カビは空気中に常に存在する
カビはなぜ出来るのか。カビを防ぐ方法は。
その原因を知って初めてその対策を講じることが出来るます。
カビは微生物の一種で真菌と呼ばれ、実は空気中に常に存在し、私たちの周りを漂っています。あまり多くの統計はありませんが、ある研究データでは空気中1m3当たり、80個前後のカビ菌が漂っているという測定結果があります。 (1966年の1年間の外気中のデータ観測、神戸市衛生研究所)
なぜカビになる
では、いつも空気中に漂っている真菌が、どうして目に見えるカビという形に変身するのでしょうか。
空気中のカビの菌(胞子)は、空気中に漂っているうちに物質に付着し、適当な水分や温度条件が揃うと出芽し始め、菌糸を伸ばして生育し始めます。私たちが見ているカビは、出芽した胞子を見ていることになります。
また、真菌がカビという目に見える形に変わるためには次の4つの条件が必要です。
2.栄養分があること(有機物でホコリ、チリ、あかなども栄養素となる)
3.水分がある(湿気と言う方が適している)
4.酸素があること(呼吸、発酵に必要)
住宅の中で発生するカビは、一般的に10℃から35℃程度の温度で生きることが出来ます。その温度は人間が快適に暮らせる温度とも一致しており、そのため、1番目の適度な温度という条件をコントロールすることは出来ません。(さらに低温、高温で棲息する菌も存在しています)
また、二番目の栄養分は、有機化合物と言われるいわば自然、人工のものを問わず、すべて物質が栄養素になると考えても良いでしょう。典型的な例はチリ、ホコリ、あか、石けん水の残りカスなど人間が使うほとんどすべての物質も、さらに廃棄物も含めて栄養源になってしまいますから、これらを厳密にコントロールすることもなかなか出来ません。ただ、菌糸という根を付着した物質に伸ばす必要があるため、ツルツルした物質にはカビは付着しにくいですが、サッシにつくカビのように、サッシ自体に汚れやホコリが付着しているとそこにカビ菌が付着してしまいます。
そして、水分は、私たちが見えている水という形の固形物ではなく、表面結露するギリギリの状態の水分、といった方がわかりやすいでしょう。ひとつの例を挙げれば、汗がどんどん出ている手ではなく、緊張で手が汗ばんでくる・・といった状態の水分、言い換えればまだ手に汗が出ているか出ていないような状態を好んでいます。
つまり、湿度70~99%の状態がもっとも生育しやすい環境と言えます。結露が発生してしまい、水分が表面に出てしまって水滴がたっぷりついている部分(水の中)には付着しても生育することはありません。これは、水の中では酸素を利用することが出来ないためです。(カビは呼吸、発酵に酸素が必要)
その結果、一般的には梅雨時などの湿気が多い時期にカビの発生が高いことになります。
また、カビは紫外線に弱く、直射日光が当たる場所ではうまく生育できません。そのため、カビが発生する場所は日影やジメジメした北側に多く発生する、ということになります。
水分を絶て
上記のように、3つの要素のうち、温度、栄養源を制御することは出来ませんが、水分を制御することは出来ます。
言い換えれば湿度を上げない。ということです。そのためには、次のことが大切になってきます。これを住まいという部分で見ていきましょう。
工事中の雨・・早期乾燥
木になる話「木材と雨」で実験しているように、木材も日光と風通しが良ければすぐに乾燥し、雨にうたれた表面が何時までも湿気ていることはありません。しかし、日光の当たりにくい、風通しの悪い部分は何時までも木材と木材の接するところが乾燥せず、カビの発生する原因となります。このような場合は、工事用送風機などを用いて木材を早く乾燥させることに尽きます。
木材の繊維飽和点を超えると木材に水を蓄えることが出来なくなります。それは外気温や樹種によって異なりますが、概ね含水率26%を越える頃から繊維飽和点を超え、木材が水を蓄えられなくなります。
サッシの結露・・室内の換気、水蒸気の制御、サッシの清掃
サッシが結露を起こし、掃除をしていないでサッシにホコリやチリが溜まったサッシではカビの発生率が高くなってしまいます。サッシのこまめなふき掃除(結露水をふき取る)が不可欠ですし、表面結露しないように水蒸気の発生を抑え、室内の換気を十分にしなければ、何回でも再発してしまいます。
浴室のカビ・・石けん水を残さない、換気とふき取り
常に高温多湿な浴室はカビの発育には好環境ですね。こまめなふき取り、換気以外には基本的な対策はありません。特に石けん水はカビの栄養源ですから、入浴の最後には、壁やドア等にシャワーを掛けて、入浴中に飛び散った石けん水などを洗い流しておくことも大切です。
要は生活スタイル
結局、カビの菌(胞子)は常に空気中を漂っています。
それをなくすことは不可能です。
でも水分(湿気)をコントロールできれば、カビの発生を抑えることは可能です。また、室内の清掃をこまめにして、ホコリやチリなどカビの栄養素をなくすことですね。
そして、カビのもつ酵素は古くからお酒やチーズを作るときに不可欠なものですし、ペニシリン、クエン酸などに代表されるカビの有効な利用もされています。いたずらにカビをいやがるのではなく、その上手なコントロールの仕方に目を向けるべきでしょうね。
注:菌としてのカビの寿命はそう長くないと言われています。 生育出来なければ、空気中の菌もいずれ死滅していきます。