既設よう壁のチェックポイント

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水抜き穴はあるか?

鉄筋コンクリートのよう壁でも、石積みよう壁でも、水抜き穴がよう壁にあることが大切です。法規では、よう壁を正面から見た部分の3m2に1カ所毎に水抜き穴を設けるように定められています。例外は高さ1m以下のよう壁の場合だけです。

また、2m程度の低いよう壁は、よう壁背面に透水パイプをいれて、一カ所から排水する方法もあります。

継ぎ目が 空くのは危険な兆候

石積みよう壁でも、コンクリートよう壁でも、このように空いているのは、よう壁が動いた証拠。よう壁にとってはちょっと危険な兆候です。もちろん、よう壁が上下にずれているのも危険な兆候です。

危険な2段よう壁

この建物は、石積みよう壁の上に、さらにブロックのよう壁を継ぎ足してから建物を建てている危険な宅地です。幸い、阪神大震災の時でも大丈夫だったようですが、それは、傾斜地であったため、もともとの地盤が強かったのが影響しているのかも知れません。

本来は絶対に許可されない構造のよう壁です。 もちろん、長い長い将来の保証など出来ません。

前に傾いたよう壁(鉄筋コンクリートよう壁)

倒壊したよう壁

このよう壁は、高さ3m以上あったものですが、よう壁が大きく道路側に傾いたために、部分的に撤去されました。

しかし、解体してみると、3mもの高さのよう壁に対しては、鉄筋が1列にしか入っていません。普通は前と後ろの2列に配筋する(ダブル配筋)場合がほとんどですから、鉄筋の量が少なく、土の圧力と建物の重さに耐えられずに、道路側に傾いたようです。

このような事例は無許可よう壁に多いですから、既存宅地の場合は、キチンと施工されたよう壁かどうかは重要なポイントです。でも、外観からはなかなかわかりません。
よう壁が垂直に立っていず、前に傾いていたら要注意です。

せり出した宅地

狭い日本で、目一杯の土地を活用しようとこのような形状の宅地が多く見られます。
でも、古い施工の場合は、耐久性も低くなっていますから、将来、この部分がそのまま使えると考えるのは早計です。

注意ポイント

工事成長期の造成は危険が一杯!?

上の3例がそうですが、高度成長期は、違法な工事や造成に対しても大目に見る風潮がありました。
しかし今は「古いよう壁」に対しての安全性の確認が問われるようになりました。

よう壁にも寿命がありますし、違法なよう壁かもしれません。

高度成長期に作られた古い宅地でよう壁がある場合は、そのままのよう壁で家が建てられるかどうかのチェックは非常に重要です。家を建てるために古いよう壁をつぶす必要があり、多額に費用がかかった、という事になりかねませんから。

危ないよう壁がなぜ、倒れないのか?

それは、上で説明している危険性の高いよう壁でも、現実によう壁が倒れることはほとんどありません。そんな光景はほとんど見たことがないですね。
それはなぜでしょうか。

そこには、構造設計の安全性確保の思想にポイントがあります。
よう壁に使われるコンクリートは、実際の強さの1/3を設計するときの強さとして考えます。 さらに鉄筋は、実際の強さの2/3を設計するときの強さと考えます。

つまり、実際の材料の強さそのものを考えるのではなく、もっと低い強さで考えているために、実際はPOINT-3にあるような、必要な鉄筋量が少なくても、何とか鉄筋とコンクリートの実際の強さの限度まで、よう壁が持ちこちえている、という状態になっています。

普通は、弓を半分しか引かなくても良いような設計をしているのに、工事や材料をケチったりすると材料が持つ、限度一杯の強さ、つまり、弓を目一杯引っ張っている状態で、よう壁ががんばっているだけなのです。

そして、それに耐えきれなくなったとき、徐々に亀裂や沈下、傾倒などの症状が目に見える形で始まります。
つまり、このようなよう壁は、一気には崩壊はしないけれども、安全性が全くないよう壁と言うことになります。

よう壁がつぶれたところは見たことがない。
その過信に基づいて、どんなよう壁でも、家が建っているから大丈夫と考え、 今でも平気で危ないよう壁が造られています。

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