華僑に学べ!(注文住宅の契約のヒント)

私は昔、店舗設計などの仕事をしていた関係で、『華僑』と言われた人達との取引をしたことがあります。彼らが店舗を出店し、私が店舗の設計施工をするという関係だったのですが、中国・台湾・韓国・インドそれぞれの地域の人と別々ではありますが、膝を交えて図面打合せや契約交渉に臨んだものです。

そして、彼らの中には日本人にない独特の価値観が支配していることを知り、いわばカルチャーショックに近いものを受けたことを今でも記憶しています。(ここで言う華僑とは下記を参照)

すべての華僑の人がそうではありませんが、それは……..実は日本人の国民性と全く違うのです。

華僑とは、中華人民共和国政府の定義によると、「中国・台湾・香港・マカオ以外の国家・地域に移住しながらも、中国の国籍を持つ漢民族」を言うようですが、アジア系の人で広く母国外で経済活動をしている人達を概念的に「華僑」と言ったりしているので、ここではその意味で使っています。
Sponsored Link

時間をたっぷり使い、焦らない

そのショックとは、間取りの細部に細かいとか、仕様にこだわりがある、といった日本人に多い細かい部分が気になるという類のものではありません。契約の概念が違うのです。

かれらは、いつ頃には店を開きたい、という予定表はもちろん持っていますが、その期限が来ても特に焦らず、こちらが契約を持ちかけても、首を振らず、 自分が納得出来る金額になるまで決して焦らないのです。そして、多少開店が遅れてる状態になっても決して慌てません。

もっとも、私がお会いした方々だけで、華僑はこういう人達だ、という一つの型に当てはめるのは問題ですが、しかし、日本人のせっかちさ、従順さ、幼さと極めて対照的なものを感じるのです。

ひとつ日本人がもっとも乗りやすい典型的営業パターンを見てみましょう。

金利で焦らせ、入居日で焦らせる定番営業

日本人に多い行動パターンの一つは、目先の動きに惑わされることです。

よくある定番的セールストークに
「もうすぐ金利が上がるそうです。この気を逃すと返済も大幅アップですね」。

あるいは最近は無くなりつつありますが、
「 所得減税を使うなら、年末に完成しないとダメです。もう、ギリギリです。急ぎましょう」、あるいは「決算値引きは、この時だけですよ」

そう。いろいろな言葉で焦らせて契約に持ち込もうとする定型的、定番的営業に多くの人は、コロッと気持ちを動かされています。

甘いささやき営業

もう一つのパターンは、予算よりも少し高めの見積もりや提案を行うのです。

一生に一回だからこれも付けた方が良いですよ。

少し背伸びをすれば手が届きそうな金額を見計らい、当初の予算よりもより大きな金額になるよううまく薦めるのも住宅会社の重要な営業テクニックの一つです。

せっかくだから、ローンを余分に組んで、これも付けようか」・・・と答えたときには、相手の思うつぼです。

Sponsored Link

注文住宅のシミュレーション

でも、私がお会いした人達は、そんなセールストークにも、金利変動程度ではビクとも動きません。
彼らなら、きっとこういう風に考えていたのだろうというイメージを追いつつ、住宅のお金について、一つのシミュレーションをしてみました。

ここでは、注文住宅を前提として、40坪程度の建物で、外構工事共で2,800万円の住まいを建てると考え、2,000万円の35年ローンを組むと仮定して、彼らの価値観でシミュレーションを進めてみましょう。
注:このページは主として注文住宅の方向けです。

もし、金利が0.2%上昇したら・・・

商談中に金利上昇が確実な状態になればあなたならどうしますか。
0.2%の金利上昇は、年間返済額が2.8万円増え、35年間で98万円の金利負担です。

しかし、彼らはそうは考えてないかもしれません。この金利負担を工事費で補うとすると、ローンを1,943万円にすれば良く、彼らは契約交渉で57万円の値引きを勝ちとろうと考えるかもしれません。

金利-3.5%金利-3.7%
ローン元金2,000万円2,000万円
返済期間35年35年
ローン総額34,716,41335,696,768980,355
年間返済額991,8961,019,90428,008

もし、1年購入を伸ばしたら・・・

どうも、煮詰まらない。あるいはこれだ、と思う住宅会社に巡り会わない。だけどどんどん日が過ぎていく。ローンの返済可能期間が短くなれば借りられる金額も少なくなる・・・・焦る!

