今までの客観的事実からわかることは、内部結露を防ぐ3つのセオリーが示されているものの、現実の施工では完全な防湿層の施工は難しく隙間が生じていることや、外壁側の方が透湿抵抗が高く、壁内に湿気(水分)を滞留させやすい工法も多く施工されています。
セオリーで言われていることと、実際の矛盾を考えたとき、この問題をどのように考えればいいのでしょうか。
自然のサイクルが内部結露のリスクを低減させている
内部結露とは、壁のなかで起こる表面結露のことです。そして、表面結露はその材料のもつ表面温度とその材料に触れる外気と湿度に関係しています。
内部結露の現象を、コップの水があふれたときに結露が発生すると考えると、私たちの建物の壁の中は、コップの中に水が入ったり出たりしている状態に例えることが出来ます。
防湿層は、コップに水が入らないようにする装置。外壁通気工法は、コップの中に水が入っても、すぐに排出出来るようにする装置。そして、内外透湿抵抗差で考える工法は、内部に水が入っても内外の材料の堤防の高さを変えて、外側に貯まった水を出そうとする工法です。
そして、そんな装置よりももっとも大事なことは、自然環境は結露する条件をいつまでも続けていないということなのです。
下の表はある日の神戸測候所のデータですが、1日の間に、湿度も常に変化し続けているのです。
この変化が建物を結露から守っている一つの要素なのです。
・湿度は1日の間に変幻自在に変化するが、なかなか気がつかない。
というところでしょうか。
沖縄では自動車の窓ガラスの外側に結露する
数年ほど前、ある問題住宅の解決のためにで沖縄にうかがったことがあります。その時の話です。
結露は窓ガラスの室内側にすると考えている本州では考えられないことですが、その人の話では、梅雨時の沖縄では、自動車の窓ガラスは、外側に結露する、という話をされていました。
でも考えてみると原理は簡単ですよ。表面結露は冷たくなった材料の面に暖かい空気が触れ、その空気が急激に冷やされた時に生じます。
つまり、沖縄では、本州よりもはるかに高い湿度を持った高い外気温が、冷房で車内をガンガンに冷やされて冷たくなった窓ガラスに触れて外側に結露が起こったのです。
右の図は、露点を測るときのグラフで、温度とその温度の空気が含むことが出来る水分の量を表した表ですが、本州で梅雨時の外気温29℃、蒸し暑いとされる湿度75%の時、自動車の窓ガラスの表面温度が23℃以下になるとガラス面に表面結露を起こします。(青線)しかし、本州よりもさらに蒸し暑い沖縄では、外気温32℃、湿度85%の時には、窓ガラスの表面温度が28℃を下回った時点で表面結露が発生することになります。(赤線)
つまり、蒸し暑い時間が長く続き、それにつれて自動車の冷房を長時間かけていたり、急に湿度が上昇してくるような気象条件では、自動車の窓ガラスの表面温度が下がり、窓ガラスの外側に結露が発生することになるのです。
デフロスター
普段何気なく使っている自動車のデフロスター(窓ガラスのくもり止め)も露点の原理を利用しています。
自動車ののフロントガラスが湿気てくもり始めたら、エアコンのデフロスターを入れ、温風でフロントガラスの表面温度を上げていることによって、結露を押さえているのですよ。