住宅の液状化対策は?

日本建築学会の住宅用の基礎設計資料では、液状化対策として下の4つの方法が示されています。


(資料:小規模建築物基礎設計指針・日本建築学会より)

この本の中では液状化について書かれているページは、300ページを超えるページ数の中の、たったの1ページほどが、「一応、書かずにすますわけにはいかないだろう」という感じの申し訳ないほどの記述しかないのです。
というよりも、実際に何が有効なのかがわからないから、技術的視点から、こうすれば大丈夫じゃないだろうかと想像したものを書いた・・という感じなのです。

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A.杭基礎

ここで言う杭は、鋼管杭などの支持杭です。住宅でよく使われる柱状改良杭ではありませんし、鋼管杭の問題点は、前回の言いましたが、①キチンとしたボーリング調査をした上での支持層の確認が必要。②深さ10mを超えることは出来ない ③コストが高いといったことが上げられます。

また、杭自体の径が細いですから、杭の長さが長いと絶対安全と言えるほどのことにはならないですし、基礎と杭を緊結しておかないと効果を発揮しません。(いわゆる杭頭処理・・普通、住宅ではなされていない)

B.矢板壁

深さ5m程度の深さまで、地下室を作る際に用いるような、鋼製矢板を打ち込む。それによって、周囲の液状化の影響を小さくするということなのでしょう。

しかし、敷地の周囲4周に必要ですから、まるで地下室の1.5階分を作るような大がかりな工事で、大型の重機が必要で、たぶん、それだけで数百万円かかるでしょうし、極めて非現実的な案です。
理屈はそうかもしれないが、誰がそんな費用をかけてまでするんだ・・いう案です。

C.べた基礎+ジャッキアップ準備

これはなかなか現実的です。要は建物が不同沈下しても、基礎はそのまま(傾いたまま)にして、上の木造部分だけをジャッキアップして水平にしてしまえ・・という発想です。
復旧費用はたぶんですが、200万円程度ではないでしょうか。

でも、そう簡単にできるなら、なにもアンダーピニング法といった高額な費用のかかる方法をしなくても、最初からこれをすればいいので、そうなっていない現実を見ると、ジャッキアップ出来るように架台の補強が最初に必要で、 ①土台そのものを強くする(たとえば今は105mm角の土台を高さ300mm程度のものに変える)②ジャッキアップ機械を入れられスペースを考えるといった事前対処のために、新築工事の段階で100~200万円程度の支出が必要となるでしょうねぇ。

D.表層改良

建物のある周囲を含めて大きく表層改良して、いわば岩盤のような地盤に作り替え、その上に家を載せるという発想です。
悪くはないのですが、このいわば岩盤の下は液状化して動くので、均等に沈んだり、浮いていればいいのですが、この岩盤自体が、下の液状化で傾けば万事休すです。

また、前々回の非液状化地盤と、液状化地盤で述べたように、そもそも地表面寄りの水のないところは液状化しないのですから、地下水位が2m程度から下になるようなところでは、いわば液状化しない地盤をいくら強くしてもあまり意味をもたないでしょう。
どれも決定的な案はないし、液状化の被害データ自体も少ないので、正直な話、住宅の液状化対策の効果的な方法はよくわからない・・というのが、現時点の実態なのでしょう。

 

今までこのページをを読まれている方に少し質問です。
A案で、普通の柱状改良杭よりも+100万円と言われたらやりますか?
B案は論外ですが、
C案で、新築時に150万円余分にかかります、と言われたらやりますか?
D案で、軟弱地盤なので杭が必要ですが杭工事をしないかわりに、表層改良にかけてみますか。
費用は杭工事をするのと変わりません、と言われてやりますか?

起こるか、起こらないかわからない液状化に、そこまで費用をかけられますか・・という疑問がどうしてもわいてきます。
この支出費用。とりあえず病気になれば保険金を支払ってくれる医療保険とは異なり、いわば「特定のガンだけにのみ支払ってくれる保険」のようなものですからねぇ。 自問自答してみてください。

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