もし、ローンの返済期間を1年短縮する必要があり、借り入れの金額が同じなら、年間返済額の上昇は1.5万円です。これも上と同様に、毎月の負担額を投資予定の年間999,967に合わせようと思えば、ローンを1970万円にすれば良く、

返済期間-35年返済期間-34年
ローン元金2,000万円2,000万円
金利3.5%3.5%
ローン総額34,716,41334,232,224-484,189
年間返済額991,8961,006,83614,940

さらに、100万円値引きが出来たら・・・

金利上昇や、ローン期間も問題なくても、粘って、粘ってあと100万円の値引きに成功したら年間支払額はどうなるのでしようか。年間返済額は4.5万円程度の減少になり、返済総額では173.5万円もの減少になっています。では、年間返済額を予定通りの99.1万円とすると、返済期間を33年に短縮することが出来、総返済額も3206万円となります。

がんばって100万円の値引きだけを成功させるだけで、あるいはそういう会社を探すだけで、ローン総額を大きく減らすことが出来るのです。(工事費の3.5%)

ローン元金 2,000万円ローン元金 1,900万円
返済期間
35年35年
金利3.5%3.5%
ローン総額34,716,41332,980,5931,735,820
年間返済額991,896942,300-45,596

焦るな!泳がされるな!

なぜこんな話をするのでしょうか。

建築条件付きなら、広告に間取りと坪数と建物の価格が載っています。しかし、注文住宅では、建物の大きさも仕様も価格も何もない状態から始めなければならないからです。つまり、明確な目安がないのです。だからこそ大事なことは、金利変動、引渡日、営業トークといった外圧に惑わされやすいのです。

このページの話は、すべての人が出来ることでもないでしょうし、すべてに当てはまるものでもありません。また、私が感じた華僑の人に対する印象がすべてでもありません。でも私がこの人達から学んだのは、「お金」に対する「粘り」。交渉への「粘り」です。 人に「動かされない価値観」です。

注文住宅特有の質問に、「値引きはいくらぐらいあるものなのですか」という話を伺うときがあります。でも下のことだけは覚えておきましょう。

こと契約に関しては、相対峙する立場なのです

どんなにきれい事を言おうが、どんなに打ち合わせのフィーリングが合おうが、こと契約に関してはあなたと相手の立場は全く異なるのです。

相手(住宅会社)は、早く契約をしてよそに逃げないで欲しい。そして、一円でも高く受注出来るのが理想ですね。あなたの立場は全くその逆ですね。相容れる方がおかしいのです。そう。こと契約に関しては、相手とは、全く違う立場なのだと理解しなければいけないのです。

だからこそ、焦ったら負けなのですよ。でも、彼ら(華僑)は決して駆け引きをしているのではありません。
両天秤をかけたり、合い見積もりで競り合わせているのではありません。この感覚を伝えることは大変難しいのですが、要は、「ねばり強いのです」。自分のお金(資力)に対して正直なのです。

相手も商売。甘いささやき営業をどうする?

一生に一回だからこれもつけた方が良いですよ。」という話にまんまと乗って、ローン額をアップさせるのは日本人。
「夢」「マイホーム」「一生、せっかくだから」という言葉に酔っていませんか。彼らは、何よりも自分自身の物に対する価値観が明確なのです。自分のお金(資力)に対して正直と書きましたが、それは同時に無理をしないということです。

だから、営業トークなんか、本当に営業トークにしか思っていません。むしろ、どん欲に情報だけを欲しがっても講釈なんか求めていません。自分が判断するために情報が欲しいだけなのです。

耳障りのよいセールストークで納得している限り、あなたの負け。
住宅会社の勝利です。

まとめると・・・

  1. 自分自身の価値観で判断するために情報は集めるが、甘い誘惑やセールストークには乗らない。
    →甘いささやきについつい乗ってしまうのが日本人。急かされるのに弱い。
  2. あくまでビジネスであると割り切り、相手に甘い目はさせない。お互いが折り合えるギリギリの金額を求める。そのために、自分と相手を冷静に見ている。
    →ついつい、甘いささやきに財布のひもをゆるめるのが日本人に多いパターン。
  3. 厳しいのは最初の契約時のみで、クレームを多発したり、支払いを伸ばしたり、契約後に値切ることは無い。
    →日本人に増えてきたクレーマー、ゴネ得ではない。
  4. いい顔をしたければ、嫌われたくなければ住宅会社のセールストークに乗ってお上げなさい。
    →でもそれは、住宅会社が喜ぶだけで、それ以上のサービスはありません。
  5. 手抜き工事が心配。と考えているなら、住宅会社の言うささやかな値引きだけで目をつぶりましょう。
    →でも実効性は全くありません。

 

全く同じ価値の物を、買う人すべてに価格が違うのが、実は注文住宅なのです。

住宅会社もあなたの顔色を見て見積書を出しているのです。 商売ですからね。  別な言い方をすれば、契約を『情』で考えるのが日本人。『理』で考えるのが華僑の人達です。
あなたはどちらですか。上の項目がその典型ですね。

もっとも、あなたの住まい、あなたの価値観、あなたのお金です。
どう考え、どんな相手(住宅会社)を選ぶかもあなた次第です。『情』に流されようと良いじゃないですか。でも、最後まで『理』で考える人達もいるのです。

でもね。そういう人(『理』で考える人)は、相手も気を引き締めてやるので、トラブルは起こりにくいのです。『情』が絡むほどトラブルは生じやすいと言えるでしょう。 相手が甘く見ていますから。そういうものです人間関係は。。。

Sponsored Link

Sponsored Link