今では戸建て住宅を考えている人のほとんどは、『筋交い(すじかい)』という言葉や、それが何であるか、どういうときのために使われているのかを知っていると思います。
筋交いとは、在来工法あるいは軸組工法と呼ばれる建て方の時に使われる耐震のための材料の一つですね。
戦前や古い住宅に筋交いは設けられていない
今でこそ、本当にポピュラーな「筋交い」なのですが、「筋交い」が本格的に使われ出したのは、どうも戦後のようなのです。
五重塔に代表される古代の日本建築や、古寺を見ても、あるいは戦国時代に建てられた城を見ても、はたまた誰それの生家なんて紹介されている古い古い民家を見ても、そして時代劇のセットを見ても「筋交い」なるものにお目にかかることはまずありません。
そしてエドワード・S・モースという動物学者が書いた「日本のすまい、内と外」と言う本でも詳しく日本の建物を紹介し、丹念にスケッチを残していますが、そこでも「筋交い」の描写は一言もありませんでした。
そのほとんどが、土壁と板張りの家屋です。
そしてある方の調べでは、鎌倉時代に一時期だけ「筋交い」が使われていたようです。
そうなんです!!
実は、「筋交い」って、戦後突然飛び出したものなのです。
筋交いの普及は、スピードが求められた戦後の住宅事情
その理由は戦後復興にあります。
昭和25年に初めて出来た建築基準法には、「筋交い」は耐震のための材料として指定されているいます。
でも理由はそれだけではありません。
それは、完成まで時間がかかる土壁の衰退と乾式工法の普及、防火特性に優れ、施工速度の早いた外壁のモルタル壁の普及。
そして何より、戦後、焼け野原になったあと、とにかく家を大量に作らなければならない、スピードが求められた住宅事情が生み出した産物だったです。
土壁で耐震性の高い壁をゆっくり作るよりも、とにかく早くできる「筋交い」が耐震要素として求められたのでしょう。構造用合板が普及し出すのはもうすこし先ですからね。