コンクリートと中性化
鉄筋コンコリートの建物は鉄筋とコンクリートが一体となって初めて地震などの外力に抵抗することができます。また、コンクリートの中の鉄筋は一切の錆止めをしていません。
そして、コンクリートは打設当初は強アルカリ性の性質をもち、水や空気などから鉄筋が錆びるのを防いでいますが、コンクリートは年月と共に中性化が進行し、中性化と共にコンクリート内部の鉄筋が錆びやすくなっていきます。
そのため、鉄筋にはかぶり厚といって、コンクリートの表面から一定の距離をたもって鉄筋を組み立てていますが、それだけでは長い耐用年数を維持することはできません。
ところが、水セメント比というコンクリートを配合するときに水とセメントの量の比率のうち、水を少なくすると中性化の進行が著しく遅らせることができます。そのため、鉄筋コンクリート造の耐久性対策では、単にかぶり厚を確保するだけでなく、積極的に水分の少ないコンクリートを打設し、かぶり厚+水の少ないコンクリートによって長い耐久性を確保しようと考えています。
具体的には、右の表のように、もっとも多く使われている水セメント比60~65%程度のコンクリートの中性化年数はかぶり厚30mmの場合で約45年程度ですが、水セメント比を55%に変えるだけで、中性化年数は70年近くに達します。
でも、水セメント比が少ないということは非常に打設しにくいコンクリートですから、注意深く作業をしないとコンクリートがうまく混ざらなかったり、隅々まで行き渡らなかったりといったことが起こりやすく、打設する側の人間からすれば、あまり楽な作業ではありません。
水セメント比って何?
水セメント比とは、セメントの重さに対する水の重さの割合のことで、水セメント比40%とは、セメントの重さに対して水の重さが40%の比率で入っているということです。
しかし、コンクリートは1m3当たりの水の量を185kg以下と決められているため、水セメント比を少なくしようとすると必然的にセメントの量が多くなり、強度も強くなり、中性化に強いコンクリートができるということになります。
品確法では、水セメント比に応じてかぶり厚を変化させています。等級2の場合で水セメント比55%のコンクリートを使う場合は、壁のコンクリートの屋内側のかぶり厚は20mmとし、屋外側は30mmとしています。同様に60%の水セメント比のコンクリートを使う場合は、それぞれ30mmと40mmといった形でかぶり厚が厚くなっています。
これは、水セメント比が多くなり、コンクリートの中性化スピードが速い分だけ、かぶり厚を多くしているということになります。
また、等級3では、等級2と同じかぶり厚ながら、水セメント比が少なくなっていますね。
そして、一番右の建築基準法で規定しているかぶり厚比較すると、かぶり厚は厚く、そして等級が高くなるほど水セメント比を少なくしていることがわかると思います。
・建築基準法では、かぶり厚の規定は設けられていますが、水セメント比の規定はありません。