住宅の建て方の契約形態の一つとしてCM方式というものがあります。
建築士が、建築主の代理人(コンストラクション・マネージャー:CM)として、分離発注・設計・施工管理を建築主の代行としておこなう方法で、「分離発注方式」とも呼ばれています。
メリットとしては、工事費を安くできる(工務店、ハウスメーカーに頼むより1〜2割安くなる。価格の透明性が高くなるといったことが言われています。
建築家に頼み、建築家がプランし、仕様を相談し、見積もりを見てもらい、お膳立てが出来た契約を結べば、後は工事監理も全て建築家がしてくれる。そして、1〜2割程度安くできる・・・。
なんて夢のような話なんでしょう。でも、案外トラブルが多いのもこの方式です。
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■スーパーマンはいない
そのデメリットの最たるものが、「コンストラクションマネージャーたる建築家の采配(現場監督的要素)により建物の出来、不出来が左右される」という部分で特に工事に入っていき、建物の完成前後になって顕著に表れていきます。
たとえば、打ち合わせをしたとおりに反映されていないとか、仕上げが汚いとか、追加工事が高かった・・といった話です。どうしてこんなことになるのかというと、そもそも人間には得意、不得意というものが必ず存在しています。
下の図は、住宅を一つ完成させるのに必要とされる仕事の分類ですが、通常、営業マンと設計者そして現場監督という3人の人間が介在することで建物は完成します。
そして、それぞれに行うべき仕事が違っています。
ところが、CM方式というのは、一人の人間なり、一つの建築士事務所が営業マンが受け持つべき仕事、設計者が受け持つべき仕事、果ては現場監督が受け持つべき仕事の全てを担当しています。
特に日本のCM方式では一人の建築士がスーパーマンのように何でもこなしています。

私もどちらかというと設計の仕事が長いですが、それでも間取り提案は人並み。図面作成は人より得意。申請業務は不得意と、設計者が行うべき分野の仕事でありながら、それでも得手不得手があるのですから、営業マンから現場監督に至る全ての職域をそつなくこなすことは、本当にスーパーマンにでもならない限り、現実的に無理があるのです。
そして、多くの場合はその建築家とて、仕事を受注しなければ食べていけませんし、どちらかというと現場監督がそういう仕事を始めたと言うよりも、建築家がCM方式に参加しているケースがほとんどですから、どうしても得意分野であるプラン提案や設計業務は得意なのですが、工程管理、発注、現場管理といったドロドロした現場仕事は苦手です。
■現場で見えてくる不具合
そのため、プランをスタートしたときや、工事契約までは良かったのに、現場が進み出し、工事完成する頃になって、トラブルが出始めるんですね。
多いのは、
・ 一部業者の仕事が汚い。
・ゴミが落ちている。
・タバコを捨てるというモラルまで管理してくれない。
・ペンキが透けて見えるほど薄くしか塗られていない。
・なかなか工期通りに出来ない。
・追加費用が思ったより高い。
・小さなところで醜い仕事が見られる・・・・。
仕事も出来、料理もうまく、家計を任せれば安心で、子供とよく遊び、近所つきあいはそつなく・・まぁそんな外で働くご主人と家計を守る主婦の役割をどちらも完璧にこなせる人間などいないように、CM方式の問題点は、無理に不得意な分野の仕事までやらざるを得ない方式そのものに問題があるのでしょう。
CM方式って、設計から営業、工事監理まで仕事自体が実に広範囲なのに、それを一人でこなすのですから、実に大変です。だから、不得意分野で仕事に穴が出来る・・・ある意味仕方のない仕組みかもしれません。
CM方式って、そういうデメリットもあることをお忘れ無く・・・。
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