契約約款の解説

契約約款には、初めて聞く難しそうな用語が並んでいます。

でも、一つ一つは、実は民法などで決められている規約をベースに書かれている場合がほとんどですから、少し法律的な言い回しがありますが、びっくりしなくても良いですよ。また、民法がベースである以上、私のもらった契約約款は書かれている内容(条項)が少ないから大丈夫かしら、という心配もあまりする必要はありません。

また、契約約款には、建設業団体、建築士団体などが民間工事の契約行為全体に使えるように作成した『民間連合契約約款』、や、日弁連が独自に作成している『日弁連の契約約款』等があります。

しかし、どの約款も基本的なベースは同じようなもので、民法などをベースに定められており、大手ハウスメーカーの独自の契約約款も実は、『民間連合契約約款』とほとんど同じですし、自社用にアレンジしている建築会社でも、そのベースには、『民間連合契約約款』がひな形となっています。

ただし、日弁連作成の『契約約款』は、支払い条件があまりに注文者サイドに偏りすぎているため、現実に戸建て住宅レベルで使われた事例は無いと思います。(工事引渡後、工事金額の1割の支払いを2ヶ月間残すため)

それは、さておき、このページでは難解な契約約款の言葉の一つ一つを解説しておきましょう。

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損害の防止

工事中に火事が起こればどうなるの?

工事中、火災が発生した場合などが想定されますが、まだ引き渡しがされていない工事中の建物への損害を防止するのは建築会社の義務です。

この条文は民法では、第400条で「善管注意義務として規定されているため、契約約款に記載されていなくても問題ありません。民法が注文者を守っています。

約款記載例
乙は、工事の引き渡しまで、自己の費用をもって、契約の目的物、工事材料その他工事施工に関する損害並びに第三者に対する損害の防止に必要な措置をしなければならない。

第三者傷害

工事中、他人にケガをさせたらどうなるの?

工事中の建物に子供が入り込み、ケガをした場合や、荷下ろし中に通行人にケガをさせた場合などが考えられますが、 第三者に対する損害は、建築会社が責任を負っています。

この条文は民法では、第716条で「第三者への損害は請負者の義務として記載されているため、契約約款に記載されていなくても支障ありません。民法が注文者を守っています。

約款記載例
施工のため、第三者の生命、身体に災害を及ぼし、財産などに損害を与えたとき又は第三者との間に紛議を生じたとき、乙はその処理に当たる。ただし、甲の責に帰する事由によるときはこの限りではない。 2. 前項に要した費用は、乙の負担とし工期の延長はしない。ただし、甲の責に帰する事由によって生じたときは、その費用は、甲の負担とし必要によって、乙は工期の延長を求めることができる。

注:ここでいう甲の責とは、たとえば見積書で工事用フェンスが 入っているのに、自分(甲)で用意するから見積もりからはずせ、といったのに、工事用フェンスを用意せず、第三者に怪我をさせたような場合をいいます。

不可抗力による災害、天変地変(危険負担 )

地震や水害が起こったら、どうなるの?

危険負担とも呼ばれ、契約上の専門用語で、風水害・地震・その他、不可抗力で生じた損害を誰が補填するかを定めた項目です。
現在のほとんどの契約約款では、天変地変の損害は注文者が負担する形で書かれている場合がほとんどです。(建売契約では逆に売主が負担する契約になっています)

しかし、それでは注文者の負担が大きすぎるため、一般的には請負者が工事保険に入り、天変地変の被害を受けた場合に、その保険金から損害を補填し、それでもまかないきれない部分についてのみ注文者負担、あるいは甲乙協議と書かれている場合が多いです。
民法では、異なった2つの条文が示されています。)

火災保険や工事保険等で補填する、と書かれているかどうかは半々です。もし、建築会社がこれらの保険に入っていなければ、あなたが損害を負担するリスクが極めて高くなります。
工事保険の加入有無は、要チェック項目です。

