耐震基準の『前提』

地盤の話を進めていますが、実は、地盤も耐震性もあるいは基礎も根っこは同じようなもので、地盤の話をする前に、耐震性の基準..というよりも物事の「前提」について話を少ししたいと思っています。

私たちが何気なく、耐震性・・・なんて言っていますが、そもそもその『前提』を知らなければ、お話にもなりません。

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耐震基準とは、どんな基準

『原子力は安全だ』といっていたのは、「安全と言うべき前提」を元に「安全だ」と言っていたに過ぎません。では、耐震性の「前提」は何でしょうか。「耐震基準」といった方がわかりやすいかもしれません。

上の図のように、国の解説書で明確に書かれています。 文章をよく読んで早とちりしないようにしましょうね。

まず、震度5強程度の地震では建物は傷つかない。 しかし、震度6強から7の地震では、建物は倒れない。 というのが耐震の基準です。

早とちりしないようにと言うのは、震度6強から7の地震で建物は、『倒れない=倒れないだけで、多少傾くのはしかたないだろうという前提』だということなのです。

ちなみに浜岡原発は、基準は400ガル超えで、限界震度を600ガルと想定していたようですから、いわば耐震等級3程度の耐震性は備えていたようです。
しかし、阪神淡路大震災では800ガルを超える地震(加速度)が観測され、新潟中越地震も同様で、今回の東日本大震災では2200ガルの地震(加速度)も観測されたようです。
もし、ほとんど直下型の地震が浜岡原発の直下で起き、800ガルを超える加速度を受けたときは、設計した耐震基準を完全に上回る・・つまり、安全である保証はどこにも無い、ともいえます。

「安全」と言う言葉を正しくいえば、『想定した「前提」以下の地震が来たときには「安全」である』ということなのです。

震度とは揺れの感じ方の程度

震度とは「揺れ」のことで、いわば感覚的な要素がほとんどです。反対に加速度・ガルとは、文字通り地震の揺れの早さのこと、つまり数値で表せる指標です。どちらも尺度が違うために、一様に比較は出来ませんが、一つだけわかりやすい事実があります。
それは、軟弱地盤では、震度(揺れ)は、硬い地盤の上に立つ建物よりも強くなります。
また、耐震性の弱い建物ほど揺れの感じ方は強くなります。

ニュースで「各地の震度」が表示されますが、これは実感を反映したものではありません。
同じ震度でも、一番揺れを感じない順番は
①硬い地盤の上に立つマンション
②普通の地盤に建つマンション
③固い地盤の上に立つ木造住宅
④軟弱地盤に建つ木造住宅
といった順番になります。

つまり、地盤と建物によって揺れ方=実際に感じる震度=実際に建物に与える影響は違うんですね。ちなみに固い地盤と軟弱地盤とでは揺れ方に1.5倍の違いがある・・揺れが増幅されると言われています。

時々、「この建物は建築基準法の基準を満たしているから大丈夫です」というセールストークがあります。でも言い換えれば、それは、上の基準を前提とした、震度5強では傷つかないが、震度6強から7の地震があったときは、倒れはしませんょ。という「前提」の「大丈夫」なのです。

「前提」を知ること

それぞれの住宅会社、設計者の耐震のそれぞれの考え方を否定しているのではありません。
全てには「前提」があり、その前提を説明しない「安全説明」は消費者に錯誤をもたらすものであると同時に、消費者は全ての基準に「前提があるということ」を知らなければならないのです。

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