相手を知れ!(建築士条件付き宅地の契約のヒント)

前項、「華僑に学べ!(焦るな、惑わされるな)は、注文住宅を建てようとしている方を対象とした話でした。
このページでは建売住宅、あるいは建築条件付きなど、土地と建物をセットで購入しようとしている方を対象に、華僑の交渉術とまでは行かないものの、どうすれば不利にならない契約が出来るのかを考えていきましょう。

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そして、 注文住宅のページでは、ローンの金利が変わったり、返済期間が変わったときを一つのモデルケースとしてシミュレーションしてきました。
建売住宅や、特に建築条件付きの建物では、そんなにゆっくりと時間は流れません。事前に相手を知ること。それが焦らずに、少しでも自分のペースで交渉が出来る第一歩です。

その前に注文住宅とどこが違うのかおさらいをしておきましょう。

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注文住宅とどこが違うの?

価格がわかりやすい

注文住宅はローコストを目玉にしているハウスメーカーから、グレードの高い仕様あるいは輸入住宅など、仕様も価格も嗜好も幅広い範囲から選ぶことが出来ます。その反面、どの程度の費用で建てられるのかが大きな問題で、注文住宅をする多くの方は、つねに自分のしたい仕様と価格の狭間で揺れ動き、住まいにかけたい夢とかかる費用(現実)をいつも天秤にかけて決めなければならないジレンマがあります。

しかし、建売住宅あるいは建築条件付きの建物では、広告に土地と建物のセット価格が表示されているため、容易に建物を取得するときの総額をつかむことが出来ます。

そういう点から、注文住宅は生地を選ぶことから始まるオートクチュールですが、建築条件付きの建物などはまさにイージーオーダーのわかりやすさがあります。

仕様は決められている

その反面、イージーオーダーであるために建物の骨格となる仕様は、目に見えない部分から仕上げ材、住宅設備に至るまで、決められているか、あるいはある範囲の中でしか選ぶことが出来ません。

でもイージーオーダーと割り切れば特に問題のないことですし、イージーオーダーだからといって最近の建物は、むしろ下手な注文住宅よりもレベルは高くなっています。(特に大手に・・)

建物で選ばない

広告を見れば分かるように、なぜ、どの会社も似たような仕様、似たような価格なのでしょうか。
それはあなたご自身の胸に手を当てれば一番よくわかるように、だれも建物の価値を購買基準の第一番目には持ってこないからです。
希望の場所に住まいを持つことが買い手の夢であって、ある特定の建物を持つことが夢ではないからです。

そのため、価格はある一社だけが飛び抜けて高い建物など提供しても誰も買いませんから、勢い住宅の価格自体はどの会社も似たような価格になり、その結果、似たような仕様になっているのです。それは土地価格も同じですね。

注文住宅と全く違う支払い条件

注文住宅の一般的な支払い条件は工事費を何回かに分けて支払います。最も標準的なケースは、契約時に工事費の1/3を支払い、上棟時に1/3、そして、完成時に13を支払うといった支払い条件が多いですが、建売住宅、建築条件付きなどの物件では、ほぼ例外なく、契約時に100万円から200万円の費用を支払い、後は建物が完成したときに残額を支払うことになります。

これだけを見ると最初の頭金が非常に少なく、顧客(買い手)に有利だし、親切な支払い条件のようにとらえがちですが、そうなっている理由は顧客のためを考えたのものではありません。
それは、宅建業法の中に、手付け金がある一定限度を超えれば、「手付け金の保全措置」をしなければならないという法律があるからなのです。

そんなややこしい手続きをするぐらいなら、手付け金を少なくして、さっさと工事を完成させて、さっさと回収した方が良い。というのが、建売住宅、建築条件付きなどの土地付き建物のすべての物件(会社)が採用している支払い条件なのです。

値付けは相場感で決められている・・・値頃感が最も大事

100坪の土地を仕入れて4区画25坪の土地で販売するか、あるいは3区画33坪で販売するかは適当にサイコロを振って決めているのではなく、この立地ならどんな客層、どんな所得層の人が買い、そういう人はどの程度までの価格帯なら手が出るか、というふうにターゲットを定め、その顧客ニーズに応じた価格帯になるように区画割りと値付けがされています

つまり、25坪で総額3800万円で売った方が売れやすいのか、33坪で4800万円で売った方が売れやすいのかが彼らの判断の目安となり、その土地建物の総額は、ターゲットとなるその所得層の値頃感がペースなっているのです。言い換えればその時々の経済環境を含めた相場とでもいうものべきでしょう。

そのために、多くの人が立地や建物規模(部屋数)と価格を天秤にかけて、『高い』と感じた物件は売れ行きが悪く、『安い』と感じた物件は売れ行きが早い・・というまるで物品販売と同じ販売傾向があります。
(そういう意味ではマンションも同じです)