約款記載例
1.天災地変、風水火災、その他甲、乙のいずれにもその責を帰することのできない事由などの不可抗力によって工事の既成部分又は工事現場に搬入した検査済工事材料について損害を生じたときは、乙は事実発生後すみやかにその状況を甲に通知することを要す。
2. 前項の損害で重大なものについて乙は善良な管理者の注意をしたと認められるときは、その損害額と甲、乙の負担額とを甲、乙協議して定める。
3. 火災保険その他損害をてい補するものがあるときは、それらの額を損害額から控除したものを前項の損害額とする。

近隣調整

近所から建物の影になる、と文句を言ってきたら、誰が対処するの?

近年、近隣の煩わしさで近隣との交渉を工事会社に依頼してしまい、工事会社も工事ほしさにその面倒をみるといった例が多いですが、本来的には、工事以外の近隣の問題は、工事会社が解決してくれると考えるのは間違いですよ。

ただし、工事中の騒音や近所迷惑な車両放置は、建築会社の責任です。

瑕疵担保責任が無くなり、債務不履行責任に(民法改定)

図面や仕様が大事になった

2020年民法が改定され、従来の「瑕疵担保背金」が無くなり、「債務不履行責任」に変わりました。「債務不履行世故人」とは、簡単に言えば「やるべき事をやっていない」事に対する責任、と言うことです。

たとえば法律に書かれている規定を守っていない、というのもそうですが、「図面や仕様に書かれているのにしていない」というものが該当します

そのため、前回説明した「どんな注文をしたのか」という事が非常に大事になってきます。もちろん、その証拠は図面や仕様書といったものが根拠になりますが、今では「メールのやり取り」も大事な証拠になりますから、口頭の注文では無く、大事な事はメールなどの証拠を残しておく、という事も大事なことです。

遅延金、違約金

工事が遅れた場合の違約金の取り決めです。

工事が予定の日に完了しない場合に工事の遅延金を支払い、注文者が予定日に支払いをしない場合も違約金が発生します。 通常、工事金額の1/1000程度が多いですが、この比率の過小よりもキチンと契約行為が出来ない会社を契約前に見抜くことの方がよほど重要です。(違約金の額や利率に法律上の定めはありません)

違約金の書き方は会社によって様々です。まったく違約金そのものを記載していない契約書を用意している会社もあります。
でも、これから契約をしようという時に、まさか工期は遅れまい。とかんがえるのも自然のことですね。
しかし、契約約款に違約金を書いていない会社ほど、工期の遅延が多いです。
もし、違約金そのものの記載のない会社と契約する場合は、せめて引き渡し日から遅延する場合は、賃貸料等の実費相当額の損害を支払うこと、といつた程度の表現は入れておいた方が良いでしょうね。

約款記載例
1.乙が契約期間内に、工事の完成引渡ができないで遅滞にあるときは、甲は契約書の定めるところにより、遅滞日数1日について請負代金の10,000分の4以内の違約金を請求することができる。
2. 甲が第14条の請負代金の支払を完了しないときは、乙は、遅延日数1日につき支払遅延額の10,000分の4以内の違約金を甲に請求することができる 。
3. 甲が前項の遅滞にあるとき、乙は契約の目的の引き渡しを拒むことができる。
4. 甲が遅滞にあるとき、乙が自己のものと同一の注意をして管理してもなお契約の目的物に損害が生じたときは、その損害は甲が負担する。

注文者からの契約解除

「契約不適合」であれば解約できるが・・・

2020年の改正民法で、請負契約の契約解除が可能になる大きな改正が行われました。

「契約不適合責任」というものですが、要は「契約通りのものでは無い」という事ですが、どの程度の不適合から請負契約の解約ができるのかは不透明な部分があり、実際の法令の解釈、運用は、今後の改正民法にもとずく幾多の裁判を経て判例が集まってこないと、どのような具体的に運用になるのかは見え来ないところがあります。

そのため、詳しい説明は省略しています。

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