通気胴縁の通気が取れていない工事は時々見かけるのですが、防水シートの張り方の基本が出来ていないような工事を見るのは初めてです。みんながしている普通の工事が出来ない。(右の写真は真っ当な工事写真です) それはもう、世の中にこんな業者がかっ歩しているのか、という驚き以外には何もありませんでした。
そんな相手だからこそ、自分の方法が正しいと思っていたのかどうか「もらっていない残金を支払え」と裁判を起こしてきました。仕方なく、建築主は防戦しなければなりません。弁護士を雇い、私の方で報告書を作り、かくかくしかじかの瑕疵があるから代金は支払えない、と反論します。
こういうとき、裁判官には公的資料やそれに準じた機関の作成した資料が一番有効です。下のような資料を根拠に、デタラメな工事であることを立証していきます。
・サイディングメーカーの品質保証の記述
・「品確法」のパンフレット
・(財)住宅保証機構の保証基準 ・フラット35仕様書
・民間保証会社の検査項目書JIO)
・民間保証会社の検査項目書(JHS)
・枠組壁工法建築物の防水施工の手引き
・(社)日本ツーバイフォー建築協会 などなど。
それらに対して相手は、「自分が保証するから大丈夫だ」というすごい論理で反論してきたのですが、こちらから次のように言葉で反論しました。
「業界のどんな基準も、どんな指針もおなじような施工方法を説明している以上、その方法がもっとも合理的に建物の雨漏りなどを防ぐ効果的な方法であろうと当職は考える。そして、原告がサッシの廻りの防水テープの不要その他、標準的施工法から逸脱した施工方法が正しいし、保証出来る施工方法であると考えるなら、その根拠を客観的資料や事実を持って提示すべきである」
このことに裁判官は同意して、原告にこれらの資料を提示するように求めます。
でも、これに反論する資料を提出することなど不可能ですね。
そして、裁判官の何回かの督促にもかかわらずズルズルと引き延ばしを計り、ついには公判も欠席するようになり、もう原告は反論出来る姿勢を示していないと判断したのか、欠席する原告を尻目に、裁判も証人尋問(私と建築主)をして判決を迎えることとなったのです。その証人尋問が平成21年の12月。
実際の判決は翌年の2月頃でしたから、そこにいたるまで、相手が平成20年7月に提訴してから実に1年半以上を経過していました。
まぁ。自らの無責任な工事を棚に上げて訴えることもすごいことですが、「自分が保証するから何をしても良いのだ」という開き直りのような反論。そして、客観的な資料が提出出来ないと欠席する無神経さ・・・・これがその業者の本当の姿だったのでしょう。
結局、判決は「原告の請求を棄却する」で終わったのですが、次回は、欠陥住宅を引き渡され、相手から訴えられたこの建築主にとっての収支決算がどうだったのかを、紹介出来る一定の範囲でご紹介致します。
・・続く。
【当職】・・裁判や公職などで用いる独特の言い方で、要は「私」と同意語ですが、現在の職業に就いている職業人としての私の見解・・的な使い方ですね。
【証人尋問】・・裁判の最後の最後に関係者が出廷し、法廷で原告、被告あるいは裁判官の直接の質問に答えます。テレビに出ている法廷シーンと全く同じです。相手側弁護士からどんな質問が飛んでくるか分かりませんから結構緊張します。そして、その間資料は基本的に見られません。基本的に記憶が頼りですね。
【裁判期間】・・実際には1ヶ月に1回程度しかありません。3月に相手の反論が出れば、1ヶ月後の4月に自分の反論。5ヶ月にまた相手の反論・・といった感じで、裁判というものは書類による言い合いを数回やっても1年以上かかってしまいます。実に気に長~い時間が流れます。 裁判って呆れるほど時間がかかります。
ばかばかしい相手でも、一応双方の言い分が十分に出尽くすまで、それ相応の時間を待つ。
悠長な時の流れが裁判の一面です。
逆に言うと、争点を多くし、反論を深くして裁判の経過時間を延々と伸ばすのが、引き延ばし作戦。ゼネコンなどが非常によく使かう姑息な遅延戦術です。
2年で終わる裁判を10年まで引き延ばすのも弁護士の手腕。
裁判ってそういう汚い側面もあります。