間違いだらけの耐震リフォーム-1

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東日本大震災が起こり、そのあとの「大きな地震が来るぞー」 という地震予測アナウンスのおかげで、最近は耐震補強が繁盛しているのではないでしょうか。
でも、ふとしたことから、立て続けに3件の耐震補強工事のご相談に出くわすことになりました。そこでみたものは、耐震補強業者のひどい実態。だれも耐震補強の本当の方法を知らずにやっている実態でした。
そして、そのほとんどが構造用合板を使った耐震補強のでたらめ施工だったのです。
構造用合板を使った耐震補強は、比較的簡単な上に、昔からある工法ですから、そのやり方も工事側に十分に浸透していると思っていると大間違い。耐震リフォーム業界特有のある事情から、いい加減な工事がまかり通ります。

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構造用合板の正しい施工方法

まず、正しい構造用合板の張り方を紹介しましょう。
それは 、たった四つのルールを知っておくだけで良いのですが、

  1. くぎは、N50という種類のくぎを使う
  2. くぎは150mm間隔以下で打つ
  3. 合板の4周全てに打つ(ついでに中央も)
  4. 合板は、土台や梁といった部材に届いていること

これだけなのですが、このルールのどれかを守らないだけで、所定の耐力の6割ほどになってしまうのです。ミスを複合すると強度も半分以下になってしまいます。ところが、構造用合板で耐震補強を計算すると、数値が上がるので、多用されています。

注:2X4工法では、CN50というくぎを、100mm間隔です。
その代わり、耐力が少し強くなっています。
注:なお、耐震補強工事は、実質的に軸組工法で建てられた住宅に行うのが圧倒的
ですから、これらの説明はそのような前提で読んでください。
注:これを読むと新築工事が不安になるかもしれませんが、少なくとも2X4工法では、問題なくルール通りの施工がされています。軸組工法では、以前は上の間違いも時々見かけたのですが、最近はほとんど見かけなくなりました。

ケース1:ちゃんとやっていそうだ・・という安心もつかの間!

さて、立て続けに3件遭遇した最初のケース。
最初のケースは、建物も古いので、耐震補強をしようと、市役所に相談し、その市役所から「耐震診断」の建築士を紹介してもらい、さらに市役所に届けている業者(耐震補強工事)を紹介してもらい、工事を進めました。
言い換えると、全~部「役所お墨付きの設計者と業者」に依頼しました。

役所指定の設計者も施工者も間違いに気づかない

その後、筋交いの補強方法で、耐震補強工事に疑問をいだき、第三者検査をしているようなところにも、耐震補強工事をチェックしてもらいましたが、特に指摘無し。
それでも納得出来ないので、私の方に話があったのですが、そのときの写真が下の写真です。 天井を開けて耐震補強工事をしたところをみると、

「おっ、補強計画通り、構造用合板が張ってあるじゃないか」
「あっ、キチンと梁まで合板が届いているじゃないか」
「釘の間隔も150mmよりも狭いし、これも問題ない」
「施主さんの取り越し苦労かな~」と考えていたら、
「まてよ~。どうも使われているくぎのくぎ頭が小さい」

と思って釘を引き抜いてみると、N50の釘ではない、もっと胴径の細い釘が使われていたのです。(細いくぎを使うと、釘の打つ間隔が正しくても、耐力が6割程度に低下します(ページ下の図)

そもそも、施主さんが気にしていたのは、筋交いの施工方法が間違っているのではないかという問題だったのですが、それは特に問題なく、施主さんの取り越し苦労だったのですが、
しかし、こと構造用合板の釘については
第三者検査の人間がみても、間違い施工に気づかず、
耐震補強の設計をした建築士は1回も現場に足を運ばず、
耐震補強をした業者は市役所の指定業者だった・・・・。

関西弁で言えば、 あんたら、よってたかって、なにやってんねん。 アホちゃうか。
というお話。

ケース2:うろ覚えの世の中

ケース2のお話です。
ある方が耐震補強をしたいと言うことで、工事会社にその方の自宅まで来てもらい、私が立ち会う場面がありました。見積もりを依頼したのは、社長一人の小さな小さなリフォーム専門の会社です。

私が、「御社では、今までに耐震補強はどの程度経験されていますか」と聞くと、 「はい。4.5件しています」という言葉の中に、やや頼りなさげな雰囲気を感じてしまいました。

本当かな。キチンとした工事をしているのだろうか」といささか疑心暗鬼ながら、
「本当ですか?」と、そんな失礼なことは聞けないので、
耐震補強はなにでしているのですか」と聞くと、
「いつもウチは、構造用合板を使って、N50の釘を使っています」という返事。
私は前半のやや曖昧な返事から「N50の釘を正確に知っているのだろうか」と一抹の不安を覚えつつ、 とりあえず見積もりの価格は良かったので、その業者に決めて契約完了。しかし、一抹の不安があるので、「耐力壁に用いるビスや釘には、一定の規則があるのはご存じとおもいますが、キチンと使い分けてください」といったFAXを入れておきました。

Nが付けば、良いと思っていた

そして、工事がスタートして、依頼者が写真を送ってきたのですが、そこに写っていた釘はなんと、N50の釘ではなく、SN50だか何かの機械用の釘(自動釘打ち機用の釘)の呼称だったのです。
そして、釘を太さを調べてみるとN50の釘が胴径2.75mm必要なのに対して、その釘の胴径は2.2mm程度だったのです。

つまり・・・・!!。

この社長さん。

N50の釘とは、SN50であれ、FN50であれ、SCN0であれ、とにかく釘の製品記号の中にNという数字が入っていれば、それがN50の釘だと思っていたようなのです。

要は、うろ覚えのまま、間違ったことを正しいこととして思い込んでいたのです。

原因は「うろ覚え」

どうして間違った施工をしてしまったのでしょうか・・。
原因は「うろ覚え」です。
自分はそれが正しいと思っているので、誰か違う人から指摘されるまで間違いに気づかない。誰でも、会話の中で「うろ覚え」を「ウル覚え」と間違ったまま覚え込む例の一つですし、以前、麻生総理が「未曾有」を「みぞうゆ」と読んで大ひんしゅくをかいましたが同じ話です。 間違っていても、本人は正しいと思って使っているし、間違いを知っている人から見れば、間違いとわかっても、よほど、時間があるとか、懇意な関係でない限り、会話の中でいちいち人の言葉の間違いを指摘しないですよね。
今回の工事も同様です。 N50の釘を使うと言われたものの、「うろ覚え」のためにこのような間違いがよくあるのですが、「あなた、まさか間違って覚えていませんよね」と疑った話は初対面では出来ません。

だから、間違った知識のまま工事をしていたのです。

その後の顛末

なかなか、「自分が間違っていました」とは、面と向かって言えませんが(そんな正直なことをいうと今までの工事が全て間違いだったとなってしまいますから)、その後、この業者さんは自分の間違いをカバーしようと思ったのか、普通であれば自動くぎ打ち機でバシャバシャ釘を打てばいいものを、釘のめり込みがあってはいけないと、一本一本カナヅチで釘を打って行くという丁重な工事をされたそうです。


日常生活でも、意外と間違ったことを正しいと思い込んだまま過ごしていることもあるのです。
工事はそれが欠陥工事につながります。

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