『強固なべた基礎を採用し・・・』、『強固な鉄筋コンクリート連続布基礎』と、多くの広告ではいずれも、自社の基礎は強固だ。鉄筋コンクリートで造っていて強いぞ。と宣伝しています。
そして意外なことに、○○よりも強い基礎、とも言っていません。
広告のウソ:鉄筋コンクリートだから強い
鉄筋コンクリート造の基礎だから強い。と謳っている広告が見受けられます。でも、実は基礎は鉄筋コンクリートで造らなければならないと法律で決められているのです。
あたかも鉄筋コンクリートだから強いのだ、という錯覚を起こしがちですが、しなければならないことを書いているだけなのです。
べた基礎と布基礎とどっちが強い?
いろいろな広告を見ていると、べた基礎と布基礎。本当はどっちが強いの?という疑問が湧いて来ますね。
でも、その前に実際にどちらの基礎がどう使われているのかを知っておきましょう。実は、次のような状態で使われているのです。
構造 | 基礎形状 |
---|---|
鉄骨プレハブ系 | 例外なく布基礎 |
軸組工法・2X4工法 | 大多数がべた基礎 |
ログハウス | べた基礎と布基礎が半々 |
注文住宅を建てようとして、木造住宅も鉄骨プレハブ住宅も検討された方はわかりますが、鉄骨プレハブ系のハウスメーカー(代表例は積水ハウス、大和ハウス、ヘーベルハウスなど)では、例外なく布基礎です。
一部の輸入住宅系やログハウス系が布基礎を標準仕様としていますが、それ以外に布基礎を標準仕様にしているメーカーはほとんどありません。これには理由があります。
鉄骨プレハブ系ハウスメーカーが、布基礎を標準仕様としている理由
木造よりも力が集中してしまう構造
鉄骨プレハブ系の耐震性は、ブレースと言われる一種の筋交いが負担しています。しかし、このブレース部分は、たった1つのブレースでも、木造で使われる耐力壁(筋交いや構造用合板)よりも大きな力に耐えられる強い構造なのです。そのため、木造であれば10箇所の耐力壁が必要なのに、鉄骨プレハブでは数カ所の耐力壁(ブレース)でも大丈夫なのです。
しかし、それは、逆のデメリットが生じます。一つ一つの耐力壁が強いと言うことは、一つの耐力壁に大きな力が加わり、その結果、基礎にも大きな力が生じます。
布基礎でなければならない理由
基礎の地震に対する強さは、べた基礎、布基礎といった区分ではなく、鉄筋の太さと基礎の立ち上がりの高さに関係してきます。
小川に橋を架けようとしたとき、下の図のように、同じ材料、同じ断面積であれば、四角い形よりも縦に細長い形の方がより強い橋桁となります。
日常生活では、定規、ものさしのような平べった形状の物を縦に使うか、平べった横に使うかですぐにわかります。平べった方に物を載せればすぐにしなってしまいますね。
つまり、より強い力がかかる基礎の立ち上がり部分は、より細長い形状が望ましいのです。その結果、立ち上がり部分がわずか45cm程度しか出来ないべた基礎よりは、65cm程度になる布基礎の方が有利なのです。(上図の高さ20cmよりも、高さ33cmの方がより強いのと同じ。幅は余り関係ない)
注:べた基礎のような45cmの立ち上がりでも65cm並みに強くすることは技術的には可能だが、鉄筋の本数が多くなり、その結果、基礎幅も厚くなり、鉄筋の加工も複雑になる。(右図参照)
木造住宅系が、べた基礎とする理由
この理由は簡単です。工事の手間は布基礎の方が余分にかかります。底版コンクリートを打設し、立ち上がりのコンクリートを打設し、その後に、床下防湿のためのコンクリートも打つ必要があります。つまり、3回もコンクリート打設が必要ですが、べた基礎なら、底版部分は床下防湿と兼ねられます。
木造住宅系がべた基礎を選んだ理由、それはコストダウンなのです。そのため、今では木造住宅系で布基礎を標準仕様としている会社を探す方が難しいほどべた基礎を広く採用しています。
鉄骨プレハブ系の必殺技、苦渋の中の進化。コンクリート一体打設
では、鉄骨プレハブ系はどうなのでしょうか。
実は、彼らも構造上布基礎にせざるを得ないが、それでは3回もコンクリートを打たなければならない。そのコストと工期の弱点をカバーするために、底版と立ち上がりを同時にコンクリートを打設する一体基礎を研究して標準工法にしているのです。これもコストダウンのためですね。
打ち継ぎ面のない強固な一体コンクリート打設。といった表現でハウスメーカーが宣伝していますが、打ち継ぎ面がないから強固なのはある面で事実ですが、実はコストダウンが最大の理由なのです。そして、布基礎であれば、打ち継ぎ面の有無が強度に大きな影響を及ぼすことはありません。
また、べた基礎でも一体化工法は可能なのですが、ほとんど普及していません。その理由は施工が複雑、細かな寸法対応が苦手、型枠コストが高い、という、これも経済的理由で普及していないのですよ。
以上説明したように、構造やコストの必然から布基礎であったり、べた基礎をそれぞれの業者が選択しているのです。
布基礎の方が強い。べた基礎の方が強いという広告の説明は、実は根底の選択理由を考えると、無意味な話なのです。
本当に強い基礎の見分け方
それは広告ではほとんどわかりません。
木造だけに限定すれば、
- 立ち上がり中央の主筋が太い(D16以上)
- 立ち上がり部分の短辺距離が一定限度以下
- 必要に応じて底版配筋が密
といった要素が上げられますが、広告でこれを捜すことは難しいでしょう。
ちょこっとCOLUMN
広告の見方-その2
基礎の広告は、ウソもホントもなく、当たり前のことをさも特別なように表現しているような広告が非常に多いのが特徴です。そのあたりを惑わされないようにしましょう。
強固な基礎といっても、鉄筋コンクリート造で作らなければならないことや最低限の鉄筋の太さは規定されており、格段に強い基礎というのは存在しない。
また、メーカーが基礎構造を決めている場合、そこには自分たちの理由があり、布基礎、べた基礎の比較論も無意味ですよ。
そして、基礎のトラブルは意外と多く、クラック、ジャンカなど、コンクリートを知らないことに起因する事故が多い。
意外な事実:住宅工事の中でも、品質管理(施工管理)がもっとも遅れているのが基礎工事の分野なのです。(基礎屋任せの管理が目立つ。)