建物は付け足し・・・建物は重要な要素ではない

建物を買おうとしているのに、建物は重要な要素ではない。というと奇異に感じるかも知れませんが、それは左項でも書いているように、ご自身の購買動機を考えてみればすぐに分かることですね。

ほとんどの人は、「他社よりもこちらの会社の方が良い建物だから、この会社の物件に決めた」なんて事を言う人はいませんね。ほとんどが立地と総額の価格で決めています。
そのために、指向性の高い輸入住宅や自然素材の家を使った物件なんてありませんね。この物件は高断熱高気密だが、高いですよ~。いやいやこの物件はローコストを追求した物件です~。なんてことも絶対にありませんね。

上の「値付け」で説明しているように、より幅広いターゲットに振り向いてもらうためには万人向けであり、世間相場の当たりはずれのない仕様、当たりはずれのない仕上げが大事なのです。
しかし、それだけでは差別化が出来ないので床暖房が標準で付いていたり、最新のキッチンが標準で付いていたりといった、小手先の住宅設備や仕上げ材をピンポイントで織り交ぜて販売(広告)しているだけなのです。
(注:大手HMでは、ハイグレードに特化した分譲団地を販売していますが、このページでは対象外としています。)

つまり、買い手がその様に考えているために(建物で決めているのではなく、立地やトータル価格で決めている)、実は売り手も建物を重要視していないのです。その事例を少しご紹介しておきましょう。

釣った魚にえさはいらない

・・・とばかりに契約後は音沙汰が無くなったり、次の契約にしか興味のない営業マンがいるのもこの業界です。

そうなるもう一つの理由は、営業マンの給与が歩合制となっているところも多く、文字通り、契約が終われば、自分の給与は確保したと、次の営業にしか目がいかない営業マンも出てきます。ただし、大手でもこのようなぞんざいな営業体質を持っている会社もあります。
注文住宅では契約後も仕事は続くが、建築条件付きでは契約までが実入りのための仕事と考えている者が多いのが特徴。

間取りの相談に乗ってくれない

「自分たちが考えた間取りを図面化しただけで、満足なアドバイスを受けていません」という愚痴を受けることがあります。そうなんです。営業マンも上記の通りなら、実は設計者が外注の場合は、せいぜい1物件いくらという安い設計料しかあてがわれていません。そうなれば親身のアドバイスや何回もの図面作成、間取り提案などやってやろうとする気さえ起こりませんね。

注文住宅では間取り提案や素材提案も大きな武器ですが、建売住宅や建築条件付きでは、立地や総額の価格がもっと大事。つまり、建物は購買決定の二の次の要素。だから力を入れないのです。

あなたがお店にコンタクトを取るのは、「立地と価格」の折り合いが付きそうだからでしょ!!建物が良いからなんて決して思ったことは無いでしょ。建物で考えたのは、この価格でこの程度の広さになるんだ~、という印象でしょ。

設計者と打合せをしたことがない

設計者と一度も打合せをしたことが無く、いつも営業マンあるいは仲介業者を通じて間取りや仕様の打合せをしていた。という話もよく聞く話です。
これなどもこの業界特有の「建物は付け足し」意識の典型例でしょう。売り主がそのようにしか考えていないから、設計者を出さないのです。

これらのことは、大手はこのような傾向は少ないですが、会社規模(販売規模) が小さくなるほど顕著な傾向となる場合がありますし、大手でも設計者は確定された図面の申請手続きだけを行い、営業マンに間取り提案までさせている会社もあります。 これも建物軽視の表れです。

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需要と供給の関係・・・売れ行きの良い物件、悪い物件

もう一つ、大事な要素は、需要と供給の関係です。それは上の理由とほとんど同じで、『安い』あるいは『値段の割に便利な立地』と感じる物件は、引き合いも多くなり早くしないと誰かに契約をされてしまいますが、『高い』と感じる物件は、誰も二の足を踏むため、なかなか売れません。

そして、売れ行きの悪い物件。それは、価格が高かったり、立地的に二の足を踏むような場所であったり、要は売り手の見込み違いだったということなのです。

引き合いが少ないのに、売れている素振り

しかし、相手も商売です。一旦仕入れて販売したものを途中で引っ込めることなど決してしません。
ましてや売れていなくても、いわゆる『客足』が悪くても、そんなことを真正直にいう業者などどこにもいません。「この物件は引き合いが多くて」あるいは「すでに次の方が見に来られています」といってあたかも今すぐにでも契約をしないと売れてしまうような錯覚を抱かせて契約を急がせます。

それは、売れる物件も、売れていない物件も同じですね。

入れ替わる営業マン・・・アテに出来ない建築知識

この業界のもう一つの特徴は、営業マンの入れ替わりが激しく、特に「建築」に関する知識などは、小さな会社になるほど、独学で覚え、大手でも競争原理で営業マンを使っているような会社では、商品に対する教育もなく、すくなくとも、あなたの目の前の営業マンは、不動産取引の知識はあっても、「建築」や「建物」の知識は素人に毛が生えた程度・・と認識すべき。 ・・なのですよ。

