空気は好きに流れまっせ

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サイディングなど乾式工法の外壁は、「かし保険の規定」から、通気工法としなければなりません。
ところが、通気層が塞がれているとどうなるのでしょうか。実は下手をすると『内部結露』が発生してしまいます。

その実例を2.3例見ていきましょう。
事例は、以降も続きます。
(外壁ガルバニウム鋼板も通気工法が必須です)
(パワーボード等ALCは任意です。)

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通気工法とは

  • 通気工法とは、 (財)住宅保証機構の設計施工基準の解説書によれば,「『外壁内に通気層を設け,壁体内通気を可能とする構造』をいい,上下部が外気等に通じている通気層を設ける構造とする。」と説明されている。
  • 通気層の目的は、壁内(構造矩体内・軸組と称する部分)に侵入する湿気を通気層を通じて排出して、壁内を常に乾燥させることにあります。
  • そのため、透湿防水シートという水分など固体は通さないが、湿気という気体は通す特徴を持った防水シートを貼っています。
  • そして、外壁最下部に空気が入る隙間を作り、最上部は軒天換気口あるいは棟換気口などを通じて排出します。
  • 上の写真は具体的な施工写真です。上下に伸びる木材は通気胴縁。白いシート面は透湿防水シートです。

A邸:通気層の空気の出口が塞がれていて、内部結露が発生

仮にA邸とします。
この家は、通気層の最上部の空気の出口が塞がれていて、内部結露を起こしていました。壁を剥がしたときの写真が右の写真です。
外壁側に貼られた透湿防水シートは、茶色く変色しており、通気胴縁も部分的に木材腐朽の跡があります。
また、壁内部の合板は明らかに湿気による腐朽が進行しているところでした。

実は最初の兆候は、壁と床面当たりに少し水が染み出して「雨漏りかな?」という感じだったのですが、散水試験で雨漏りを再現しても再現できません。それで「おかしいな~」「別の原因だろうか?」と壁を剥がすと、上の写真のような広範囲の内部結露が起こっていたのです。
そして、当初雨漏りと思っていたものが、実は内部結露で発生した水分が床面に溜まり、じわじわと出ていたものだったのです。

A邸:通気層の空気の出口が塞がれていた原因とは・・・・

では、通気層のどこが塞がれていたのでしょうか。
この住宅は2階建てですが、2階の上はルーフバルコニーになっています。そのため、右図左のように、2階の天井よりさらに上にバルコニーの手すりが立ち上がっています。
普通、右図右のように、2階建てでも2階にバルコニーを設けて手すり壁をつけるケースは多いのですが、この住宅ではちょうど3階に高さになるので、通気層の長さは、2階にバルコニーがある長さよりも1.5倍程度長くなっています。

そして、通気層の最上部が手すりからの雨漏り防止を優先させた結果、板で塞がれていたのです。
つまり、いつもより長い通気層が出来ているにもかかわらず、その最上部が塞がれていたために、外壁の一番下から入った空気は行き止まりで滞留し続けます。
最上部の空気層の湿度を湿度計で測ってみると、最上部で実に90~99%近い湿度をいつも保っていました。

防水を優先させて通気層の出口を塞ぐと言うことは、案外よく行われています。
業者からすると通気層閉塞で派生するかもしれない問題よりも、雨漏りリスクを小さする方が、はるかに身近なリスク管理だからです。
それが2階のバルコニー程度の高さなら、湿気の滞留も少なかったのだろうし、その結果、内部結露もそうそう起こるものでは無かったのでしょう。
しかし、その1.5倍の長さで閉塞された通気層が出来てしまったために、内部結露が顕在化してしまったのです。

言い換えると、2階のバルコニー手すりで閉塞されていても、湿気は滞留しやすいものの、内部結露の発生までは『幸いにも至っていない』という事だろうと思っています。

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