと仮定したとき、夜の冷え込みで3℃程度まで下がってしまった場合、この壁の中に入っている空気は、冷蔵庫から出されたビール瓶同様、冷たいものに冷やされて材料の表面に結露が発生することになります。

このような場所が起こりやすいのは、右図Bのような、窓の柱の間などのわずかな隙間など、断熱材の入れにくい場所や、断熱材がずり落ちてきた場合に断熱材の欠損場所、つまり、断熱材の入っていない場所で結露が発生しやすくなります。

 

屋根・・次のような場所で起こりやすい

ときたま降雪があるような気象条件で建てられるログハウスなどで起きやすいのが屋根部分の結露です。
それはログハウス特有の構造ですが、上の図のように傾斜天井となっており、その上に断熱材が敷き込まれ、屋根の下地材との間にわずかに隙間が生じている場合、暖かい室内の空気は常に上に上昇し、天井面を暖めます。しかし、降雪するほど外気が寒くなってくると、下地材の部分は急激に冷やされ、いくら断熱材があっても急激に表面温度が低下し、内部結露となって水滴が天井から下にポタポタと落ちてくるようになります。
左で説明しているように、温度の差が大きければ大きいほど断熱材の厚みが多く必要であり、それを防ぐためには、下地材と屋根材の間に通気層を設けて、天井内の空気を排出する=湿気を排出する方法が有効です。

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