建築条件付きなどで多い悪いパターン

建築条件付きなどで多い悪いパターンは、無知と小心からくる安易な契約でしょう。
無知とは、同時契約などする必要がないのに、「弊社の決まりです」という言葉を、コロッと信用して、間取りも不確定なまま「とりあえず」契約をしてしまう。あるいは、営業マンの弁舌さわやかな口調に、あたかも「建築の知識が豊富」と錯覚し、その説明を信用してしまう。

小心とは、「 もうそろそろご契約を」という言葉に乗せられて、「あまり長引かすのも悪いかと気を使い」まんまと契約をしてしまう。
営業マンの「こういうものです」という説明口調に負けて、それ以上の説明を求められない弱い心の持ち主。

下の事例を見てみましょう。

  1. 『上司を説得して少し値引きが可能です。せっかくの機会ですから。。』
    みん~なに同じように言っているかも知れないのですが、私だけに言われていると錯覚してしまう。
  2. 『他にもこの区画を検討されている方がいらっしゃるそうです。』
    典型的な「焦らせ」パターンの営業ですね。
  3. 『同時に契約をして頂くのが、決まりですから。。』
    決まり事。という言葉に弱いのも日本人の典型です。
    あたかも、不動産販売の当然のルールのような顔をして言ってきます。(*1)
    同時契約は、相手の思うつぼ。「知らぬが仏」と素人相手につけいってきます。
    (*1)土地と建物の同時契約がルールでもなんでもないことは、他の章で説明していますので説明を省略します。
  4. 『こういうものです』
    営業マンは自分の知っている狭い範囲、あるいはあやふやな知識を、さも世界の常識だと言う才能には長けています。
    (そりゃあ、そうでしょう。自信なさげな人から誰も物は買いませんよね。)
    そういう言葉に押し切られる人の多いこと。
    納得出来るまでのキチンとした説明や根拠を求められないのは、あなたに遠慮があるからです。何に対する遠慮?
    根拠のない遠慮を持っている自分を顧みるべきなのですよ。

要は、相手の言い分やシステムを素直に受け入れてしまうまじめな人達なのです。

  1. 不動産という販売の中では、建物は二の次と考えている会社もあると知れ。
    不動産営業マンは、自分の身銭に直結する契約を取るのが仕事、建物を建てる(打合せる)のはおまけ仕事と思っているヤツもいる。
    伝言ゲームは売り主のご都合主義、買い手の非効率
    伝言ゲームを間違えるな。もたもたするなと強気で叱咤せよ。
    設計については「建築の専門家」にもアドバイスを求めている。と釘を刺せ。
    *ここでいう伝言ゲームとは、設計者の出てこない営業マンや仲介業者を相手とした設計打合せ
  2. この物件は、売れている物件か、売れていない物件という目線を持て
    あなたは、需要と供給の市場原理のまっただ中にいるのです。
    それを決して忘れるな。相手はそういう目線でしか見ていないのだから。
    仕入れた土地が売れるかどうかが彼らの唯一の問題です。

 

建売住宅や建築条件付きの建物は、注文住宅の業者選びとは全く異なり『市場原理』が根底にあります。そして、上で説明した不動産営業マンの特異性もあります。

そんな市場原理や営業の特異性を感じさせず、良い物件と感じるように仕向けるのも営業マンの重要な営業テクニック。無用な浮気を起こさないように、さっさと契約書に判子を押させるのも腕の見せ所。

その手に乗るか乗らないか。あなたも大なり小なり狐と狸の化かし合いの世界に足を踏み入れざるをえないのです。お人好し、世間知らずです、といってみたところで、交渉有利になることなど何もありません。

だから、焦るな。惑わされるな。。。
じっくりと廻りを見渡せる余裕』を持ち、『市場原理』と『営業の特異性』の意味を噛みしめたものだけが相手の手の内を読み、相手の動きにも動じない交渉が出来るのかも知れません。

そして、腰を落ち着けて廻りを見渡すことが出来れば、もし、金利が0.2%上昇したら・・・もし、1年購入を伸ばしたら・・・ を読んでも慌てずじっくりと腰を据えて物事に取りかかれるでしょう。

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もう一つの『市場原理』

不動産販売は、大手のハウスメーカー、大手の不動産会社から、社員2.3人の会社まで、全国に2万社、3万社という数の住宅会社が住宅を供給しています。その中には良質で良心的な会社から、悪質で粗悪な建物しか供給していない業者まで、その質においても千差万別です。

このページでは、大多数の良質で健全な住宅会社ではなく、悪質であったり、買い手の事など考えていないような不動産会社の食い物にならないことをテーマとして書いています。

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