事件の概要
- 近畿地方
- 軸組工法、戸建て住宅
という心配そうな問い合わせをいただきました。
事故のあったこの地域は年に1~2回は雪が積もる地域(数センチ程度)ですが、たまたま基礎立ち上がりのコンクリートを打設し、シート養生をしていたにもかかわらず、その夜に雪となり、強風によって養生シートがめくれ上がり、めくれた部分に雪が積もるというアクシデントに見舞われました。
対応
注:コンクリートは右図のように順次、強度が増していくため、打設直後に検査を行っても意味がありません。強度試験のブレ(偏差)を少なくするため、最低限、コンクリート打設後2週間は必要です。
既存コンクリートの強度試験の方法
前者のシュミットハンマー試験は、既存の基礎を壊すことなく、何カ所も測定できる反面、試験結果は少しバラツキが生じます。
後者のコア抜きによる実物の圧縮強度試験は、正確な強度がわかる反面、基礎自体をくり抜くため、数多くの試験体を採取することは出来ません。
試験結果
クラックもなく、基礎の外観はきれいな状態でしたが、結果として、アクシデントであったものの、一部であれ設計強度に達していなかったため、基礎を解体し、再度基礎工事を行うことになりました。
教訓
- この建物の基礎では、冬季のコンクリート打設にもかかわらず、コンクリートの温度補正を行わず、18N/mm2という冬季としては非常に低いコンクリート強度で打設していたにもかかわらず、28日強度では設計上必要な強度の18N/mm2をクリアしていたため、温度補正などを行い、27N/mm2程度のコンクリートで打設していれば最低限の設計強度はクリアし、基礎の再工事もなかったでしょう。
逆に言えば、最低限のシート養生をするだけでも、強度発現には効果的。 - 打設直後にコンクリートに雪がかかったものの、コンクリートの凍結は起こっていなかった。
用語解説
- N/mm2
コンクリート強度の単位。ニュートンパー平方ミリメートルの略
18N/mm2とは、10cm角の柱で約18トンの重さに耐えられる強さ。
- 28日強度
コンクリートはすぐに強度を増すわけではなく、1年以上にわたって強度を強くしていきます。しかし、コンクリート打設後1ヶ月以上から後の強度の伸びは少ないため、コンクリート打設の28日目の強度をそのコンクリートの強度としています。
- 設計強度
構造上必要なコンクリートの強度で、コンクリート打設後28日目の強度が設計強度を上回っていればよい。 一般には18~21N/mm2を設計強度としている。
- 温度補正
コンクリートは暑ければはやく強度が出、寒ければ強度の発現が遅いために、冬季は少し強度の高いコンクリートを打設することによって、28日目の強度が確実に出るようにする補正措置。
- 凍結
コンクリート内の水分が凍結し、コンクリート強度が出ない事もあります。そのため、コンクリートは2℃を下回らないように養生しなければならない。